沖縄県内の河川や水道水から有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が検出されている問題を受けて、市民団体が実施した血中濃度調査の結果が、2022年10月15日に公表された。
PFASの一種で、有害物質の「PFOS(ピーホス)」の値は、高いところで全国平均の3倍に上り、識者は、国や行政によるさらなる詳細な調査が必要だと指摘している。

動かない国や県 募る不安「結果が悪ければ子どもたちにも影響が…」

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2022年6月から7月にかけて、県内6つの市町村・7か所で実施された血中濃度調査。18歳以上の住民387人から血液を採取した。

PFASとは、有機フッ素化合物の総称で、そのうちのPFOS、PFOA(ピーホア)は国際条約で使用や製造が禁止されている。人体への有害性が指摘される化学物質だが、今、沖縄のアメリカ軍基地周辺の地下水や、北谷浄水場の飲料水から検出されている。
どれだけ体内に取り込んでしまっているのかーー。地元の住民は、不安を隠せない。

宜野湾市喜友名区に住む 与那城千恵美さん:
結果が悪かった場合、私から生まれた子どもたちにも影響があるはずと思って。不安しかないです

市民団体はこれまで国や県に血液の調査を求めてきたが、国内に基準がないことを理由に聞き入れられず、独自の調査に乗り出したのだ。

PFAS汚染から市民の生命を守る連絡会 伊波義安 共同代表:
測定しないと健康への影響もわからないですから、私たちはその壁を乗り越えるために、しょうがないから自前でやってみようじゃないかと。

PFOS血中濃度 調査の7地域全てで全国調査の平均値上回る 

様々な種類があるPFASだが、そのうちの主な有害物質の一つ「PFOS」については、調査の結果、宜野湾市や嘉手納町、金武町などすべての地域で、全国調査(環境省が2021年に実施)の平均値よりも血中濃度が上回った。最も高かった北谷町では、全国の3.1倍となった。
また、水道水の汚染が確認されていない本島北部の大宜味村では、ほかの地域よりは低い値となったものの、全国平均を上回る結果となった。

有機フッ素化合物汚染から市民の生命を守る連絡会 桜井国俊 共同代表:
大宜味に比べて、他の地域は明らかに汚染されている。原因としては沖縄の場合、それ以外に工場起源のようなものは考えられませんので、やはりPFOS汚染源としては基地のというふうに限りなく推定される

調査では、普段水道水を飲んでいない人よりも、飲んできた人の方が血中濃度が高い傾向にあることもわかった(嘉手納町を除く)。

PFOSは人体に蓄積され、腎臓がんや甲状腺疾患、胎児への悪影響などが指摘されている。

日本国内には血中濃度の基準はないが、ドイツでは、1ミリリットルあたりPFOSで20ナノグラム、PFOAで10ナノグラムを超えると、「健康に影響があると考えられるレベル」であり、「緊急にばく露軽減策をとる必要がある値」と定めている。

今回の調査では、387人中27人がこの数値を上回ったことが明らかになった。

汚染発覚から6年…識者「血中濃度で現状を把握してこなかったのは問題」

2016年、北谷浄水場の水にPFOSが含まれていたことがわかってから6年。調査の分析を担当した京都大学の原田浩二准教授は、血中濃度調査を行わない行政の姿勢は問題だと指摘する。

京都大学・原田浩二 准教授:
水道水等のPFAS汚染というのがあったわけですから、その中で、血中濃度で現状把握してこなかったのは、やはりこれは問題ではなかったかと思っております。
(今回の調査地域)以外の地域でも、どのような状況になっているのかというのを確認していかないと。沖縄全体でのPFASの実態、行政としても取り組む必要はあるのではないかと思っております

PFOSの代替物質「PFHxS」“全国平均の14倍”で検出された地域も

京都大学・原田浩二 准教授:
これが今回集まっている検体です

今回の調査で原田先生が注目したのは…

京都大学・原田浩二 准教授:
今出てきたのがPFHxS(ピーエフヘクスエス)ですね

PFHxSは、PFOSの使用が国際的に禁止されてから、代替物質として使われてきたが、こちらも肝機能への悪影響などが指摘されている。
今回の調査では、PFHxSについても測定。その結果は…。

京都大学・原田浩二 准教授:
濃度の高さで言えば、PFOSも沖縄の方は高いと思うんですけど、特にこのPFHxSがこれだけ、しっかりシグナルとして見えてくるのはかなり、稀です。他の地域ではほとんど見かけたことがなくて。
沖縄の方、PFHxSの暴露が比較的高いんじゃないかなというのをちょっと思わせるところです

今回の調査の結果、金武町では全国平均の14倍もの濃度で検出された。

京都大学・原田浩二 准教授:
やはり水道水、それだけとはまだわかりませんけど、そういったものから取っている可能性高いだろうと思います

「命にかかわる問題ということをみんなが気づいて動いて」

調査に参加した、宜野湾市喜友名に住む与那城千恵美さん。血中濃度の個人の結果は、これから郵送で届く予定だ。

宜野湾市喜友名に住む 与那城千恵美さん:
もし私の値が高かった場合。じゃあ、これを体からどう出していくのかとか、子供達はどうなんだろうとか、すごく不安な気持ちでいっぱいで、怖いです

これまでPFASの調査を拒んできた行政も、この結果に向き合うべきだと感じている。

宜野湾市喜友名に住む 与那城千恵美さん:
県も市も、これを見ても動かなかったら、全然市民を守ってないなと思います。命に関わる問題ということをみんなが気がついて動いてくれて、子ども達にこれを引き継がないようにしていければいいかなと思う

大規模な検査を国・県に要請へ

アメリカでは2002年、工場排水によるPFAS汚染と住民の病気との因果関係を明らかにするため、7万人の血液検査が行われ、腎臓がんや精巣がんのほか、妊娠高血圧症など6つの疾患と関係があると結論づけられている。

今回の調査で、水道水の汚染が確認されていない大宜味村でも、PFOSの濃度が全国平均を上回ったことなどについては、さらに詳細な調査が必要と有識者は指摘している。

市民団体は、県民の健康守るために、今回の調査結果をもって大規模かつ詳細な調査の実施を求め、今後も国や県に要請を続ける。

(沖縄テレビ)

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