2022年7月、KDDIで発生した大規模通信障害。携帯電話の利用者など全国で最大3,915万回線に影響が及び、完全復旧まで86時間かかった。その渦中、注目が集まったのが公衆電話だ。

しかし、公衆電話の利用機会が激減している現状が、記者の取材で浮かび上がった。

福岡市・天神に公衆電話はある?

福岡市の中心地、天神で、公衆電話について街頭インタビューした。

――公衆電話は使われますか?

女性:
使いません、ほとんど、全くです。テレカも全部処分しました

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男性:
使わないです。スマホがあるので

女性:
携帯を忘れたときは、どうしても公衆電話を使うかなと思っていますけど、どこにあるか分からない、どこにあるんですかね

そこで、天神のどこに公衆電話があるか探してみることに! まずは、「福岡パルコ」前から渡辺通り沿いを南の方角へ歩いてみる。

高島彩記者:
このあたりの通り沿いには、公衆電話なさそうですね

大通り沿いで、人通りも多い場所だが、なかなか公衆電話は見当たらない。200メートルほど歩くと…。

――公衆電話を探しているんですけど

女性:
結構あるよ。ソラリア(商業施設)の中と地下に2つか3つ、大丸(デパート)に2つくらいある。大丸の中に、広場があるじゃない。まあまあ、あるよ。探しにくいってみんな言うけど、私は覚えているよ

近くに住む女性が「大丸福岡天神店」に公衆電話があると教えてくれた。早速、向かうことに。

高島彩記者:
あ! あちらですね! 電話ボックスありました!

探し始めて約15分。大丸のパサージュ広場で公衆電話を発見した。

大規模通信障害で注目を集めた

2022年7月、KDDIで発生した大規模通信障害。緊急通報できなかったり、仕事に差し支えたりする人が相次ぐ事態となった。

そんな非常時に注目が集まったのが公衆電話。NTT西日本によると天神周辺での公衆電話の設置台数は多く、地下鉄の駅や天神地下街、デパートなどがある繁華街には数多く設置されている。

公衆電話が設置されている
公衆電話が設置されている

公衆電話の設置台数の推移は、1990年には全国で83万台あまりあったが、2000年を過ぎてから一気に減少。2021年は約14万台となっていて、その数は30年で約6分の1となっている。携帯電話の普及が大きな原因だ。

公衆電話の設置台数の推移
公衆電話の設置台数の推移

NTT西日本九州支店設備部災害対策室 峰庄次室長:
大きな赤字運営となっていまして、不要な採算が取れない公衆電話に関しては、削減していく方向で事業の健全化を求められる

公衆電話を利用する人はいるのか? 多くの人が行き交う新天町商店街の電話ボックスに定点カメラを置いてみた。

高島彩記者:
1時間が経過したんですが、公衆電話を使う人はまだ1人も現れません

さらに1時間待ってみたが、若者からお年寄りまで、多くの人が公衆電話の前を通るものの、結局、使う人は現れなかった。

災害時に力を発揮する役割も

公衆電話の利用が減っているが、若者は公衆電話を使ったことあるのか?

取材班が街で聞くと、意外に「使ったことある」と答える人が多い。理由としては小学校や中学校に公衆電話が設置されていて、学生は学校に携帯電話を持ち込めないから、緊急で家族に連絡するときに欠かせない連絡手段となっているという。ただ、現在の公衆電話はボタン式なので「ダイヤル回す」が、若い世代には伝わらないそうだ。

一般的な公衆電話が減る一方、設置を進めている公衆電話もある。福岡市内の公民館には…。

一見、普通の電話
一見、普通の電話

高島彩記者:
こちらですね、一見、普通の電話なんですが、これが災害時用の公衆電話になるということです

避難所に設置してある非常用の電話。その名も「特設公衆電話」。

NTT西日本九州支店設備部災害対策室 峰庄次室長:
事前に設置してある電話機を電話線につなぐと電話通話が可能になるものが、特設公衆電話です

常設ではなく、通常は箱の中に保管されていて、災害発生の際に電話機をつないで使う仕組みとなっている。通話料と基本料は無料で、東日本大震災が発生した2011年から全国的に設置が進められている。福岡県内でも57の自治体で避難所に設置されていて、NTT西日本は今後も設置を進めたいとしている。

様々なかたちで設置されている公衆電話。その利用頻度や目的は時代とともに変化しているようだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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