今から20年後には、日本から「サラリーマン」が消滅。日本の雇用は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ変わっていく。
日本における仕事とキャリアの大変革について、こう考察するのは、国際経営コンサルタントで弁護士の植田統さん。
「ジョブ型」へ変化することで、「メンバーシップ型」の下でできた定年制も消えていくだろうと考える。
変化の激しい時代、今後「定年」を迎えるであろうビジネスパーソンはどう生き抜けば良いのか。今後20年における雇用の変化に仮説を立て、生き抜くヒントを記した著書『2040年「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)から一部抜粋・再編集して紹介する。
生涯現役時代に必要なのは「スキル」「体力」
これからは「生涯現役」の時代になる。
いつ国家財政が破たんし、大インフレの時代がやってくるのかわからない。年金もあてにはできないため、生涯現役で働く覚悟がないといけない。
そのために必要なのは、仕事の「スキル」と「体力」だ。
スキルについては、今後「ジョブ型雇用」を採用する企業が増えると、「経験」や自身の持つ「スキル」が重要視される。
企業から不要だと思われると解雇されることもあるため、私達は自分の力でキャリアを作り上げることが求められる。転職も当たり前になり、そのたびに給与を上げていく人も出てくるでしょう。
一方、長く働けるための、体力維持の方法も考えてみたい。
仕事をしていくために、我々は筋骨隆々である必要はない。マラソンを走れる必要もない。仕事を8時間続けられるだけの体力、持久力があればいい。細く長く生きる体力を身につければいいのだ。
まずは「75歳まで」を目標に
生涯現役と言っても、実際100歳まで仕事を続けられるだけの体力を維持することは不可能だと思う。
そこで、とりあえず75歳を目標に設定する。
毎朝元気に起きることができる、自分の歯で食べることができる、自分の足で歩いて仕事にいける、パソコンで作業ができる、疲れずに7、8時間仕事を続けることができる、これが目標だ。

ちなみに、日本人男性の平均寿命は、1950年には58歳、60歳を超えたのが51年。次に65歳を超えたのが59年、70歳を超えたのが71年。
女性の場合は、60歳を超えたのが50年。65歳を超えたのが52年、70歳を超えたのが60年。
私が子どもだった時代、つまり60年代では60歳の人は、残り5、6年の寿命しかなかった。
2020年の男性の平均寿命は 81.64歳、女性は87.74歳。残り5、6年の寿命の男性は75歳、女性は80歳ということになるため、この年齢を生涯現役のターゲットとすれば十分でしょう。
元気なシニアの健康法は「好きなこと」をやること
私はロータリークラブに所属しています。メンバーの中には70代、80代の方も多いですが、皆さん非常に元気。ランチをペロリと平らげ、お酒の好きな人は、70代になっても銀座に足しげく通っている。
現役の方は今でも会社に毎日出社し、現役を退いた方は毎週のようにゴルフに行っている。私は、これを目標としている。

彼らに健康法について聞くと、皆さん「好きなことをやること」「活動的であり続けること」だと言う。もちろん、皆さん健康には気を使っていて、人間ドックには欠かさず行き、体の手入れをすることも忘れてはいない。
私自身は体力の衰えを感じ始めた40代中盤から毎週2回程度ジムで体を動かしている。それと、毎朝20分程、犬の散歩に行っている。
寝るのは11時頃、起床は6時。アルコールは、50代後半に前立腺がんをやってから、家では飲まなくなり、飲むのは外で会合に出席した時だけ。
2、3年前から、自分の体の柔軟性がなくなってきていることに気づき、月に2、3 回整体に通うようにもなった。
運動は月に2回程度はゴルフに行き、練習にもたまに出かけている。お陰で健康も維持できているため、今のところ、人間ドックに行っても特に指摘を受けるようなところはない。
「ストレス」発散の方法を知っておこう
以上が体のほうだが、精神的にストレスを感じないでいられるようにしておくことも、健康維持には重要ではないかと考えている。
人間関係に悩んだり、お金の問題で追い詰められたりすると、ストレスがかかり、健康を害する。
そのため、仕事でストレスがかからないようにすることにも気をつけている。
私の事務所では、売上は各自の責任で上げてもらい、経費だけを負担してもらう弁護士全員が経費共同のパートナーというモデルを取っている。
このモデルを採用しているお陰で、売上があがらなければ自分の責任という点でハッキリしているため、他人を責める余地がない。そのお陰で人間関係に悩むことは、ほとんどない。
他の弁護士事務所では、収支共同モデルといって、パートナー全員で売上も費用もシェアするところもある。パートナーによって、売上の多い人、少ない人もいるため、パートナー間での対立が生じやすく、人間関係の調整でストレスがかかるのではないかと思っている。
大きな会社でも、売上が上がらなければ、営業と製品開発で、「お前が悪い」「お前こそが悪い」という対立が起こりやすく、やはり精神的ストレスを抱えることもあるでしょう。
将来的には、日本の仕事スタイルもジョブ型に変わってくるため、一人ひとりの責任がハッキリし、ストレス問題はかなり解決するかも知れない。しかし、それまでは仕事のストレスをいかにうまく発散させるかが大切になる。
家庭、運動、趣味等で仕事を完全に忘れることができる時間を作り、自分の気持をコントロールして、平穏な生活を送ることが長期的なキャリアの成功のためには不可欠になるでしょう。

植田統
国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授。著書に『人生に悔いを残さない45歳からの仕事術』『企業再生7つの鉄則』(共に日本経済新聞出版社)、『残業ゼロでも必ず結果を出す人のスピード仕事術』(ダイヤモンド社)、『日米ビジネス30年史』(光文社)などがある