「厳重に警戒」「警報級」「最大級に警戒」など、気象災害への警戒を呼びかける表現の数々… みなさんは、どの言葉が出てきたときが一番危険な状況と感じるだろうか? 情報を発信する気象庁に“使い分け”を聞いてみた。
“歴代最強”クラスの台風が列島直撃
18日(日)に非常に強い勢力で鹿児島市付近に上陸した台風14号。列島を縦断し、20日(火)午前9時、温帯低気圧へと変わった。
上陸前、勢力は一時910ヘクトパスカルまで発達。“歴代最強クラス”のまま、九州への接近・上陸が予想されていたため、気象庁も早めから「経験したことがない」レベルの暴風・高波・高潮・大雨が発生する可能性があると、強く警戒を求めていた。
“強く”なりつつある、警戒を呼びかける表現
毎年のように「記録的」「歴史的」な豪雨が発生するなど、異常気象がもはや“日常”的にも起こるようになってきた今、それを伝える気象情報の表現や警戒を呼びかける文言も強くなってきている。
よく出てくるのが、「警報級」「最大級に警戒」「厳重に警戒」などで、気象庁が会見で使う場面をご覧になった方も多いと思う。
だが…
何度もこうした言葉に触れていると、一体、「どの表現のときに、どれほど警戒したらいいのか?」と迷うことはないだろうか? “危険”な順に並べてみようとしても、どれも強い警戒が必要そうに感じて、難しい。
そこで、気象庁気象リスク対策課の坪井嘉宏さんに、こうした表現を会見でどう使い分けているのかを聞いてみると、そこには明確な“言葉の使い分け”があった。
いずれも、警戒が必要な状況に変わりはないが、それぞれの表現に込められたメッセージを、だんだん“深刻度”が増していく順にご紹介する。
「警報級」「警戒」
これらの表現は、大雨警報や暴風警報などといった【『警報』が発表されているとき、もしくは発表の見込みがあるとき】に使われているという。
気象庁が出す『警報』は、重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報、と定義されている。
つまり、「警報級」という表現には、重大な災害が発生する恐れがあると、注意を呼びかけるメッセージが込められている。
気象庁では、同様の“緊迫度”を伝えるときには、「警戒」が必要、という表現も使用しているそうだ。
これらは、災害危険度を色で知ることができる気象庁の『キキクル』では、「警戒」を意味する【赤】が表示されている、もしくは、されそうなエリアを対象に使われている。
「厳重に警戒」
この言葉は、【「警報級」を超えて、さらに危険度が高い状況が予測されたとき】に使われるという。
たとえば、大雨警報の発表中に、土砂くずれなどの危険度が高まり出される土砂災害警戒情報のように、警報の一つ“上”の状況が起きそうなときに、「厳重に警戒」を、と呼びかけている。
『キキクル』では、「危険」を意味する【紫】が発生するような状況の時だ。
そして、そのさらに“上”、一番強い表現が…
「特別警報級」「最大級に警戒」
これらの言葉は、まさに、これ以上ないぐらいの警戒を訴えるときに使われるもので、【『特別警報』が出される確率が高いとき】に使っているいう。
「最大級に警戒」は、実際にその後『特別警報』が出されたときにもよく使用されている。

「経験したことのない」と「数十年に一度」の違いは?
台風14号が九州に接近する中で開かれた17日(土)の気象庁の会見では、その危険度を「特別警報級」とし、「最大級の警戒」を呼びかけた上で、さらにもう一つ、「経験したことのない」暴風・高波・高潮、記録的な大雨が起こる可能性がある、との発言が。
会見の中で、記者からその意図を聞かれる場面があった。
記者:
特別警報の発表基準は『「数十年に一度」の強度の台風や同程度の温帯低気圧により、暴風・高潮・高波が予想される場合』と気象庁HPに明記されているが、今回「経験したことのないような」という表現を使った理由は?
気象庁:
警戒を呼びかけるという意味では、ほぼ同じ(意味で用いた)。一人の個人にとってみれば、記憶をさかのぼれるのはおよそ20~30年と考えた。さらに過去にさかのぼれば、同様の(強さの)雨・風はあったが、個人にとっては「経験がない」だろうという理解でこう表現した。
後日、気象庁に改めてこの点を聞くと、『全ての人に実感や記憶があるわけではない「数十年に一度」という言葉より、「経験したことがない」と表現したほうが、より身近に迫る危険がイメージして頂きやすいと考えている』とのお話しがあった。
気象庁は、情報を受け取る側からの反響のほか、有識者や関係各所との話し合いを通して、よりよい「伝え方」を探り続けている。
災害危険度の把握は『キキクル』の活用を

言葉だと、どうしても個人の“語感”で受け取り方が違ってくる… 危機感をどう伝えるのがいいかを探る中、気象庁がたどり着いた結論の一つが『キキクル』だったという。
災害がどれほど危険で、どういう行動をとるのがいいのかが“色”で知れる『キキクル』の活用を、取材の最後、坪井さんは改めて強調していた。

(執筆:フジテレビ 気象センター兼社会部 川原浩揮)