天皇皇后両陛下は、「全国豊かな海づくり大会」への出席などのため、11月12日から2日間、兵庫県を訪問されました。
最先端のスーパーコンピューター「富岳」をご視察
両陛下は、最初に神戸市の理化学研究所を訪れ、最先端のスーパーコンピューター「富岳」を視察されました。

高い計算力を生かし、ゲリラ豪雨の予測などに利用されている「富岳」を間近でご覧になった両陛下。
飛沫(ひまつ)の広がりなどのシミュレーションが新型コロナウイルスの感染対策に活用されているという説明に、陛下は「非常に貴重なデータを取っているのですね」と話されていました。
絵画・習字コンクール 受賞者の小中学生とご交流
両陛下はこの日の夕方、大会に関連した絵画や習字のコンクールで、県知事賞を受賞した小中学生と懇談され、森と海の様子を描いた小学1年生に質問を重ねられました。

皇后さま:
赤いのはタコさんですか?
受賞者:
はい。
陛下:
絵を描くのは好きですか?
受賞者:
はい。
皇后さま:
おうちの中にいるのは?
受賞者:
僕です。

また両陛下は、ほかの受賞者にも、「よく描けましたね」「お家から歩いてすぐ海?」などとやさしく話しかけ交流されました。
続いて漁業関係者と懇談された両陛下。淡路島の漁業組合の男性から即位に伴う宮中祭祀の大嘗祭(だいじょうさい)に献上されたタイの干物について説明を受け、熱心にご覧になっていました。


懇談した小磯富男さん:
4代にわたって(大嘗祭に)献上したという説明をしたら、『4代、献上していただけたんですか、それはそれはご苦労さまでした』と、ありがたいお言葉をいただきました。

両陛下「第41回全国豊かな海づくり大会」式典にご出席
翌13日、両陛下は、明石市の市民会館で開催された「第41回全国豊かな海づくり大会」の式典に臨まれました。水産資源の保護や漁業の推進を目的としたこの大会。コロナ禍の影響で、両陛下が現地の会場に足を運ばれるのは、3年ぶりとなります。

《陛下おことばより》
平成7年の阪神・淡路大震災では、水産業を含め、甚大な被害が発生しました。今日に至るまで、多くの被災者が共に助け合いながら復興を成し遂げ、その経験と教訓を将来にわたって伝え続ける歩みが進められていることに、心から敬意を表します。

そして、神戸市東須磨小学校の6年生・廣田絵美さんが大会会長賞を受賞した作文「須磨のりをはぐくむ豊かな海」を朗読しました。

廣田絵美さん:
みなさんは、須磨のりを食べたことがありますか。私が住んでいる須磨区は瀬戸内海に面していて、昭和の頃からのりの養殖が盛んです。
しかし、須磨のりは平成二十年に生産量が大きく減りました。明石海峡で貨物船の事故が起こり、船から流れ出た油が海を汚してしまい、養殖業や漁業に大きな被害をもたらしたのです。その後は回復しましたが、今の状態に戻すまで大変だったと知りました。

海を守るために様々な取り組みを考えたというこの作文。両陛下はご退席の際、作文を書いた小学生に声を掛けられました。

その際、「のりは好きですか?」と質問を受けた陛下は、「好きです」と答えられ、皇后さまは「とてもよく考えられた作文でした」と話されたということです。
両陛下 初めての放流行事へ
式典終了後、両陛下は明石港で行われた放流行事に臨まれました。

雨が上がった港で、大漁旗を掲げた約100隻の漁船が集まり行なわれた歓迎のパレード。船上から手を振る漁業関係者に両陛下は、笑顔で手を振って応えていらっしゃいました。

放流行事では、地元の高校生から渡されたマダイとヒラメの稚魚をご放流。両陛下のご放流は初めてとなります。
両陛下 小学生の水産教室ご視察
その後、両陛下は市内の水産技術センターで、地元の小学生が参加した水産教室を視察されました。

魚について学ぶこの教室。両陛下は、水槽のナマコなどを覗き込みながら、「触ったことあります?」「どうですか?」などと話しかけ、一緒に観察していらっしゃいました。

天皇皇后両陛下は、豊かな海づくり大会を通じて多くの人々と交流し、秋の地方公務を終えられました。
(「皇室ご一家」11月20日放送より)