世界150カ国・13万kmを、自転車で旅した男性がいる。周藤卓也さん(39)は2022年、自らの旅や人生観をまとめた1冊の本を出版した。15歳で「終活」を始めた彼が、生きた証として遺したいものとは。

父の死がきっかけ 生きた証を遺すと決意

周藤卓也さん:
朝、雨降ってたけど良い天気です。今!

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アフリカ北西部の国、モロッコ。荒野の1本道で、ただひたすらペダルをこぎ続け、自転車の細い轍を残していく。周藤卓也さん、39歳だ。

周藤さんは2005年12月、自転車で世界一周に出発。10年かけて世界150カ国を訪問した。ペダルをこいだ距離は、約13万kmにのぼる。赤道3周分を超える長さだ。

世界一周を終えて6年、現在39歳の周藤さん。自転車での旅を思い立ったのは、幼い頃のある出来事がきっかけだったという。

周藤卓也さん:
父が交通事故で、3年くらい意識がなくて。私が小学6年生の頃に事故になって、亡くなったのが中学校3年生の5月。人生一度きりというのに気づいてしまったんですよね

その頃、哲学に関するファンタジー小説「ソフィーの世界」を何度も読み返すうちに「人生の終わり」について深く考えるようになった。そして15歳の時、この世界に自分が「生きた証」を残そうと心に誓ったのだ。

周藤卓也さん:
生きている限りは、何か残したいという欲求がありまして、それが人によっては仕事だったり、結婚だったり、家族だったりするんですけど。私は、取り敢えずは、自転車世界一周というのが、この人生の答え

23歳の時にスタートした、周藤さんの「終活」とも言える、自転車での世界一周。当然その道中は楽しいことばかりではなく、常に危険と隣り合わせだったという。

周藤卓也さん:
メキシコで、現地のナタを持った若者に襲われて。財布と、ウエストポーチに入れてたデジカメと、腕時計などを盗られました

ただ、それでも世界各国で出会う魅力的な人たちや、想像を遙かに超える大自然は、旅を続ける大きな原動力になったと話す。

周藤卓也さん:
見たことない景色に心を奪われたり、言葉が通じた時とか、やっぱり旅してて良かったなと思いました

「根暗で人見知り、運動音痴。それでも…」エネルギーを分け与える側に

4回の一時帰国をはさみ、足かけ10年にも及んだ世界一周の旅。旅を終えると今度は、5年あまりをかけて、自らの人生観や旅での体験を文章にまとめ、2022年6月、一冊の本を出版した。

タイトルは「いつか死ぬから旅に出た」。8月7日には、福岡市で出版を記念したイベントを開催した。

周藤卓也さん:
ネクラ(根が暗い)で、人見知り、しかも運動音痴。そんな私が世界一周の旅へ。ずっと旅してたんですけど、やっぱり旅は、最高でした

溢れ出す旅への思い。周藤さんの言葉は、話を聞いた人たちの心にもエネルギーを分け与えたようだ。

出版イベントの参加者:
私も、いま78歳なんですけど、いつ死ぬかといったら身近なことだから、何かに挑戦したいと思って

出版イベントの参加者:
タイミングと直感ってすごい大事だと思った

ーー周藤さんの話を聞いて背中を押されるところは?
出版イベントの参加者:

ありましたし、こういったイベントがあるのは、すごくありがたい

2つの目標達成 次は…旅の経験いかしゲストハウス経営

自転車での世界一周、そして本の出版という2つの目標を、30代までに達成した周藤さん。
旅を優先してきたこれまでの人生から大きくギアチェンジし、40代で実現したい次の夢があるという。それは…。

周藤卓也さん:
もう、そんな遊んでいる年齢ではないので、ゲストハウスを作って旅人をもてなしたいと思います

かつて自分が世界を旅した際、しっかり体を休め、様々な情報を交換しあったゲストハウスを、日本国内で経営すること。

周藤卓也さん:
長く旅しているといろんなトラブルとか出てくるんで、そういう時に旅の疲れをほぐして、また新たな気持ちで旅立てるような宿を作りたいと思っています

世界150カ国を旅し、13万kmを走破した周藤卓也さん。そのかけがいのない経験を糧に、ゲストハウスの経営という、地図のない新たな道を走り出している。

(テレビ西日本)

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