東京大学に通う学生たちは58ある運動部の中でどんな部に所属し、どんな活動をしているのか。

11月6日放送の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、W杯経験者がその舞台裏について語る企画に加えて東大部活動に迫る企画も放送。

東大漕艇部、東大ア式蹴球部、東大ボクシング部、東大ボディビル&ウエイトリフティング部から、一風変わった東大運動部の実態を探った。

加藤登紀子さん、東大ボート部だったと初告白

ゲストは東京大学が生んだ3人の元アスリート。

経済学部経営学科卒業の小林至さん
経済学部経営学科卒業の小林至さん
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経済学部経営学科卒業の小林至さん。東大野球部時代はエースとして活躍、4年間で1勝もできなかったものの、潜在能力を評価されてドラフト8位で千葉ロッテマリーンズに入団。

東大史上3人目のプロ野球選手となったが、プロの壁は厚く、1軍を経験せずに引退。その後コロンビア大学に入学し、MBAを取得。

ソフトバンクの孫正義さんに声をかけられ、2005年にいきなり取締役という待遇で福岡ソフトバンクホークスに招かれ、その後の黄金時代の礎を築いた。

経済学部経済学科卒業の添田隆司さん
経済学部経済学科卒業の添田隆司さん

経済学部経済学科卒業の添田隆司さんは、東大サッカー部ではMFとして1年から出場し、4年ではキャプテンを務める。卒業後はサッカーを辞めて内定をもらった大手商社に就職する予定だったが、Jリーグの藤枝MYFCからオファーを受け、東大2人目のJリーガーに。

現役生活は短かったものの、引退後は25歳という若さで「おこしやす京都AC」の社長に抜てき。現在はチームをJリーグにあげるべく奮闘中だという。

文学部西洋史学科卒業の歌手・加藤登紀子さん
文学部西洋史学科卒業の歌手・加藤登紀子さん

文学部西洋史学科卒業の歌手・加藤登紀子さん。1965年、4年生の時にアマチュアシャンソンコンクールで優勝し歌手デビュー。在学中の1966年に「赤い風船」で日本レコード大賞新人賞を受賞。歌手として華々しい経歴は知られているが、実は東大のボート部に所属していた。

野球と勉強の両立について小林さんは「東大野球部のモットーは『4年間は野球にかける。残りの4年間で卒業する』。つまり、8年間いるのが東大野球部の作法。高校の時、相手にもしてくれなかった強豪選手と六大学野球で、サシで勝負できるんですから。そのくらいの覚悟を持ってやらないといけない」と語った。

一方、サッカー部はおおらかだったようで、添田さんは「いつ留年してもいい。留年しても“東大だし”という感じだった」と明かす。

初めてボート部だったことを明かしたという加藤さんは「新入生の時に美しい女性が新入生勧誘をしていて、なんだろうと思ったら女子ボート部。勧誘の時の言葉が『ボート部に入ったら1年で美人になる』。理由は皮下脂肪が減るから。入部と同時に皮下脂肪を測ったんです」と話し、その記録が残っているとのことで番組に調査を依頼した。

しかし番組で確認したところ、60年前の加藤さんの皮下脂肪データは残念ながら残っていなかった。

ボートを愛する教授が選手たちをサポート

まずは1965年創部、今年58年目のボディビル&ウエイトリフティング部。スローガンは「筋肉と勉強は裏切らない」。

今年は関東大会で日体大に次いで団体2位となった強豪だ。

活動場所は東大駒場キャンパス内にある共有のトレーニング室。豊富なマシンがそろうこの場所で、週3日集まってトレーニングしている。

ボディビルらしくがっしりした部員もいれば、筋トレに無縁そうなほっそり系まで。部員は部長を務める女性1人を加えて24人。

将来は「介護ロボットの製作」をしたいという工学部精密工学科の部長は「筋トレが好きで、キャンパス内にジムもあるし、学生大会とか出たりできて入ってよかった」と入部の理由を語る。

