かつて昭和の時代に世界に広まったニッポンの家電技術をまとめて振り返ることができる。そんな、映像や音響マニアにはたまらない資料館が広島県庄原市にある。この資料館の運営に情熱を注ぐ元エンジニアらを取材した。

広島県庄原市口和(くちわ)町に残るかつて高校だった建物。

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その一室に入ると…。古い映像機器や音響機器が所狭しと並ぶ。ここは、庄原市が運営する口和郷土資料館。

懐かしい昭和の家電や音響機器は修理され今でも動く

この資料館の一番の特徴は…これらの古い展示物の全てがちゃんと動くこと。

口和郷土資料館・安部博良さん:
ここは白黒テレビからカラーテレビ、全てアナログテレビなんですよ。

安部博良さん:
一番特徴的なのは、このテレビだと思います。これはポータブルテレビなんです。持ち歩けるんです。なおかつ初めてトランジスタを使って作られたテレビなんです。
当時(1960年)、6万9800円ですから、今の貨幣価値にすると100万円は優に超えるのではないかなと

1960年発売のポータブルテレビ
1960年発売のポータブルテレビ

そう語るのは、館長の安部博良さん。

これらのテレビは、全て安部さんが修理したもの。ソニーの技術者だった安部さんは、現役時代、放送局で使用する機器の導入やメンテナンスなどを手掛け、世界各国を回った、まさに映像と音のプロ。

およそ1500点ある機器のうち470点以上を修復。実際に動く様子を楽しむことができるようにしている。

安部博良さん:
機械は動いてナンボの世界だと思います。単に展示しているだけだと、その価値は半減していると思います。特に子供たちに体験してもらいたいと思っています

資料館運営に強力な助っ人が現れる

電化製品だけではなく、かつて映画館で使われていた映写機で古い映画なども観ることができる口和郷土資料館。

2020年までは安部さん夫妻2人で運営してきた。しかし、今はそこにもう1人、強力な助っ人が加わった。それが、副館長の才田孝さん。

4年前に故郷の三次(みよし)市にUターンし、自作のラジオやアンプを持ち込んで安部館長と交流があったことから、職員にならないかと打診されたという。実は才田さんも日立グループで家電などのアフターサービスを行なっていた元エンジニア。海外での経験も長く、安部さんとの共通点が多いのも決め手となった。

安部博良さん:
才田さんはなんでもできる人なんです。特にデータベースを構築する技術、能力がすごいんです
 

安部館長の期待を受け、才田さんは2021年9月には学芸員の資格を取得。資料整理や展示の改善などに力を注ぐ。

副館長・才田孝さん:
収蔵資料の管理は素人だったので、少しでも系統的に整理や運営ができればと思ってチャレンジしました。収蔵品のうち、展示してあるのはごく一部で、まだ倉庫にたくさんあるので、きっちり整理して将来に継承できればと思っています

針が内側から外側に動く、貴重な大型レコード盤も発掘

資料館の収蔵品は市民や収集家から寄贈されたもの。その数は3万点以上にのぼる。
資料の整理を行う中で、新たな発見も…。

才田孝さん:
このレコードを見てください。ちょっと大きいですよね。普通のレコード、LPは直径が30センチなんですが、こちらは40センチ。これはアメリカで作られて1930年代から50年代にアメリカの放送局で使われていたもので、いわゆるペンタゴン、国防総省で作られた米軍の軍属向けの放送用のレコードなんです

珍しいのは、その歴史や大きさだけでない。

才田孝さん:
普通のレコードは針が外から中に行きますよね。これ内側に針を置くと外側に動くんです。これって非常に珍しい。日本全国探してもないんじゃないかと

助っ人が加わり、資料館の存続に明るい未来が

才田副館長が来てくれたおかげで仕事に余裕ができ、集中して修復ができるようになったという安部館長。何より大きいのは、資料館の存続に明るい未来が見えてきたことだという。

安部博良さん:
才田さんが来てくれたことで庄原市に対して安心感を与えたと思います。建物の修復にも5か年計画を策定してもらって順次進めていこうということになりました

二人の元エンジニアがタッグを組んで映像、音響機器だけでなく、地元に伝わる農具、民具の展示にも取り組み、郷土資料館の存続に力を注ぐ。

才田孝さん:
こちらには口和町で集められた民具や農具など資料がたくさんあります。

才田孝さん:
そしてこの20年くらいで収蔵され、まだ修復されていない映像音響機器がたくさんあります。そういったものを効率的に系統立てて後世に伝えられればいいなと思っています

この郷土資料館は、リタイアした人たちのスキルを活かすことが、地域活性化に結びつくという一石二鳥の効果を出している。

口和郷土資料館は月・木・土曜のみ開館。

(テレビ新広島)