10月21日から23日にかけて開催される全日本ノービス選手権。

日本フィギュアスケートの未来を担う中学1年生以下の選手たちが、北海道の地で日本一を争う。

2021年の全日本ノービスで優勝した島田麻央
2021年の全日本ノービスで優勝した島田麻央
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昨年の全日本ノービス選手権では、ノービスA女子の島田麻央が120点超という点数を叩き出し連覇。推薦出場した全日本ジュニア選手権でも優勝した。

ノービスA男子も中田璃士が100点超で優勝し、今年もハイレベルな戦いが予想される。 

羽生結弦、宇野昌磨、坂本花織、紀平梨花ら世界で活躍するスケーターのほとんどが優勝経験者であり、 “トップスケーターへの第1関門” とも言える全日本ノービス選手権。

1997年にスタートし、今年で第26回を迎えたこの大会。その間に世界の舞台で戦う何人もの選手たちが生まれた。

全日本ノービス選手権を振り返るとともに、今年の注目選手について紹介する。

強化選手35名中26名が全日本ノービス表彰台を経験

全日本ノービスは、7月の全国有望新人発掘合宿(通称:野辺山合宿)で推薦を受けた選手と、9〜10月にかけて行われた各地方大会を勝ち抜いた選手が出場できる。

年齢の基準はノービスAが11〜13歳、ノービスBが9〜11歳。各2回ずつ出場するチャンスがある。

ジュニアやシニアのようにショートプログラムとフリーではなく、ノービスAは3分間、ノービスBは2分30秒のフリー1回のみの演技で勝負が決まる。

今季、強化選手入りしているシングル男女35名中26名が全日本ノービスで表彰台を経験していることから、この大会が世界へ羽ばたくための一歩とも言える。

ただ一方で、表彰台に登れなくても、その後活躍していく選手もいる。

2022年3月の世界選手権で銀メダルを獲得した鍵山優真
2022年3月の世界選手権で銀メダルを獲得した鍵山優真

その一人が、北京五輪銀メダリストの鍵山優真だ。

今季はケガの影響でグランプリシリーズを欠場すると発表した鍵山だが、ノービス時代は表彰台に登れず無名の存在だった。2012年のノービスBは7位、翌年は6位、2014年にノービスAに上がり14位、2015年は4位。

その間、父親と二人三脚で基礎をコツコツと磨き、筋肉がつき始めた頃に難度の高いジャンプが跳べるようになり、花開いた。

ノービス世代は成長も著しく、1年前よりも20点以上得点が高くなることがあるのも特徴。伸び盛りの世代でもあり、その成長に驚かされることもある。

ノービス4連覇は過去に4人だけ

そんな全日本ノービスで、A・Bのカテゴリーでそれぞれ2回優勝した 「ノービス4連覇」という偉業を成し遂げたのは過去に4人だけしかいない。

小塚崇彦(1998〜2001年)、浅田真央(2000〜2003年)、宇野昌磨(2007〜2010年)、佐藤駿(2013〜2016年)の4人だ。

2007年に全日本ジュニアに出場した羽生結弦
2007年に全日本ジュニアに出場した羽生結弦

初めて100点超を果たしたのは、2007年にノービスAで出場した羽生結弦(103.87点)と田中刑事(102.50点)。

羽生は出場選手で唯一アクセル以外の3回転5種類を構成に組み込んだ。

2007年の全日本ジュニアで男子ノービス選手として初めて表彰台に立った羽生結弦
2007年の全日本ジュニアで男子ノービス選手として初めて表彰台に立った羽生結弦

この年の全日本ジュニア選手権で男子では初めて、ノービス選手として、羽生が表彰台に立った。

その後、2010年に宇野昌磨が101.33点で100点超を達成。

2010年の全日本ノービスで優勝した宇野昌磨
2010年の全日本ノービスで優勝した宇野昌磨

2016年には佐藤駿(103.21点)、2017年に三浦佳生(108.39点)、2021年には中田璃士(102.06点)と、期待の後輩スケーターたちも大台に乗せて優勝を飾っている。

2013年に全日本ノービスで優勝した樋口新葉
2013年に全日本ノービスで優勝した樋口新葉

女子はノービスAで2013年に樋口新葉が初めて、100点超となる103.52点で優勝。

2014年に青木祐奈(106.86点)、2016年に住吉りをん(108.25点)と岩野桃亜(107.00点)、2020年に島田麻央が108.42点と記録を更新。

2021年に島田は、120.03点という驚異の点数で自身の記録を塗り替えた。同じ年、柴山歩も107.30点を出したが、2位だった。

スピンやスケ―ディングの基礎がしっかりしている選手や個性的な選手は、将来花開くことも多い、ノービス世代。

では、今年全日本ノービスに出場する選手たちはどんな選手たちなのか。

ノービスA男子はハイレベルな戦い

注目は高橋星名、西野太翔、森遼人の3人。

ハイレベルな戦いが予想され、3回転5種類を組み込む選手が多くいるノービスA男子。実力は拮抗しており、ミスなく演技を終えた選手が優勝を勝ち取ることができそうだ。

ノービスA男子・高橋星名
ノービスA男子・高橋星名

高橋星名は昨年全日本ノービスAで3位。推薦で出場した全日本ジュニア選手権では小学6年生ながら12位に入り、大健闘した。昨年に続き、今年も推薦を受けて全日本ノービスへ出場する。

