「拙速だ!」と決めつけるのが拙速だ

外国人の労働を拡大する入管法改正案の審議が行われているが、「この法案は拙速だ」という批判が、野党だけでなく与党から出るのにうんざりしている。
これまで移民を認めなかった日本が、少子高齢化による労働力不足を理由に、外国人の労働者をすでに受け入れている、という実態がまずある。その実態に合わせた法整備をするのだから、ある程度の拙速はやむを得ない。
初めてのことだから、最初は大枠だけ決めておき、細かい部分はやりながら試行錯誤で変えていくしかないではないか。
それを拙速だ、生煮えだ、と決めつけるのはそれこそ拙速だ。
などとイラついていたら、朝日新聞に「拙速」という見出しが載っていたので(11/28朝刊)、「また入管法が拙速かよ!」と突っ込みながら読むと、入管法ではなく漁業法の改正が拙速、という記事だった。
漁業に新規参入しやすくする規制緩和の法律で、そう言えば働き方改革法案も、拙速と言われていた。どうも急激な規制緩和は評判悪い。いや、憲法改正についても、「拙速」は使われるから、変化そのものが嫌なのかも。
「巧遅は拙速に如かず」

ところで拙速の反対語は何だろうと調べてみたら、「巧遅」(こうち)という聞きなれない言葉だった。「遅いが巧い」ということ。どうも日本人は拙速より巧遅の方が好きみたいだ。
しかしこんな諺も見つかった。
「巧遅は拙速に如かず」。
「上手だが遅いよりも、下手だが早い方がいい」という意味で、孫子の言葉。タイミング、スピードが大事な時もある、ということだ。
外国人労働者の拡大にしても、漁業の新規参入にしても、今のシステムを変えるのは慎重にやる必要がある。
ただ既得権益を守って、改革のスピードがあまりにも遅いと、現実について行けず、困る人がたくさん出てくる。
日本は変化についていけない国か

日本は官僚によって規制がキレイに敷かれた、安全な国だ。ただ安全を求めるあまり、変化についていけてないのではないか。
国会で野党の国民民主党は、入管法に付帯決議をつけることで与党と調整しているという。これは頭から反対することをせず、採決にも応じるという意味で、労働現場の人不足を知っていれば、当然の態度だ。
野党の皆さん、拙速拙速と「何とかの一つ覚え」のように繰り返し、すべての議論をストップさせるの、もうやめませんか。

立憲民主の辻元さん、憲法審査会が与野党の合意なしに開かれたからといって、「これで憲法議論は100年遅れる」って何ですか?あなた、あと100年憲法審査会に出ないんですか。その時ぼくらみんな死んでます。
それより、自民党も、日本にとって必要だと思ったら、たとえ多くの批判を受けても、毅然としてやるべきことはやってください。
(執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫)