さまざまな事情で実の親と暮らせない子供たちの成長を支える人たちがいる。
愛媛・松山市で里親として子供を受け入れた女性と、子供の命を救うための取り組みとして愛媛で進む「新生児里親委託」制度について取材した。

血のつながりなくても…新しい家族のカタチ

松山市に住む小学3年生のじゅんくん(9・仮名)は、生き物が大好き。素手でバッタを捕まえられるほどの虫取り名人で、家ではカマキリなどたくさんの昆虫を飼っている。

生き物が大好きで“虫取り名人”のじゅんくん
生き物が大好きで“虫取り名人”のじゅんくん
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大好きなお父さんと一緒に、釣りにもよく出かける。

母・さとこさん:
今もそうですけど、お父さんが大好きですね。とにかく元気に育ってほしい

じゅんくんに優しく語りかける母のさとこさん(56・仮名)。
しかし、この親子の間に血のつながりはない。

じゅんくんと母親のさとこさん
じゅんくんと母親のさとこさん

さとこさんは、10年に及ぶ不妊治療を受けたが子供に恵まれず、夫とともに里親に登録。2013年、47歳の時に生後間もない「じゅんくん」を引き取った。

母・さとこさん:
おうちに帰ってきて、「うわぁ、うれしい」っていう気持ちと同時に、ちょっと何か責任っていうか、この子は自分にかかっている、この子を守っていくんだなって思いました

彼らがたどり着いた新しい家族のカタチ。それが、愛媛で進む「新生児里親委託」という制度だ。

出産直後から里親の元で…新生児里親委託」制度

「里親」とは、経済的な理由や虐待など、さまざまな理由で実の親と暮らせない子供を自分の家庭に迎えいれて養育する人のこと。子供への愛情はもちろん、外部のサポートも必要になる。

中でも「新生児里親委託」は、実の親子と同じ法的関係となる「特別養子縁組」を前提として、出産直後から里親の元で育てるもの。愛媛県内では、2013年度からこれまでに27人の特別養子縁組が成立している。

特に愛媛県では、医療機関とも連携したきめ細かな体制を作り、積極的に取り組んでいる。
それは、「子供の命を守るため」だ。

2003年からこれまでに全国で発生した子どもの虐待死事例890人のうち、0歳児の死亡は423人で47.5%と、約半数を占めている。しかも、生後24時間未満に亡くなったケースは、全体の18.5%となっている。

2022年4月には、新居浜市の竹林で生後間もない男の子の遺体が見つかり、その後、母親が殺人容疑で逮捕される事件が起きるなど、生まれてすぐの幼い命が奪われる悲しい事件は、愛媛県内でも発生している。

愛媛県福祉総合支援センター 里親担当・梶川直裕さん:
子供の命を守るということが基本ですので、育てたい親のために子供をあっせんする制度ではない。子供の命をつなぐための制度であるという基本的なところを理解していただいて、里親制度に興味があるという方は、ぜひご相談いただきたいと思います

母・さとこさん:
産んで育てるって、「当たり前」とか「普通」とかじゃなくて、産んだけど育てられない方もいるし。産んでないけど育てたいっていう方もいるっていう現実を、里親になって感じるところで

母・さとこさん:
(子供を)授かることができないっていう方がたくさんいらっしゃる中で、子供を授かって産んで育てることはできなくても、その子が育っていくことはできるよっていうことなんですよね。自分が育てることはできなくても、その子は十分育っていけますよっていうこと、育てようとしている方はたくさんいますよっていうことを分かってほしいですね

経済的な困窮、未成年での出産など、さまざまな理由で親元から離れざるを得ない子供たち。愛媛で進む「新生児里親委託」は、そんな子供たちの「命をつなぐバトン」の一つとなっている。

(テレビ愛媛)

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