「前代未聞のことだ。本当に情けない限り」千葉県警の幹部はそう言うと肩を落とした。今年8月に、女性を盗撮したとして現行犯逮捕された男から発覚したのは、過去に繰り返してきた“凶悪な性犯罪”の数々だった。今月4度目の逮捕となった岡田誠容疑者(45)は、あろうことか、千葉県警の警部で暴力団捜査を担当する捜査4課の課長補佐だった。

”盗撮”逃走劇の末 逮捕された課長補佐

発端は今年8月12日、“盗撮がバレて大逃走”した男の逮捕劇だった。午後10時半すぎ、京成千葉駅構内のホームに向かうエスカレーターに20代の女性が乗っていたところ、すぐ後ろに立っていた男が、しゃがみ込むような姿勢でスカートに手を差し伸べていたという。

送検される岡田誠容疑者(45)(13日 千葉中央署)
送検される岡田誠容疑者(45)(13日 千葉中央署)
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警察車両の中で、岡田容疑者は、脚の間に顔をうずめていた。
警察車両の中で、岡田容疑者は、脚の間に顔をうずめていた。

盗撮しているのに気づいた目撃者の男性が、「盗撮だ」と叫んだ。すると、男は女性の脇をすり抜けて一気にホームに駆け上がり、今度はそこから階段を駆け下りて、改札口を突破して逃走。目撃者の男性と駅員が追いかける中、事態に気付いた巡回中の警察官が男を路上で取り押さえ、現行犯逮捕した。

その男こそ、岡田容疑者だった。岡田容疑者がどの段階で身分を明かしたのかは明確になっていないが、確保した警察官もさぞ驚いただろう。その時、岡田容疑者は酒に酔っていて、逮捕後の調べでは「盗撮はしていない」と容疑を否認したという。

スマホから風呂場の盗撮動画が

この類の性犯罪では、余罪がある場合が少なくない。千葉県警が、容疑者のスマホを調べたところ、入浴中の女性の盗撮動画が出てきたという。岡田容疑者は、今年6月に千葉県内の住宅の敷地に侵入し、浴室の窓から入浴中の女性を盗撮した疑いで再逮捕された。千葉地検は、これらの盗撮など2件で、先月21日、岡田容疑者を起訴した。

千葉地検に入る岡田容疑者。頭からフードで覆い、表情を見ることはできなかった(13日)
千葉地検に入る岡田容疑者。頭からフードで覆い、表情を見ることはできなかった(13日)

その後、余罪捜査が進む中でまさかの事態が発覚する。岡田容疑者から採取したDNAが、5年前に発生した性的暴行事件の現場に残されていたDNAと一致したのだ。県警は裏付け捜査を進め、岡田容疑者が2017年7月の深夜、県内の集合住宅の一室に侵入し、成人女性を刃物で脅したうえ、性的暴行を加えた強制性交と住居侵入の疑いで再逮捕した。

その後も、今度は8年前に起きた同様の性的暴行事件の現場に残されていたDNAの鑑定により、岡田容疑者の関与が判明。今月11日、異例の4度目の逮捕となった。容疑は改正刑法により強姦罪が強制性交罪に改められた2017年7月より前のため、強姦罪が適用された。3度目の逮捕後の調べでは容疑を否認していたというが、今回4度目の逮捕後は容疑を認めているという。

勤続24年の”刑事”に何が

岡田容疑者は、1997年に千葉県警に採用され、勤続年数は24年以上になる。これまで捜査4課など主に刑事部門に所属してきたという。現在、警部で捜査4課の課長補佐となると、これからの県警の幹部候補だったに違いない。

勤務態度に問題はなかったといい、岡田容疑者を知る県警幹部は「面倒見が良く、部下からの信頼もあって慕われていたと思う。まさかこんなことをするような人ではなかった」と嘆いた。

岡田容疑者は、主に、刑事畑を歩いてきた”幹部候補”だったという。
岡田容疑者は、主に、刑事畑を歩いてきた”幹部候補”だったという。

”連続”性的暴行事件に関与か

今月13日、4度目の送検となり、護送車に乗せられ、留置先の千葉中央署から出てきた岡田容疑者は、終始、自分の脚の間に深く頭をうずめ込み、その表情をうかがい知ることは出来なかった。

千葉地検の出入りの際も待ち構える報道陣がわかったのか、フードを深く被り、かがみ込むように足早に車へと乗り込んだ。とても、犯罪者を相手に、県民の安心安全のために戦ってきた「部下から慕われる」警察官とは思えない姿だった。

捜査関係者によると、当時、県内では同様の性的暴行事件が連続的に発生していて、県警は、他の複数の事件にも関与している可能性があるとみて調べを進めている。被害者のため、そして国民県民の信頼回復のために、余罪を1つでも多く追及し、捜査が尽くされることが望まれる。

岡田容疑者は、連続性暴力事件に関与している可能性もあるという(13日 千葉地検)
岡田容疑者は、連続性暴力事件に関与している可能性もあるという(13日 千葉地検)

(フジテレビ社会部・千葉県警担当 風巻隼郎)

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社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
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風巻隼郎
風巻隼郎

1996年新潟県出身。
社会部で、司法クラブ検察担当、コロナ取材班、千葉県警を担当。
現在は、警視庁捜査二課・暴対課を担当。