10月1日からスタートした、男性の育休取得制度「産後パパ育休」。
男性の育休は従来「生後8週までに1回」と「それ以降に1回」の計2回取得することができた。ただ、原則、それぞれ期間を分けての取得はできず、使い勝手はあまりよくなかった。
そこで育児介護休業法の改正によって10月から始まった新しい制度では「生後8週まで」に「産後パパ育休」として2回の育休、「それ以降」にも分割して2回。つまり、1歳の誕生日までに計4回の育休を取ることができるようになった。

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これにより、仕事の引継ぎを済ませたり夫婦で交代で取ったりもできるようになり、育休がより取りやすくなる。

育休取得率の現状は? 改正も4割近くが「取得しやすくなると思わない」

では、男性の育休取得率の現状はどうなっているか。全国では2021年度に過去最高の13.97%(厚労省調べ)、岩手県は2020年度の数字で11.9%となっている(岩手県調べ)。
女性の育休取得率85.1%に比べるとまだまだ低く、国が目標としている“2025年までに30%”という数字とも開きがある。

大手保険会社・明治安田生命の調査(2022年8月実施)によると、制度改正でも「育休を取得しやすくなると思わない」と答えた男性は37.1%と4割近くに上り、理由のトップが「職場の理解不足」、次いで「給与の減少」や「周囲の雰囲気に不安がある」などだった。
職場で取得しやすい雰囲気をつくることが一つのカギと言えそうだ。

育休を取りやすい社内環境へ…制度紹介やアンケート実施など会社が後押し

空調設備の工事や点検・修理などを行う、岩手・矢巾町の「信幸プロテック」では、2017年から、育休を取りやすい社内環境を作ることに取り組んでいる。

信幸プロテック・村松直子 専務
社員の年齢層や10年後の姿など、色々なものをイメージする機会があり、育児や介護など本人たちの生活スタイルに合わせて休みを取り、うまく調整できる会社になっていかないと将来危ういと感じた

信幸プロテックでは育休を積極的に取ってもらおうと、所属する部署の上司からも取得の呼びかけを行っている。

信幸プロテック・村松直子 専務
やはり「みんなが忙しいのに自分だけ休みは取れない」という負い目を感じてしまうことが多かったので、そこを部門長や社長から声をかけてもらい、みんなこういうふうに感じているということを伝えて、(本人が)休みを取ろうという気持ちになるところが難しかった

また、育休制度の内容を紹介するリーフレットの作成や、家族で取得について話し合うきっかけにしてもらおうと意向を確認するアンケートも実施している。

こうした取り組みもあり、現在1歳までの子どもがいて育休取得の対象になる男性社員5人のうち、2人が育休を取得した。
ちょうどこれから育休を取得するという社員に、話を聞いた。

工事現場の管理の仕事をする佐藤幸政さん(33)は、10月6日に双子の子どもが生まれたばかり。

トータルエンジニアリング部・佐藤幸政さん:
ずっとドキドキしてたけれど、いざ生まれてみると本当に生まれたんだと実感が湧いてきて、温かい気持ちで胸がいっぱい

今回、社内で初めて2カ月という長期の育休を取ることになった。

トータルエンジニアリング部・佐藤幸政さん:
今までにない長さだったが、部署の人や会社の先輩に激励してもらい、「育児が大変だろうからまず頑張って」と背中を押された

佐藤さんの部署は、ほかに8人のメンバーがいて、佐藤さんが育休を取っている間、分散して仕事を引き継ぐ。

トータルエンジニアリング部・佐藤幸政さん:
周りがしっかり仕事をしてくれるし、背中を押してくれることで、こちらも引き継いでも安心できるなと感じた

誰もが育休をとりやすい環境を…取得率100%目指す

信幸プロテックでは育休取得率100%を目指していて、まだ育休を取っていない社員にも取得を働きかけるほか、佐藤さんのような長期の取得にも対応していく考えだ。

信幸プロテック・村松直子 専務
期間的には短いものが多くなってしまうので、どれだけ長く育休期間を確保して家族を安心させられるのかという点で、期間がまだ課題だと思う

また、育休中の収入については無給としている企業が多いが、雇用保険から支払われる「育児休業給付金」を受け取ることができる。
受け取れる金額は、休業開始前の給与の67%となっているが、厚生年金や健康保険などの社会保険料が免除される制度もあり、この2つを合わせると条件によっては手取り月収の実質8割ほどがカバーされることになる。

今回の制度改正をきっかけに、誰もが育休を取得しやすい環境の整備が進んでほしい。

(岩手めんこいテレビ)

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