ブロック大会は欠場したが、夏の大会で106.06点をマーク。メリハリがあり、華のある演技が魅力の選手だ。

ノービスA男子・西野太翔
ノービスA男子・西野太翔

西野太翔は100点超えのスコアで、関東選手権を優勝。今年の夏、ジュニア合宿にも参加し、年上の選手に囲まれ、刺激を受けたという。

今季から鍵山も指導した佐藤操コーチに師事し、スケーティングに磨きをかけている。ノービスB時代から3年連続で表彰台に登るも、優勝はなく、ノービス最終年の今年は悲願の優勝を狙っている。

ノービスA男子・森遼人
ノービスA男子・森遼人

森遼人は、2020年全日本ノービスBで優勝。昨年はケガもあり、思うような演技ができず16位だった。今年はリベンジの舞台。3回転ルッツと3回転フリップを2本ずつ組み込む高難度のジャンプ構成で表彰台を目指している。

その他、昨年の全日本ノービスB王者で中四国九州選手権を制した岡崎隼士ら、地方大会を制した選手たちも全日本ノービスに照準を合わせてくるだろう。 

完成度の高さが重要になるノービスA女子

注目は上薗恋奈、岡田芽依、宮本琉花の3人。

女子も3回転ルッツを2本構成に組み込むなど、高難度のジャンプ構成を予定する選手も多く、完成度の高い演技が優勝の行方を左右しそうだ。

ノービスA女子・上薗恋奈
ノービスA女子・上薗恋奈

上薗恋奈は、中部選手権を98.08点で優勝。冒頭の3回転ルッツ+3回転トゥループの連続ジャンプはキレがあり、音楽に合わせた振付も見どころが多い。

昨年は5位だった全日本ノービス。上位勢が全員ジュニアへ移行したため、優勝候補筆頭に躍り出た。大舞台で力を出しきれるか、注目だ。

ノービスA女子・岡田芽依
ノービスA女子・岡田芽依

岡田芽依は、昨年全日本ノービスAで34位という結果で、悔しさを味わった。

この1年間でジャンプ構成も大きくレベルアップし、今年は推薦選手として全日本ノービスへ出場。自己ベストを更新して3位以内を狙っている。

ノービスA女子・宮本琉花
ノービスA女子・宮本琉花

宮本琉花は、昨年全日本ノービスAで15位だったが、今年は東北・北海道選手権で優勝。3回転ルッツと3回転フリップを習得して構成に組み込む。アピール力のある選手が、どこまで自分を魅せられるか、期待したい。

その他、近畿選手権の表彰台を独占した木下アカデミー勢、河野莉々愛、川勝玲奈、鈴木華乃も地力のある選手。

昨年の全日本ノービスB優勝の大竹沙歩もノービスA1年目とは思えない、高難度のジャンプ構成で挑むため、女子も混戦必至だ。

ノービスB男子は光る個性に注目

個性豊かな演技があふれるノービスB男子。ジャンプの難易度はまだまだだが、王道の曲を使うこの世代だからこそ、光る個性に注目してほしい。

注目は吉野咲太朗、山本航成、佐久間陸の3人だ。

ノービスB男子・吉野咲太朗
ノービスB男子・吉野咲太朗

吉野咲太朗は地方大会で唯一、3回転ジャンプを成功させている。ジャンプもさることながら、マイケル・ジャクソンの楽曲に乗せて、印象的な振付を魅せてくれる。昨年は3位に入った全日本ノービスで優勝を目指す。

その吉野と同じリンクで練習する山本航成は、男子で2名しかいない推薦選手。昨季からの継続プログラムの完成度をどこまで高められるか、注目だ。

ノービスB1年目ながら、中四国九州選手権を制した佐久間陸。初めての全日本ノービスデビューで年上の選手たちにどこまで食らいつけるか、期待したい。

ノービスB女子はフレッシュな演技が見どころ

注目は金沢純禾、宮﨑花凜、花井咲良、星碧波の4人。

3回転を複数組み込む選手も多く、この世代ならではの勢いのあるフレッシュな演技も見どころ。地方大会から演技の質をどこまで上げられるかも、重要になる。

ノービスB女子・金沢純禾
ノービスB女子・金沢純禾

金沢純禾は昨年の全日本ノービス4位で、惜しくも表彰台を逃した。今年は地方大会で唯一70点台をマークし、全日本ノービスへ。この世代では驚異の3回転5種類構成で挑む。

東京選手権を制した宮﨑花凜は、今年がノービスB1年目。3回転を2種類組み込み、演技構成点では年上選手たちにも引けを取らない評価だ。初めての舞台でどんな演技を魅せてくれるのだろうか。

花井咲良は昨年の全日本ノービスB14位からステップアップを狙う。兄・広人も全日本ノービスに出場し、兄妹の活躍にも注目が集まっている。

その花井と中部選手権で大接戦の末、2位になった星碧波もスピードが落ちない疾走感のある演技で個性が光る選手だ。

さらにアイスダンスも4組がエントリー。昨年、初優勝した吉田菫・小河原泉颯組が連覇を狙う。ノービスにして、カップル結成は5シーズン目に突入。息の合った演技で全日本ノービス最高スコア(49.43点)超も見据える。 

“これから”の期待が詰まりに詰まった全日本ノービス。ここから世界へ羽ばたく選手たちもいるかもしれない。1人1人の演技が見逃せない。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケで!
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/toJPN.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班