花の業界が苦境だ。新型コロナによるイベント自粛で需要が冷え込み、温室の燃料費なども値上がりした。苦境を乗り切ろうと、静岡市の生花店が定額料金でいろいろな花を受け取れる“花のサブスク”をしている。定額制サービスは音楽・動画配信や家電で普及しているが、花でも成功するだろうか。
燃料費・肥料代高騰で生産農家は苦境
切り花の出荷量が全国3位の静岡県。
この記事の画像(15枚)バラは全国2位、ガーベラは全国1位など花の生産が盛んにおこなわれている。
しかし、農林水産省によると、全国の花の出荷量は年々減少している。ここ数年は、新型コロナで結婚式などイベントが減少していることや、ハウス栽培の燃料費の高騰などの影響を大きく受けているという。
森田バラ園・森田剛司代表:
重油や暖房の燃料費、農薬や肥料、梱包資材も値上がりして大変な時期になってしまいました
静岡市葵区で、40年にわたってバラや菊、ひまわりなどの花を栽培している森田バラ園。
燃料費は20年前の2倍以上になった。肥料や農薬の価格もこの数年で3割近くが上がり、今後さらに値上げされる見通しだ。花を梱包する資材や運送費を含めすべてが値上がりを続けている。
直売で客とふれあい生産にいかす
そんな中、森田さんは直売に力を入れている。森田さんは直売のメリットを次のように話す。
森田バラ園・森田剛司代表:
直接お客さんにどんな花がいいか聞きながら、地元のお花屋さんとも連絡を密に取って、「こんな品種がいい」と話をして、(お客さんが)欲しい品種をなるべく作るようにしています
少しでも大勢の人に花を買ってもらうきっかけを作ろうと、直売所では年に5回 イベントを開催している。
森田バラ園 森田剛司代表:
静岡は全国でも有数な花の生産地ですけど、消費はワーストの方なんですね。ぜひ皆さんに花をたくさん飾ってもらって、消費を少しでも上げてもらえれば助かります
サブスクで花を飾り続ける習慣を
花の消費拡大へ、生花店も工夫している。コロナ禍で増えた“おうち時間”に彩りを加えてもらおうと、静岡市葵区の生花店「花のあるくらし研究所」は花の定額制サービス、「サブスク」を始めて、注目されている。
花のあるくらし研究所・中村将史所長:
ダリアは暑さに弱いので、涼しいところに置いてくださいね
利用客:
かわいい
利用客:
花瓶に飾る時のいけ方を教えてくれたりして楽しい
2020年3月に静岡市葵区にオープンした生花店「花のあるくらし研究所」。開店当初からサブスクを始め、現在は約300人が利用している。
花のあるくらし研究所・中村将史所長:
お花を飾る習慣を広めたいという思いがありましたので、サブスクで飾り続けてもらう、継続的に飾ってもらうことを目指して、長期的にお客さんとお付き合いしていきたいという思いでサブスクを始めました
「生活スタイルが変わった」
毎日受け取れるもの、決まった本数を受け取れるもの、県内特産のバラに限定したものなど、利用者のニーズに合わせた様々なプランを用意している。
料金はすぐに花瓶にいけられる日替わりミニブーケを、月に7回受け取れるコースが月額2200円、12回受け取れるコースが月額3300円だ。
店頭で受け取るため、店員から花についての手入れの仕方を直接聞くことができるのも魅力の一つだ。
1年利用している親子:
(母親)普段自分が選ばないようなお花も選ぶことができるのでいい
(娘)きれいだし、ドライフラワーにするときれいに飾れるからいい
4カ月利用している男性:
枯れてくると寂しくなる。花がなくならないような生活スタイルに変わった
協力店を増やしサービス拡充へ
花のあるくらし研究所では、11月中旬から他の店舗と協力し、様々な場所で花を受け取ることができる新しいサブスクを始めた。協力店を順次増やし、2023年1月には全国各地に広げようと準備を進めている。
花のあるくらし研究所・中村将史所長:
なるべく多くの人にお花を飾ってほしい。お花屋さんに行って買うのは結構ハードルが高いと思う。そのハードルをなるべく低くして、帰り道にちょっと受け取れる場所があれば、日本全国にそういう場所があれば、お花屋さんもうれしいし、お客さんもうれしいしと思う
花に親しみ、心が癒されるといった魅力が再認識されつつある今、花き業界も消費の変化をとらえ様々なサービスを展開している。
特別な日に贈るだけではなく、日常に彩りを加えてみてもよいかもしれない。
(テレビ静岡)