購入した商品が「小さくなった?少なくなった?」と感じたことはあるだろうか。価格や外見は同じでも、中身はちょっと減っている…というものだ。

実はこれ「シュリンクフレーション」と呼ばれる、経済現象のひとつ。容量や重量を減らすことで、実質的な値上げを図るもので、日本では“ステルス値上げ”と呼ばれることもある。

こうした実質的な値上げを消費者はどう思うのか。実際には反応が分かれることが、顧客満足度のリサーチを行う企業「MS&Consulting」の調べでわかった。

消費者の約8割が家計への負担を感じている

調査は2022年7月1日~4日、MS&Consultingの覆面調査サービスに登録する、全国の一般消費者調査員1032人(20歳~59歳の男女)を対象に、インターネットで行われた。

そこではまず、値上げそのものをどう思うのか質問。家計への負担感を点数が低いほど感じない、高いほど感じるという基準で、1点~10点の10段階で答えてもらった。※1点=全く感じていない 5点=どちらともいえない 10点=とても感じている

そうしたところ、全体の79.7%が「負担を実感している(6点以上)」と回答。「強く実感している(9点以上)」という人も39.9%にのぼった。

値上げを家計の負担に感じている(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
値上げを家計の負担に感じている(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
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ただ、昨今の状況で企業が「値上げをしない」ことについては、全体の38.4%が「消費者の味方で素晴らしいことだ」「どちらかといえば良いこと」などと肯定的だったのに対し、「適切に値上げをしていくべきだ」「どちらかといえば良くないこと」と否定的だったのが26.3%で、「どちらともいえない」中立は35.4%だった。

その一方で受け入れている層も(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
その一方で受け入れている層も(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)

家計の負担になると思っているが、様々な製造コストが上昇する中で、値上げを受け入れている層もあるようだ。

「落胆が大きい」「食品ロスが減る」ステルス値上げの反応はさまざま

それでは、ステルス値上げはどう思うのか。5段階の選択肢から近い印象を選んでもらったところ、「内容量そのままで分かりやすく値上げをしてほしい」(20.5%)、「どちらかといえば内容量そのままで分かりやすく値上げをしてほしい」(27.9%)という結果に。

ただ「ステルス値上げの方が嬉しい」(5.3%)、「どちらかといえばステルス値上げの方が嬉しい」(19.9%)と答えた人は全体の2割以上いて、「どちらともいえない」は26.4%だった。

ステルス値上げの印象はやはり良くない(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
ステルス値上げの印象はやはり良くない(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)

それぞれの立場からは、こんな見解が寄せられた。

【内容量そのままで分かりやすく値上げ派】
・値段の変化は気づきやすいですが、内容量の変化は気づきにくいので、分かりやすい方がありがたいです。(40代女性)
・気づいていないうちはいいが、気づいた時の落胆は大きい。ネガティブ印象が増してしまうので、値上げするならわかりやすくやってほしい。(30代男性)

【どちらとも言えない派】
・値段は据え置きでも内容量が減るとがっかりしますが、はっきり値上げされるとそれはそれでがっかりするので、どちらとも言えません。(50代女性)

【ステルス値上げの方が嬉しい派】
・支払う金額は変わらないし、食品については食べ切ることが容易になり食品ロスが減ると思うので(40代女性)
・いい印象はありませんが、値段そのままで微量の量を変更する方が直接的に生活に影響が少ないと思ったため。(20代男性)

コメント欄には厳しい意見も(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
コメント欄には厳しい意見も(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)

値上げの反応が気になり「内容量」を減らしてしまう

消費者は値上げ自体には一定の理解を示すが、ステルス値上げと受け止められると、落胆や失望を感じるようだ。こうした値上げの手法はなぜ起きるのか。消費者行動の研究を専門とする、ニッセイ基礎研究所の上席研究員・久我尚子さんに、背景を聞いた。

――内容量を減らすような値上げはなぜ起きる?想定される理由を教えて。

いまは原材料価格や物流・人件費などのコストが増えていて、企業努力では吸収しきれないところがあります。ただ、単純に価格を上げると消費者が買い控えたり、他製品にスイッチするなどの反応も考えられる。そのため「内容量を減らし、価格はそのまま」となるのではないでしょうか。
 

――内容量を減らすことに、企業はどんな狙いがあると思う?

必ずしも、企業が消費者をだまそうとしているわけではないと思います。今はSNSで拡散される可能性があるので、リスクが懸念されることはしにくいものです。消費者のプラスになるような工夫もした上で量は減りましたという形が多いと思われます。例えば、牛乳のパックは入れやすさを考慮して、デザインを変えたりですね。何とか理解してもらいたいというところだと思います。

企業はステルスと捉えられないような周知が必要

――民間の調査では、ステルス値上げに否定的・肯定的な反応で分かれた。

実質的な値上げは、いつもの商品を同じ価格で購入したい人は良いと思うでしょうが、容量が減るのは嫌だと思う方は残念に思うはずです。調査結果をみるに、企業が消費者にわかりやすいように(内容量の変化を)周知することが重要なのではないでしょうか。値上げがステルスと思われないよう、SNSなども活用して丁寧に周知した方がいいかもしれないですね。
 

――日本の風土や考え方が、企業の値上げ方法に影響はしていそう?

関係していると思います。日本はデフレが長年続いて、消費者は「安くても良い商品・サービスがたくさんある」という価値観が醸成されています。賃金が上がっていないので節約志向も根強いです。企業も「価格据え置きで頑張る」ことが美徳とされた風潮があったと思います。

賃金があがらないために節約志向も強い(画像はイメージ)
賃金があがらないために節約志向も強い(画像はイメージ)

――消費者側が物価高にできることはあるの?

一番は無駄なものを買わないことですが、いま価格が上昇しているのは電気代や食料品など、生活必需性が高く、支出の抑制が難しいものが多いと思います。いつも買っている食料品などを、価格の観点だけで、安いものにスイッチするのは、少し寂しい気持ちになるかと思います。一方で旅行やレジャー、ファッションなどはサブスクや中古市場でも楽しめるサービスがあると思うので、活用や工夫ができるところだとも思います。
 

――実質的な値上げに関連して、伝えたいことは?

企業がコスト削減ばかりに注力すると、新しい商品の開発意欲が薄れて、ビジネスを拡大できずに競争力が低下していきかねません。また、コスト削減の努力を続けるのには限界があり、結果、全体の生産性が落ちてしまうことが考えられます。今の消費者が何を求めているのかを考えながら、付加価値の高い商品・サービスを出すことが重要かと思います。マクロの視点では、適切な価格転嫁がされて従業員の賃金が上昇するようなスパイラルができると、理想的だと思います。

値上げの理由で受け止められ方も違う(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)
値上げの理由で受け止められ方も違う(MS&Consulting「値上げに対する消費者意識調査」より)

ちなみに今回の調査では、値上げの理由別に消費者が受ける印象も聞いていて、人件費の増加、品質の改善といった理由ではネガティブな印象を持つ割合が増えていた。受け止められ方は値上げの理由も関係してくるかもしれない。

消費者をだますための手法ではないと思うが、ステルス値上げと思われないためには、内容量が減ったことを分かりやすく伝えることが企業側は大切になりそうだ。

記事 4716 プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。