県外から「移住者」のみが集まって発足した新しいサッカーチームが和歌山県にある。チーム発足の目的は、労働者不足の解消だ。選手と地元が一体となって成長する新しいチームのカタチを取材した。

和歌山県外から移住で来た選手たち

和歌山県の南紀地方を拠点に活動するサッカーチーム「南紀オレンジサンライズFC」。2022年2月に発足し、和歌山県の社会人3部リーグに参入したばかりの新チームだが、これまでの3部リーグ戦は全勝。首位を独走している。

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チームを構成する18人の選手たちは皆、和歌山県外から移住してきた。それぞれの選手の出身は、宮城、福岡、熊本とさまざまだ。

なぜ、年齢も出身地もバラバラな選手たちが、南紀地方に集まったのか。

このチームの副キャプテンを務める長崎県出身の古賀洋之選手(25歳)。大学時代までサッカーに打ち込んだが、チームは地区大会止まりで卒業後は北九州市でサラリーマンとして働いていま。

副キャプテン 古賀洋之選手:
社会人になってサラリーマンとして働いていく中で、サッカーする時間が足りないなっていう風に…サッカー中心の生活をしたいなということで、ゼロからチームとして活動できるというのが一番自分の中でわくわくしたというか、そこが決め手になりましたね

移住選手に“地元企業”での仕事を紹介 

県外から移住してきた選手たちには、それぞれ地元の企業が勤務先として紹介される。

職場はチームと連携しているため、平日の昼間も練習できる恵まれた環境が整っている。

古賀選手は、地元特産の梅を加工・販売する会社を紹介され、紀州梅干館(みなべ町)で働いている。

その売り場の一角には、古賀選手の背番号「28」のユニフォームが飾られ、「オレンジサンライズ」のタオルやTシャツが売られていた。

株式会社ウメタ 岡﨑健志課長:
今朝も(タオルとTシャツ)買ってくれたよな

一緒に働いている上司の岡崎さんは、古賀選手の働きぶりについて…

株式会社ウメタ 岡﨑健志課長:
すごく素晴らしいです。真面目ですし、まだまだ若いですから、体もバリバリ動きますので、仕事の覚えもすごく早いですし、申し分ない。やっぱりこの辺り田舎だから若い人が結構不足していますので、その点で若い力入って来て頂けるので、すごくありがたい

発足の理由は「労働者不足」解消のため 

この地方にサッカーチームが作られたキッカケは労働者不足だ。南紀地方は人口減少が止まらず、常に働き手を求めている。サッカーをしたい選手たちと労働力の欲しい地元。両者がWin-Winの関係になっているのが「オレンジサンライズ」なのだ。

南紀オレンジサンライズFC 森永純平代表:
ちょっと人口が減ってしまっているような地域に、移住というかたちで、そこで人手不足の、例えば農業だったりとか、人手不足の企業さんのところで、仕事をさせてもらいながらサッカーで上を目指していく

いつかは夢のJリーグ参入へ!

「オレンジサンライズ」が所属するリーグは、日本のサッカーリーグの中で最も下にあたる「県」のサッカーリーグ。その中でも最下の「3部リーグ」だ。

ここから関西サッカーリーグ、JFLと一歩ずつ階段を上っていかなければならない。道のりは遠いものの、目指すは…和歌山県初のJリーグ参入だ!

福岡県出身のチーム最年長39歳の奥田宗幸選手は、就労支援事務所で働いている。これまで単身アルゼンチンに渡りサッカーを学ぶなど、サッカーと共に生きてきた。

そんな奥田選手が暮らすのは、かつて「旅館」だった建物を改築して建てられた選手寮。

都道府県3部のリーグのチームでは異例の恵まれた環境も、選手たちが集まる理由の1つになっている。

仕事を終えて、奥田選手が寮に帰ってきた。一緒に寮で暮らす選手たちが台所に集まって、鍋を囲んでいた。ピッチの外でもコミュニケーションを取り選手たちの関係が築かれている。

寮の中心にいる最年長も覚悟を持ってこの町に移り住んだ。

南紀オレンジサンライズFC 奥田宗幸選手:
僕としては移住して、このクラブに関わる仕事をしながら、この町で暮らしていこうかなと思って来ました。その地域の方に密着して、地域の方から喜んでもらえるようなクラブにしていく。サッカーしている以上は、クラブ自身は上のカテゴリーで、もっともっと上のカテゴリーでやりたい。それも両立できれば一番いいのかなって思っています

優勝決めて「2部」昇格なるか? 

これまで全勝でリーグ首位を独走する「オレンジサンライズ」。11月13日の試合に引き分け以上で優勝すれば、来期の2部リーグへの昇格が決まる。

雨が降っているにもかかわらず、およそ20人のサポーターが応援に駆けつけた。コンサート会場に持っていくような、手作りのうちわなど応援グッズに、優勝祈願のネイルまで…

いよいよ、2部リーグ昇格を懸けた試合が始まった。雨の中でも、次々とゴールを決める「オレンジサンライズ」の選手たち。

見事、和歌山県3部リーグ優勝!

2部昇格が決まり、和歌山初の「Jリーグ参入」という目標への階段を一つ登った。

南紀オレンジサンライズFC 古賀洋之選手:
優勝して、やっと一つサッカーで結果が出た部分なのでまだまだですけど、ここからだなと。好きでやっているんですけど、周りの人たちのサポートとかついてきているんで、サッカーだけじゃなくて地域貢献とか仕事の方でも貢献して、もっとこの町をサッカーで盛り上げていきたい

南紀オレンジサンライズFC 奥田宗幸選手:
来年は2部になってもっともっと難しい試合になると思う。メンバーも変わる。でも優勝しないと、応援してくれている人の笑顔は見られないのでそれに向けて頑張りたいと思います

地元を愛し、地元から愛される「南紀オレンジサンライズFC」。南紀を照らすオレンジの陽は上り続ける。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月15日放送)

関西テレビ
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