「防衛力は強化するが増税はイヤ」

先週末行われたFNNの世論調査によると、自衛のために敵のミサイル発射基地などを攻撃する「反撃能力」について「持つべき」が62%だったのだが、防衛費の増額を所得税や法人税の増税でまかなうことについては「反対」が66%だった。

FNN世論調査より(11月12・13日実施)
FNN世論調査より(11月12・13日実施)
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FNN世論調査より(11月12・13日実施)
FNN世論調査より(11月12・13日実施)

つまり中国などの脅威を考えると防衛力は強化すべきだが、その財源のための増税はイヤいうのが今の世論だ。

これに対し防衛力強化に向けた政府の有識者会議では国債に依存せず、法人税増税など「幅広い国民負担が必要」という意見が主流であり、どうやら政府が目指す方向と国民の考えにギャップがあるようだ。

13日のフジテレビ番組に出演したジャーナリストの櫻井よしこ氏は「経済を弱くする形の増税には反対」「今は非常事態なので防衛国債という形でやってもいいのではないか」と問題提起した。

国債発行で本当にいいのか

「防衛国債」の考え方は安倍晋三元首相が亡くなる3カ月前に言及したが、確かに道路や橋を作る予算に建設国債が認められているのだから「次の世代に祖国を残す」ために国債を発行すべきだという考え方は間違ってはいない。

ただそれを言い出すとキリがない。国民民主党などが言っている「教育国債」も人材というインフラを作るわけだし、不妊治療も含めた少子化対策も消費税ではなく「少子化国債」でできるのではないか。

あえて書くと、「予算が足りないから借金をする」ということが許されるなら行政はこれほど楽な事はないだろう。本来新たにやりたい政策があるなら、これまで行ってきた政策をやめるか増税するのかのどちらかだ。

日本の国家予算の3分の1は借金…
日本の国家予算の3分の1は借金…

日本は欧米先進国に比べても道路はキレイだし、電気もガスも水道も絶対とまらない。素晴らしい保育、介護、医療、年金、教育、福祉のシステムがある。一方で国家予算の1/3が借金というのも日本だけだ。借金して完璧な国家を作っている。今回それに防衛も加わる。ただやはり自分が使った分は自分が死ぬまでに払わないといけないのではないか。

防衛費増額の財源を国債か増税かという議論になっているのだが、「歳出削減」があまり話題に上らないのは不思議だ。公共事業や各種の補助金など「こんなのホントにいるの」という予算の無駄遣いは沢山あると思うが、やはり額が大きいのは医療費だろう。ここに根本的なメスを入れなければならない。

日本は欧米に比べて税金の使途に対する監視が甘いと思う。それは実は国民に納税者としての意識が少ないからではないか。税金は「いやいや取られる」ものであり「国家への投資」とは考えないのだ。

安倍さんが生きていたらどうするか

もちろん今すぐ増税というのは無理なのでしばらくは国債発行もやむを得ない。だが借金を子や孫に残すと、彼らは私たちが受けてきた公共サービスを受けられなくなるかもしれない。次の世代に借金の肩代わりをさせてはいけない。

2019年10月1日から消費税は10%に…当日、増税について語る安倍首相(当時)
2019年10月1日から消費税は10%に…当日、増税について語る安倍首相(当時)

安倍氏は財政拡大論者であるにもかかわらず消費増税を二度断行した。決めたのは民主党政権だが、増税というのは「決める」より「実施する」方がはるかに大変だ。社会保障の継続のために安定財源が必要だから自分の主義に反する増税をやった。

安倍氏は退陣後に安保や経済について思い切った主張を繰り返していた。これについて本人は「首相の時には言えなかったからね」と言っていた。もし安倍さんが今も生きていて首相だったらどうするだろう。もちろん防衛費は増やす。国債も一時的に発行するだろう。だが中長期的には法人増税や復興税のような所得増税などの道筋をきっと示すのではないかと思うのだ。

【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】

記事 319 平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。2020年4月から立命館大学客員教授。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。