“共和党が楽勝”のはずが…

日本時間10日夕方現在、現地8日夜に始まったアメリカ中間選挙の開票作業はまだ終わっていない。

最新の情勢では、下院で野党・共和党がぎりぎり過半数の議席を獲得して多数派に返り咲く見通しだが、それとてまだ確定していない。

上院はネバダ州とアリゾナ州で開票がなお続いており、ジョージア州では再投票になった。最終的には与党・民主党が議席を増やして多数派を維持する可能性さえ残されている。

ジョージア州では決選投票へ…民主党の現職ラファエル・ワーノック氏(左)と共和党の新人ハーシェル・ウォーカー氏
ジョージア州では決選投票へ…民主党の現職ラファエル・ワーノック氏(左)と共和党の新人ハーシェル・ウォーカー氏
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戦前に大方が予想した共和党の楽勝とはならなかったのである。

共和党のシンボル・カラーの“赤い波”は湧き起らなかったのだ。

結果、共和党の事実上の党首であるトランプ氏の威信は傷付いた。 

トランプ贔屓で知られるアメリカのフォックス・ニュースも「トランプ氏にとって悪い夜になった」と報じている。

トランプ・チルドレンが伸び悩む

特にペンシルベニア州の上院選と知事選でトランプ氏がテコ入れをしたチルドレン候補が揃って早々に敗れたのは痛い。ネバダ・アリゾナ・ジョージア州等でもトランプ氏はチルドレン候補を押し立てバイデン政権に代理戦争を挑んだのだが、結果は芳しいとは言えない。

名前を挙げたこの4州は2年後の大統領選挙本番でも焦点の激戦州になる可能性が高い。

そして、そこでの苦戦は本番では敗戦に直結する。

トランプ氏が心穏やかでいられる筈はない。

共和党幹部の多くがトランプ氏で2年後に勝てるのか自問を始めても不思議ではない。

高齢で“不人気”バイデン大統領にとっても先行きは茨の道…
高齢で“不人気”バイデン大統領にとっても先行きは茨の道…

一方、バイデン大統領の政権運営も、与党が下院での多数派の地位を失えば更に難しくなる。高齢で不人気のバイデン氏にとっても先行きは茨の道である。

ただ、2年後の大統領選挙では、状況次第だが、失政の責任の一端を下院・共和党に押し付けることが不可能ではなくなるかもしれない。悪い面ばかりではない。

政界では一寸先は闇と言われる。2年後のアメリカ政界の勢力図がどうなっているか予断は全く出来ない。しかし、次の大統領選挙まであと2年、バイデン大統領、そして、トランプ氏、いずれにとっても、順風満帆とはいきそうもない。

【執筆:フジテレビ解説委員 二関吉郎】

(※記事を一部修正しました)

二関吉郎
二関吉郎

生涯“一記者"がモットー
フジテレビ報道局解説委員。1989年ロンドン特派員としてベルリンの壁崩壊・湾岸戦争・ソビエト崩壊・中東和平合意等を取材。1999年ワシントン支局長として911テロ、アフガン戦争・イラク戦争に遭遇し取材にあたった。その後、フジテレビ報道局外信部長・社会部長などを歴任。東日本大震災では、取材部門を指揮した。 ヨーロッパ統括担当局長を経て現職。