今月27日に迫った安倍元首相の国葬。葬儀当日には、1000人を超える自衛隊が様々な形で参列する予定となっている。

国葬で自衛隊には4つの任務

国葬には国防の最高指揮官だった元首相への弔意を表すため、自衛隊員が多数参列することとなるが、どのような任務を行うのか。

安倍元首相の国葬にについて、政府は2007年8月に実施された宮澤喜一元首相の内閣・自民党合同葬に参列した自衛隊の規模を踏襲する考えだ。

宮澤元首相の葬儀には陸海空の自衛隊員約1350人が参列。最高指揮官への礼を示す「儀仗」、遺骨を乗せた柩車に沿道で敬礼する「と列」、音楽を演奏する「奏楽」、そして「弔砲」の4つの役割を果たした。

音大卒の「中央音楽隊」が奉楽

宮澤元首相の葬儀では、陸上自衛隊の市ヶ谷駐屯地に所在する「東部方面警務隊第302保安警務中隊」と、朝霞駐屯地に所在する「陸上自衛隊中央音楽隊」が会場内での「儀仗」と「奏楽」を担当した。

「第302保安警務中隊」はアメリカ大統領など国賓の来日時に皇居宮殿で儀仗礼を行う部隊で、「中央音楽隊」は主に音楽大学卒業者で構成され、国賓への特別儀仗演奏を行う自衛隊唯一の音楽隊だ。この2つの部隊で自衛隊の中で最高格式の「儀仗」「奏楽」の任務が実施できると言える。

1000人が整列し柩車に敬礼

ゆっくりと走る遺骨を乗せた柩車に敬礼を行うのが「と列」と呼ばれる任務だ。宮澤元首相の葬儀では、陸海空の隊員に加えて、防衛大学校や防衛医科大学校の生徒らが1000人規模で会場周辺に整列した。この時の「と列」は、千代田区の科学技術館付近から北の丸公園などの沿道を経て、武道館の玄関まで途切れることなく並んだという。

1980年、故・大平元首相の際の「弔砲」の様子
1980年、故・大平元首相の際の「弔砲」の様子
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19発の弔砲が発射

27日の安倍元首相の国葬では、19発の「弔砲」を発射する見通し、これも自衛隊の任務だ。「弔砲」とは葬儀などで大砲を空砲で撃つもので、敬意を示す「礼砲」とは異なり、弔意を示すために発射する。敬意や弔意を示すために、なぜ大砲を発射するのか。

これは、昔に船が外国の港に入港する際、船の大砲を撃ち尽くしてから入港する習慣に由来するという説がある。船に装填されていた弾を全て撃ち尽くすことによって、入港する船は外国に攻める意図がないことを示した。この行為が長い時間をかけて習慣化した結果、大砲を発射する行為が相手に対して敬意や弔意を示すものへと変化していったとされている。

また、当時の船は、片側に7門の大砲を抱えていて、両舷であわせて14門装備されていた。両舷の大砲を発射すると14発。これに「重ねて不戦の意思を示す」ために、更に片方の7発を発射すると計21発となる。これが「礼砲」、そして「弔砲」の最も多い発射数になったという説もある。

日本での「弔砲」は、元々国賓来日時の礼砲について定めた自衛隊の「栄誉礼等及び礼砲の実施要綱」に準拠して実施される。

「弔砲」の発射数は弔意を示す対象の格式によって11発から21発までの6段階に分かれていて、国家元首、大統領及び皇族への21発を最高格式とし、首相、副大統領その他の国賓には19発、閣僚、陸海空軍大将に17発、陸海空軍中将に15発、陸海空軍少将に13発、一番少なくて陸海空軍准将に11発となっている。

弔砲はなぜ105ミリ榴弾砲

27日には「弔砲」のため、陸上自衛隊の105ミリ榴弾砲が北の丸公園に配備される予定だ。要綱によると、3~5秒間隔ごとに1発撃つことになっているのだが、105ミリ榴弾砲は砲弾の装填から発射までの行程がスムーズに行えるため、礼砲や弔砲のように一定の等間隔で「リズミカルに発射する」のに適しているとされる。

また、これより大きい155ミリ榴弾砲だと、空砲とは言え砲撃の音が大きいため、比較的「マイルド」な砲撃音の105ミリ榴弾砲が式典に向いているとの意見もある。27日に迫る国葬に向けて、自衛隊の準備は着々と進んでいる。

(フジテレビ政治部・上法玄)