猛暑が和らいできて、これから登山を楽しもうと思っている人もいるだろうが、皆さんは「フードロッカー」をご存知だろうか?

世界遺産に登録されている北海道・知床の案内などを行う知床羅臼ビジターセンターが、フードロッカーのマナー違反をTwitterに投稿して注目を集めた。

とある日の羅臼岳・羅臼平のフードロッカーにて。フードロッカーは指定のテント場でテント泊する方のために設置されており、就寝の際にヒグマを誘因する食糧と距離を置くことができる優れものです。就寝中でも重く頑丈な金属製のロッカーが大切な食べ物と命をヒグマから守ってくれるのです。

一緒に投稿された写真にはフードロッカーという金属製の箱と、その脇に置かれた赤いザックが写っているのだが、この写真の何がマナー違反かおわかりだろうか?

フードロッカー(出典:知床羅臼ビジターセンター)
フードロッカー(出典:知床羅臼ビジターセンター)
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フードロッカーとはテントを貼る場所とは少し離れたところに設置された食料保管庫のこと。
知床では、テントに食べ物や食べ物の匂いがする食器・ゴミなどを置くと、ヒグマが寄ってきてしまうため、休憩や就寝するとき食料はフードロッカーに入れることになっている。

フードロッカーはステンレス製でとても頑丈につくられており、開ける時は中に手を入れてレバーを押し上げるようになっているため、ヒグマには開けられない。
大切な食べ物と命を守ってくれる存在なのだ。

フードロッカーを開ける操作(出典:環境省)
フードロッカーを開ける操作(出典:環境省)

ところが、このフードロッカーにゴミを捨てたり、荷物置き場代わりにしてザックを入れたりするマナー違反が起きているという。

ザックを入れるのもマナー違反(出典:知床羅臼ビジターセンター)
ザックを入れるのもマナー違反(出典:知床羅臼ビジターセンター)

Twitterに投稿された写真の場所は羅臼平というところで、岩尾別登山口から約5.7km、羅臼岳山頂までは約1.2kmの地点だという。そこでTwitterでは「日帰り山行の登山者が身を軽くして羅臼岳山頂に行くための荷物置場ではありません。」と厳しく指摘している。

フードロッカーの脇にザックを置いた場合、もし中に食べ物が入っていてヒグマが食べたら、その周辺にヒグマが執着してしまうので、テント泊だけでなく日帰りの登山者にも危険が及ぶという。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

またキツネに見つかった場合はザックを切り裂いて食べ物を取ることから、食料や持ち物を失いってその後の自身の行動に影響が出るかもしれないとしている。

マナー違反は残念ながら毎年ある

この投稿には、ルール厳守を訴える声や、フードロッカーを初めて知ったなど、様々な意見が寄せられた。
筆者も初めてフードロッカーを見たのだが、初心者でも使えるよう説明は書いてあるのか?このようなマナー違反は増えているのか?
環境省ウトロ自然保護官事務所の担当者に聞いてみた。

――フードロッカーの使用法はロッカーに書いてある?

使用方法や注意書きは基本的に表示しております。これまで外部に貼っていましたが、風で飛ばされてしまいゴミになる可能性があるので、今後順次内部に表示させる予定です。


――フードロッカーのマナー違反はよくある?

「ザックを入れる」「ゴミを入れる」行為は、残念ながら毎年確認されています。
なお、フードロッカーのそばにザックを置く行為自体は問題ではありませんが、持ち主がいない状態で食べ物が入ったものを長時間放置する事が問題です。


――マナー違反を見つけたらどうする?

巡視中にマナー違反を確認した際は、持ち主を特定出来た場合は、注意後に正しい使い方をしてもらうよう促します。
持ち主が特定できなければ、状況の記録写真を撮り、知床遺産Cや羅臼VCなどのSNSやHPにて注意喚起をします。


――違反行為は増えている?

増減についての調査は行っていないため不明です。
ただ、令和2年度は羅臼平に設置されているフードコンテナにザックをデポして(預けて)羅臼岳に登頂する事例が多かった印象です。

こういったマナーを守ってほしい

――Twitterの写真でロッカーの中には何か入っていた?

発見者によると、フードロッカー内には少量の食料が入れてあったようです。ただし、それがザックの持ち主のものか、また別の方のものかは分かりません。


――Twitterの反響をどう思う?

共感し、リツイートで拡散してくださる方の多さに大変感謝しています。
知床の山をより多くの人に楽しんでいただくため、自分の身や他の登山者の身を守るためにも、ぜひ、こういったマナーを守ってほしいと思います。
一方で、私たち迎え入れる側も情報発信の仕方を工夫し、純粋に知床の登山を楽しんでもらえるよう勤めていきます。 


――ちなみに知床にヒグマは何頭いる?

最新の調査研究により、知床半島全域で、おおよそ400~500頭いると言われています。

(出典:知床羅臼ビジターセンター)
(出典:知床羅臼ビジターセンター)

担当者によると、フードロッカーはおそらく知床に初めて設置され、現在では羅臼平の1つをはじめ、三ッ峰に2つ、二ッ池に2つ、第一火口に2つあるという。またフードロッカーの重さは数十キロあるため、麓におろして修理するには1年がかりになるそうだ。命を守る貴重なフードロッカーを大切に使うため、マナーは守っていただきたい。