本物に見えるほど精巧な木彫りの工作がTwitterに投稿され、話題となっている。
「木工チャレンジの展示が今日から始まります。バターしみしみパンに続く娘の作品は『ちょっと焼きすぎちゃったアジ』」とのコメントと共にTwitterに投稿されたのが、その画像だ。

コメントにある夏休み木工チャレンジとは、毎年夏休みに開催されている小学6年生以下を対象とした木工コンテスト。参加申し込みをして木材パーツのキットを受け取り、自由な発想でオリジナルの作品を作って提出する。
この作品の作者は小学3年生の女の子で、木彫りのアジと大根おろしを「ちょっとやきすぎちゃったアジ」とのタイトルで応募した。アジは焼き具合だけでなく、尾ビレや背骨も見事に再現され、大根おろしもすりおろした感じがうまく表現されている。共に木製とは思えないほどのクオリティーで本物と間違えてしまいそうだ。コンテストでは見事優秀賞を獲得した。
実は、娘さんは小学2年生だった昨年もこのコンテストに参加している。その作品名が「バターしみしみパン」。

パンの生地や焦げ目、バターのしみた色合いなどをリアルに再現している素晴らしい完成度で、昨年も優秀賞をもらっていて2年連続となった。
Twitterに投稿したのは、お母さんの「たゆたゆ」(@yumeBee)さん。小学3年生が作ったとは思えない完成度の高い作品にTwitterでは「凄い才能だと思います。将来楽しみですね」「観察力が凄すぎです!」など称賛の声があり、注目されている。
干物のアジをペットのようにかわいがっていました
精巧に作られた木彫りのアジの開きだが、娘さんはどんな様子で作品を作っていたのか?また、アジを作ると聞いたときにどんなことを思ったのかも気になる。まずはお母さんにお話を伺った。
ーーアジの開きというチョイスをどう思った?
食パンは四角でしたが、今回は正直、リアルにはできないだろうなと思いました。
経験にもなり、別にそっくりに作るコンテストではないので、頑張って作ったものを出せば良いと思いました。娘に「できそう?」と聞いて「うん」と返ってきたので「じゃあ、頑張って作って!」と伝えました。

ーーどんな様子で作品を作っていた?
干物のアジをペットのようにかわいがっていました。思う通りにいかず、いじけたり怒ったりしていましたが、形がだんだんと見えてくると自然にスッと集中して、作業を進めていました。
ーー作品を作る娘さんをみてどう思った?
「仕事か!?」と思いました。毎日、机に向かう姿は使命感にも駆られているのですが、ワクワクしながら熱い情熱を持って取り組んでいていました。私も仕事を頑張ろうと思いました。

ーー作品をみたときどう思った?
毎日、だんだんと木材が減ってアジの形になっていくのが面白かったです。仕事から帰ってどう変わっているのか、見るのが毎日楽しみでした。私も娘のファンなので、仕上がったら「やばくない!?アジじゃん!」と写真をたくさん撮りました。

ーー娘さんはどんな性格?
3番目の子どもなので愛され上手で、ひょうきん者です。しかし、根がとっても真面目で曲がったことは大嫌いですが、自分には甘いという我が家のお姫様です。工作はほぼ毎日しています。
ーー周りの人の反応を教えて
「本物みたいー!」と言われたとニコニコしていました。去年の作品を見て楽しみにしていたという方も多く、「33日頑張った甲斐があったー」と言っていました。

なんと参考にするための本物のアジの干物をペットのようにかわいがっていたという娘さん。
なぜ数ある題材の中からアジを選んだのか?また、次回作の構想についても娘さんにもお話を聞いた。
33日間、1日2〜4時間かけて作りました
ーーなぜアジの開きを作ろうと思った?
焼芋とオムライスも候補にありましたが、お母さんの職場の人にリクエストされたので、アジにしました。
ーーこだわりと難しかった部分を教えて
こだわりは削った木の粉を使った大根おろしとしっぽは反り具合です。しっぽを薄くするのとそこに線を入れるのが、折れそうで難しかったです。
頭と体の繋がる部分はどちらも細い骨の部分なので、穴を開けたり、折れないように細くするのが大変でした。
ーー作品を作るのにどれくらい時間がかかった?
33日間、1日2〜4時間かけて作りました。

ーー反響についてどう思う?
こんなに話題になるとは思っていなかったので、とっても嬉しいです。
ーー次回作の構想を教えて
洋風も和風も作ったので次はイタリアンを作りたいです。私がサイゼリヤのメニューで好きな辛味チキンか小海老のカクテルサラダをつくりたいです。
ーー作品づくりを通じてアジに愛着が湧いた?
元から魚が好きでしたが、その中でもアジが一番好きになりました。

実は師匠がいた
ちなみに、この素敵な作品を作った娘さんには実は師匠がいる。以前編集部でも取材した“溶けかけの氷”を再現した木彫り作品を作った「キボリノコンノ」(@kibori_no_konno)さんだ。
(参考記事:“溶けかけの氷”を再現した木彫りがリアル…納豆や菓子までも?他の作品もすごかった)
キボリノコンノさんとの出会いは朝に放送されている情報番組。番組内でキボリノコンノさんの木彫り作品が紹介され、娘さんがとても興味を示したのだそう。その旨をお母さんがツイートすると、キボリノコンノさんから返信があり、それ以来、交流が始まったという。
個展を親子で訪れた際には、キボリノコンノさんに“バターしみしみパン”を見せたところ急遽、一緒に展示してもらえることもあった。

そして個展が終わり、キボリノコンノさんがバターしみしみパンを自宅に返送してくれた際には、細かく削るための工具のルーターと使い方が収録されたDVDが同封。娘さんは、今回の作品でキボリノコンノさんからもらったルーターを使ったとのことだ。

完成度の高さに思わず笑ってしまいました
では、師匠であるキボリノコンノさんは、今回の「ちょっとやきすぎちゃったアジ」をみてどんなことを思ったのか? 1年間の成長についてもキボリノコンノさんにもお話を伺った。
ーー作品をみたときの感想を教えて
想像を遥かに超える完成度の高さに思わず笑ってしまいました。アジの顔やゼイゴ、尾にいたるまで細かく立体的に彫刻されており、彫刻技術ももちろん素晴らしいです。さらにアジの特徴を正確に捉える観察力に驚かされました。
また着色は本当に美味しそう!と思ってしまうほど微妙な焼き色や焦げ目をリアルに再現しています。絵の具を片手、反対の手にティッシュを持って塗ってはティッシュで拭き取り少しずつ着色をしていったと聞いて、これは私も参考にしたいと思いました。
ーー前回のトーストからどんな成長があった?
前回のバターしみしみパンと比べると、彫刻刀やルーターを使いこなしてより立体的な表現ができるようになっていることに成長を感じました。
ーーどんな部分に素質があると思う?
技術力や表現力ももちろん素晴らしいですが、立体や色味を正確に捉える観察力が鋭く素質を感じています。また、自分が納得のいくまで何日も続けて集中できる点も素晴らしく、見習いたいくらいです。

夏休み木工チャレンジで見事2年連続での優秀賞獲得となったが、娘さんは小学6年生までコンテストに参加する気持ちがあるようだ。将来が楽しみだが、これからも飽くなき探究心で作品づくりを続けてほしい。