9月特集は「常識が通用しない…いま備える防災」。

日本は線状降水帯などで、短時間で一気に激しい雨が降ることも珍しくはなくなったが、マンホールから水などが溢れ出ている光景を見たことはないだろうか。

ひどい場合だと、マンホールのふたが内部からの圧力の衝撃で飛んだり、水が水柱のように噴き出たりもする。これらは「エアピストン」という現象によるものだという。この時、地下では何が起きているのか。発生の条件や注意点はあるのだろうか。

空気圧や水圧の逃げ場がなくなり“パンパンのペットボトル”になる

下水道に関する調査研究を行う、公益社団法人・日本下水道協会の担当者に聞いた。


――大雨の時に「エアピストン」が起きるのはなぜ?

下水道は都市に降った雨を排水する役割がありますが、処理能力を大きく超えた雨が降るとそれがあふれてしまい、マンホールに水圧や空気圧がかかることがあります。これがエアピストンで、私たちは「エアーハンマー」「ウォーターハンマー」と呼んでいます。

発生の要因には(1)水圧の上昇(2)空気圧の上昇(3)空気塊の急浮上という3つのパターンがあり、マンホールのふたの耐圧力よりも水圧や空気圧が勝ると、ふたが浮上・飛散することも考えられます。


――普段の雨では起きないのに、大雨ではなぜ起きるの?

急激に雨が降ると水位が上昇し、下からの水圧がかかります。そのため、一部がくぼんでいたりするところは受ける圧力が強くなる。これが(1)です。また、急激な雨が下水道に流れこんだとき、水位の急上昇の際に空気が先行して圧縮されるのが(2)で、空気を一緒に連れてきて、それが泡のように集まる現象が(3)です。

こうした圧力が衝撃になります。炭酸飲料のペットボトルを思い浮かべてください。普通の雨はペットボトルのふたをゆっくり開けて、空気が逃げている状態。急激な雨はペットボトルを振って、ふたを一気に開けた状態です。中身もふたも「バン」と飛びますよね。

パンパンのペットボトルのような状態に(画像はイメージ)
パンパンのペットボトルのような状態に(画像はイメージ)
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――マンホールのふたの素材、大きさ、重さは?

日本下水道協会の規格になりますが、素材はダクタイル鋳鉄(FCD)を採用しています。これは鉄の強度を高めて割れにくくした素材です。路上でよく見かける一般的なふたは大きさが直径60cmで、重さは約40kg。大きいものだと直径90cmで重さは100kgにもなります。それが飛ぶような、圧力がかかるのです。

圧力のかかり方には段階がある…注意すべき状態は?

――マンホールのふたはいきなり飛んでしまうの?

いきなり外れるわけではありません。マンホールはふたと周囲の枠がハマる構造で、“食い込む力”で通常時は外れないようになっています。ふたと枠の接合部は錠などでロックされ、少しの水圧や空気であれば、ふたが浮上して圧力を逃がすようになっています。

少しの圧力はふたが浮上して逃がす(提供:日本下水道協会)
少しの圧力はふたが浮上して逃がす(提供:日本下水道協会)

ふたの状態を三段階で表現すると、マンホールの内側から圧力がかかってもふたの食い込み力で耐えている状態が第一段階、圧力がかかって浮上したふたの隙間から圧力が逃げているのが第二段階。それよりも圧力が強いと、片方の錠が外れてふたが開くようになっています。これが第三段階。

今はふたが開いてもマンホール内に人が落ちないように、転落防止装置が施されているものもあります。これらの機能が備わっていないふたの場合、いきなり圧力がかかるとふたが飛んだり、枠ごと外れてしまうこともあります。

マンホールのふたと枠の断面図(提供:日本下水道協会)
マンホールのふたと枠の断面図(提供:日本下水道協会)

――エアピストンが起きやすい環境はある?

特別な条件はなく、どこでも起きる可能性があります。ただ、斜面と平らな場所の境目は雨水や空気が急激に集まりやすいところでもあります。排水には気を配っているとは思いますが、大雨の時は注意が必要かもしれません。


――注意すべき、マンホールの状態は?

マンホールのふたには、圧力を逃がすための穴が開いているものもあります。そのような穴から水が噴き出しているような状況が見られたら、既に水圧がかかっている状態なので、注意するなどの参考にしてください。また、表面が摩耗しているふたは、古くから設置されているものが多く、劣化している可能性もあります。自治体に報告すると対応してもらえることもあるので、危険だと思ったら報告をしてもいいかもしれません。

ふたの穴から水が出ているなら、圧力がかかっている状態(提供:日本下水道協会)
ふたの穴から水が出ているなら、圧力がかかっている状態(提供:日本下水道協会)

水流に飲み込まれることも…大雨の時は近づかないで

――マンホールの深さはどれくらい?大雨の時に注意してほしいことは?

深さはそれぞれの場所で異なるので、一概には言えません。深さがある場所のマンホールは下までのルートが階段状だったり、転落防止装置があるところもあります。ただ、大雨の時には決して近づかないでください。マンホールは水を吸い込んでいるので、水流で飲み込まれてしまう危険性もあります。ふたを開けるようなこともやめてください。

大雨のマンホールには近づかないで(画像はイメージ)
大雨のマンホールには近づかないで(画像はイメージ)

――マンホールから出ている水は雨水?下水?

これは地域によります。下水道には合流式(雨水と汚水を同じ管で集める)と分流式(雨水と汚水を別々の管で集める)があり、自治体で採用している方式は異なります。合流式だと汚水も含まれますが、汚水がそのまま噴き出すことはないと思います。


――下水道関連でこのほか注意してほしいことは?

下水道は各家庭につながっているため、トイレやお風呂の水を流すことでも、下水道に負荷がかかって水圧が強くなることも考えられます。普段は問題ないですが、大雨の時は一度に大量に流しすぎないように意識をしてもいいかもしれません。後は自分が逃げるときのルートを確認しておくこと。ハザードマップを見るなどして、日頃から災害に備えることが大切だと思います。



なお、どれくらいの降水量から危険なのかも聞いたところ、「マンホールの深さに違いがあるので数字としては示せませんが、“短時間に降る強い雨”には注意が必要」とのことだ。

下水道の大きな役割の一つである「雨水の排除」を念頭に、9月10日ごろに台風が多いことから、9月10日は「下水道の日」と定められている。普段の生活では見落としがちな下水道だが、雨水の排除にも貢献しているので、身近なマンホールや下水道がどうなっているか気にしてみてもいいかもしれない。

記事 4714 プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。