練習は決まったメニューはなく、自らトレーニングメニューを考える。その際はノートに記録を残し、トレーニングの効果を日々分析しているという。

教養学部理科二類の部員は「筋トレは勉強と同じ。日々努力を積み重ねてその結果が体に見える。それがボディビルの楽しいところ」と話した。

東大在学中は勉強に集中するため部活はしていなかったという藤本万梨乃アナウンサー
東大在学中は勉強に集中するため部活はしていなかったという藤本万梨乃アナウンサー

1886年創部で136年の歴史を誇る東大漕艇部(ボート部)。日本で最初の部活動と言われ、現在の部員は55名。部のスローガンは「人を自分を変える!」。

過去に大学日本一に22回、19人のオリンピック選手を輩出し、その実績は東大運動部ナンバー1。東大出身の夏目漱石もボートを愛していたと言われ、「三四郎」「こころ」と名付けられたボートがあるという。

埼玉・戸田市にある専用の練習場に併設する宿舎で30名の部員が寝泊まりし、大学へもここから通っている。

1限にも間に合うように早朝から練習を開始。その際、体の疲労を数値化するシステムを元に、日々の練習量を個人個人で決めているという。

他大学の学生も含めたマネージャーが用意した朝食を食べた後の自由時間は、勉強をする学生も。

午後の練習は、ボートをこよなく愛し、ボートを研究し続ける東京大学大学院教育学研究科身体教育学コースの野崎大地教授が5年かけて開発したボート選手強化マシンで練習に励むという。

当時を懐かしむ加藤さんは「当時とは相当違いますが、男子ボート部の寮はステキでした。女子ボート部は10人もいないくらいで相手にされていないんだけど、食堂に行くと輝くような男性がご飯を食べているので、(VTRを見て)私はマネージャーという手があったかと思いました。男子ボート部とご飯が食べられるのがうれしかったんです。マネージャーになればよかった」と悔しがる。

そして、「でも3カ月で演劇部に行ったので皮下脂肪はそのまま」と笑った。

サッカー部を支えるのは分析スタッフたち

東大ア式蹴球部、いわゆるサッカー部は1918年創部の日本で最も歴史のあるサッカー部。

現在の部員数は103名で、「社会やサッカー界に責任を負う存在として、日本一価値のあるサッカークラブ」というスローガンを掲げる。過去3年の勝率は41.8%。

文武両道のため、平日の練習は授業終わりの1時間半のみ。

他の強豪校に比べると圧倒的に少ない練習を分析スタッフたちがカバーしている。膨大な相手チームの試合映像を解析し、一番効率の良い攻撃や守備のフォーメーションを導き出しているという。

彼らはピッチに立って試合をすることはない。影の仕掛け人のような存在でサポートしている。こうした分析をしたくてサッカー部に入部する学生もいるそう。

中でも群を抜いているのが工学部システム創成学科の木下慶悟さん。部活の分析以外にも世界トップクラスのチームを分析し、Twitterやブログで公開している。さらに、海外のクラブチームから分析依頼が来るメンバーもいるという。

ゲスト・武井壮さんは「練習量の短さをテクニカルでカバーして40%の勝率を達成している。日本代表に入れた方がいい」と本格的な分析に驚く。

サッカー部OBの添田さんは「受験勉強で勝ってきたナゾの自信があるので、基礎練習はコツコツできる。プロでも手を抜くような練習もコツコツやるけど、試合前のウォーミングアップもコツコツやるので試合前にバテる」と欠点も明かした。

1962年に創部したボクシング部は、現在の部員数16名。「打たせず打つ」というスローガンで、1部から5部までの関東大学リーグの中で真ん中の3部を30年間キープしている。

そんな歴史あるボクシング部のトレーニングは、ひたすら基礎の練習を続けること。その理由は運動経験が少ない部員も多いから。

地味な基礎練習だからこそ、飽きたりもしそうだが、部員たちは「勉強と同じで基礎をやっていくことでできることが増えていく」とその大切さを実感していた。

(『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送)