新規感染者数が2カ月ぶりの増加傾向となった新型コロナウイルス。感染の「第8波」への備えについて、関西医科大学附属病院の宮下修行教授に聞いた。

この冬に“第8波”発生か

Q. 第8波は来るのか

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
来ると思います。大きな理由として、冬はウイルスが活発化しやすい。また、オミクロンは免疫が長く持ちません。8月の流行から時間がたっている。さらに、これから換気ができにくくなると、ウイルスがはやりやすい要素がそろってしまっています

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Q. 過去の感染者数を見ると、第4波はアルファ株、第5波はデルタ株、第6波はオミクロン株BA.1、第7波はオミクロン株BA.2とBA.5と、同じウイルスがもう一度大きな波を起こすことはなかった。第8波も新しい株が流行する?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
大きく3つシナリオがあると思っています。まず1つ目は、今あるBA.5がそのままはやってしまうこと。この場合は波は小さいです。2つ目は新しい変異株が入ってくること。やはり第7波と同じくらいの規模になると思います。怖いのは3つ目で、まったくモデルチェンジした株がはやること。これが起これば最悪のシナリオになる可能性があります

オミクロン系の変異株 “弱毒化”の予想

海外では、新しい変異株としてオミクロン株の亜系統が見つかっている。シンガポールなどで流行している「グリフォン」と呼ばれる「XBB」や、アメリカなどで流行している「ケルベロス」と呼ばれる「BQ.1.1」だ。

これらについて宮下教授は、「オミクロン系の変異株であれば、毒性は第7波かそれより下では」という考えを示す。

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
一番重要なポイントは、オミクロン株が流行してから、感染者の致死率・重症化率が下がったことです。スペイン風邪もそうですが、これまでの流れからいくと弱毒化していっている。特にオミクロン系統であれば、弱毒化していくことが予想されています

Q. 若い世代は感染しても軽症で済むことがほとんどだが、高齢者や重症化リスクの高い方は?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
高齢者や基礎疾患のある方は、やはりまだリスクがあります。感染規模を抑えるために、若い方にもできるだけワクチンを打っていただきたいです

追加接種 どのワクチンを打てばいい?

ファイザー、モデルナともに、オミクロン対応のワクチンを出している。

従来型のワクチンの3回接種者を対象にした、4回目接種時の中和抗体に関するデータでは、ファイザー製のBA.1対応のものは1.56倍、モデルナ製のBA.1対応のものは1.75倍と、それぞれ従来に比べ抗体値が上昇したということだ。ファイザー製のBA.4-5対応のワクチンは、「データなし」となっている。

Q. これから接種する人は、どのワクチンを選べば良いのか

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
今流行しているBA.5がこのままはやり続けるのであれば、理論上はBA.4-5対応のものを打つ方がいいです。ただ、オミクロンの派生株がはやるなら、BA.1対応でもBA.4-5対応でも、大きな違いはないと思います

Q. どれでもいいが「打てるならBA.4-5対応を」ということ?データなしというのが気になるが

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
これまでなかったことなんですが、今、アメリカで臨床試験が終わったのがBA.1対応のものです。BA.4-5対応の臨床試験はまだ行われている最中です。ただ、従来のワクチンと同じような製造をしています。効果もあるし安全性もこれまでと同じですから、まあ心配ないだろうというところです

コロナとインフルエンザ、どちらを優先すべきか

生後6カ月~4歳の子供も、新たに新型コロナのワクチンの接種対象となった。

新型コロナのワクチンは、1回目と2回目は原則20日間、2回目と3回目は55日以上と、間隔を空けて3回接種することになる。一方、インフルエンザのワクチンは、2~4週間の間隔を空けて、2回接種する必要がある。

どちらのワクチン接種を優先するべきかという問いに対して、宮下教授は「優先すべきはインフルエンザ」という見解だ。

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
コロナはもともと大人がかかりやすかったんですが、オミクロンになってから子供の間ではやるようになってしまいました。ただ、インフルエンザも同じです。インフルエンザは子供の病気ですから、子供から社会に拡散するんです。ではどちらの重症化率・致死率が高いかというと、インフルエンザです。インフルエンザをまず予防するというのが、一番いい考え方だと思います

Q. 両方打ちたい場合は、1回目を同時に打ってもいい?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
はい。副反応が1回で終わるというところから、同時接種が望ましいです

“第8波”のコロナ対応 これまでと同じ?

Q. 医療体制や行動制限の可能性などは、どうなると考えられるか

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
第7波のとき、医療ひっ迫が起こりました。重症化で起こったのではなく、若い人が感染して、熱が出て不安だからと医療アクセスをしたんです。これで発熱外来があふれかえってしまった。ただ、それほど重症化はしませんでした。この点から、国も学会も、重症化リスクが低い人は「受診控え」をしてほしいという考えです

Q. コロナを5類相当に変更して、全ての病院が受け入れられるように、という議論があった。これはどうなっているのか

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
今は、インフルエンザ流行の可能性が高いんです。インフルエンザがはやると、これまでにない、非常に怖い状況になる可能性がある。医療体制がパニックを起こしてしまう可能性があるので、5類相当への変更はこの冬を越してからというのが妥当だと思います

Q. 国が呼び掛けているように、65歳以上・小学生以下・重症化リスクがある人以外は、発熱外来を受診しない方がよいか

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
はい。ただ、やはり皆さん心配だと思うんですよね。我々にはワクチンという武器がありますので、接種を検討いただければと思います

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月26日放送)

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