高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定にむけて、文献調査が進む北海道寿都町。
処分場は誘致すべきなのか…寿都町の高校生がこの夏、「核の今と未来」に向き合った。
夏も強い風が吹く北海道の寿都町。夏休み中の高校に生徒が集まってきた。
寿都高校生:
福島のことを、いろいろ知れたらいいなと思います
特産のウニ漁が最盛期を迎えた8月。寿都高校の生徒は福島に向かう準備を進めていた。
寿都町の高校生は、何を思い、被災地を訪れるのか。
動き出す"核のごみ"…高校生が見た「現実」
寿都高校2年・沖田一心さん:
寿都町が、核のごみの処分場の調査を始めたのがきっかけです
沖田さんが住んでいるのは、隣の島牧村だが、寿都町での文献調査は自分たちの未来にも関わると感じている。
そして、1年生の三浦碧唯さん。福島県での体験を将来の町づくりに活かしたいと考えた。
寿都高校1年・三浦碧唯さん:
寿都町に協力できるようなことを体験したい
日本の原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物。
たまり続ける、いわゆる「核のごみ」の最終処分場選定調査に、2020年に寿都町が手を挙げた。現在、第一段階となる文献調査が行われていて、周辺市町村を巻き込み、賛否両論の声が渦巻いている。
今回の研修には、寿都町の高校生10人と福島県の高校生10人が参加。寿都町と福島県をお互いに訪問する形で行われた。
福島県を訪れた高校生の前に広がっていたのは、10年以上が過ぎた今も、むき出しの鉄骨が残る福島第一原発だ。廃炉に向けた作業が続いている。
東京電力の担当者:
4号機の燃料プールに、一番燃料が入っていたので、4号機から一番最初に工事を着手した
東日本大震災当時、5歳から6歳だった生徒たち。初めて見る原発事故の現場。
東京電力の担当者:
2号機もまだ、使用済み燃料プールから燃料の取り出しの方は行われておりません。なるべく作業員が被ばくしないように時間短縮に努めています
ときおり響く警告音のようなものが、高校生を緊張させる。
寿都高校1年・中山凌空さん:
第一原発のがれきがあって、10年以上経ってもあれだけ残っているとは。(原発事故は)経験していないけど、すごく大きかったんだなと思った。見るだけで心が痛くなった
原発を間近に見て、考えが揺らぐ。
寿都高校1年・中山凌空さん:
持ってきたりするのもダメなのかなと。いまいちわからない気持ちです
研修会を企画した福島のNPO法人の理事長西本由美子さんは、賛成か反対かの前に自分で見て、考えることが何より大切だと話す。
ハッピーロードネット・西本由美子理事長:
子どもたちと核のごみ。福島も寿都町も同じ話題を抱えている。抱えているだけで、なかなか言葉に出せない子どもたちがいる。自分の目で確かめてほしい。そのうえで自分たちが何をしなければならないか。全国に発信できたり、世界に発信できたら素敵ではないか
高校生たちは、かみしめる様に被災地を歩く。続いて向かったのは…
あふれる"廃棄物" 「これが地元だったら…」
双葉町役場・橋本靖治さん:
2045年まで保管するから「中間」です。その一方で、最終処分する地はまだ決まってません
除染で取り除かれた放射性廃棄物の保管施設を案内するのは、原発が立地する双葉町職員の橋本靖治さん。
4年前から被災地を案内してきた。東京ドーム100個分にもなる広大な中間貯蔵施設。
最終処分がどこで行われるのかは、まだ決まっていない。行き場のない廃棄物が核のごみと重なる。
そのあと訪れたのは、橋本さんの大切な場所だ。
双葉町役場・橋本靖治さん:
真正面に見える2階建ての建物。あれが僕が育った実家
実家は空き巣の被害に遭い、さらにイノシシなどに荒らされている。
双葉町役場・橋本靖治さん:
見ないという人がいたら全然オッケー。無理しないで
足の踏み場もない状態、1分も経たずに外に出る高校生も
参加した高校生:
やば、やば、やば。もう満足、行こう、行こう
避難指示は解除されても、帰還することは現実的ではない。
もう一つ、見てほしい場所があった。橋本さんの娘も通っていた小学校だ。
双葉町役場・橋本靖治さん:
この小学校は片づけられていて、きれいになっています
教室に残るランドセル。持ち主はいま19歳になっている。学校の時は、2011年の3月11日で止まっている。
参加した高校生:
リアルに初めて見て、悲しいというか、しんみりしましたね
参加した高校生:
見てみると悲惨な状況下で、これが自分の地元だったらやるせない、という思いがあります
核がもたらす"今と未来"…将来担う若者たちの「葛藤」
復興が進んだとされる被災地。そこから取り残された場所が確かにあった。
寿都高校1年・蝦名由芽子さん:
核のごみに対して怖い気持ちを持つ人がたくさんいると思うので、正しいことを伝えて知ってもらわなければと思いました
さらに、寿都町だけでは決められないと感じた高校生もいる。
寿都高校1年・蛯名翔太さん:
福島でも原発が2つの町で共同でやっていたので、寿都町も他の町や村に許可を得てというか、後志全体で意見が合致してからの方が、僕はいいのかなと思いました
町の未来を考えるとき避けて通れなくなった、核という存在。どう向き合っていくのか、考え続ける旅は始まったばかりだ。
(北海道文化放送)