世界中から今、注目を集める藍染の作り手「BUAISOU」。
今回、世界的ラグジュアリーブランド、JIMMY CHOO(ジミーチュウ)とのコラボレーションに密着し、彼らが「藍色」にかける、想いに迫った。
世界が注目! 藍染めの作り手「BUAISOU」 すべて一から”藍色”を作る
世界的に注目を集める藍染めの作り手「BUAISOU」の工房は、徳島県上板町にある。
「BUAISOU」代表 楮覚郎さん:
伝統にこだわっちゃうと、たぶん落ちていく。そこはちょっと好きにやらせてくれって、思ってます

「BUAISOU」の1日は、みんなでコーヒーを飲むことから始まる。
代表の楮覚郎さん。「BUAISOU」を立ち上げて、7年になる。
「藍色」に出会ったのは、美術大学に通っていた頃だった。

3月には、ビニールハウスの中で、種まき作業が始まる。
「BUAISOU」結城さん:
種まきは3月の大安の日にやるって毎年決めてて。まぁ縁起を担ぐというか、そんな感じです

伝統的に、藍染の世界では「染め」と「畑」は分業制だが、BUAISOUは違う。
「BUAISOU」代表 楮さん:
すくも(染料)を買って、液を仕込んで染めるという染師さんの仕事。すくも(染料)を作る藍師さんの仕事。っていうのが、(BUAISOUは)一緒くたになってる。全部出来ますよ、というのがぼくらのコンセプトなんで
世界的ラグジュアリーブランド「JIMMY CHOO」とコラボレーション!
種をまき、育て、自分たちの藍色をつくる。
そのアプローチが注目され、「NIKE」、「Artek」、「Blue Bottle Coffee」など数々のブランドとコラボレーションを重ねてきた。
そして2022年、新たなオファーが。
王室や女優にも愛用者が多く、ハイヒールが有名な、世界的ラグジュアリーブランド、「JIMMY CHOO(ジミーチュウ)」からの依頼だ。
「BUAISOU」代表 楮さん:
この素材で、ハイヒールとバッグを作る予定なんですけど。たくさんの生地を3色に染め分けて。それで、生地のまま送るという仕事

「ピッピッ」とタイマーをセットし、布を入れていく。
染め液に浸けられた生地が、空気に触れ、水で洗われると色が生まれる。自然が生み出す、特別な「藍色」だ。

布が乾いた後は、チェック作業だ。
1つ1つの生地を丁寧に拡げ入念に見ていく。しばらくすると楮さんの表情が曇った。
「BUAISOU」代表 楮さん:
ムラもひどいですね
これ1回キープで
これはアウトで

天然の藍、そして手作業で染めることにこだわるからこそ起きる、微妙なズレ。
「BUAISOU」代表 楮さん:
ムラですね。パーッと見て、見えます?ここ
記者:
すごい繊細ですね…
「BUAISOU」代表 楮さん:
いや全然!全然、繊細じゃないですよ!もっと微妙なところでの、アレなはずなんですけど

この後、イタリアにあるJIMMY CHOO(ジミーチュウ)の工場に生地を送るまで、染め直しの作業が続いた。

5月に入り、工房にひとり見慣れない青年がひとり…必死でメモを取っている。
早稲田大学からインターンに来ている学生・清水雄大さんだ。
清水さんも1日の始まり、「BUAISOU」のルーティーンとしてコーヒーを飲む。
ーー「BUAISOU」のどこがいい?
早稲田大学からのインターン生 清水雄大さん:
手が青く染まってるとか、そういうところを見てかっこいいなって。染めたいです、最終的には。でも、まずは修行というか

そして、畑の季節が始まった。
工房のみんなで畑を耕し、種まきして育った株を畑に植える。畑と染め。
どちらも「BUAISOU」にとって、なくてはならないものだ。

有名になっても…変わらない”大切なモノ” 「染めるという行為自体は変わらない」
「BUAISOU」を立ち上げたばかりの2015年頃に作ったトートバッグの補修と、染め直しの依頼が来た。ミシンを使ってトートバッグの補修作業をし、染めの作業だ。

世界的なブランドと仕事をするようになった今も、大切にしていることは変わらない。
「BUAISOU」代表 楮さん:
僕はあんまいろいろ…語弊が出るっすね。ブランドだから「あわわわ」ってならないというか。何でしょうね…田舎もんなんでしょうね。染めるという行為自体は何も変わらないことなので

補修し染め直したバッグを、子供たちが受け取りに工房にやって来た。
「BUAISOU」代表 楮さん:
どうぞ。使ってください。色落ちてきたらまた持ってきてください
子どもたちが口々にお礼を言う。楮さんも嬉しそうに答える。
「BUAISOU」代表 楮さん:
こんなに大事に使っていただいて

子どもたち:
学校行くときとかに、荷物を入れたりするのに使いたい。お弁当とか入れたい
「BUAISOU」代表 楮さん:
素晴らしいコメント (笑)
子どもたち:
青が好きやけん、またいろんなものを持ってきてやってほしい

楮さんが、「種まき」から「染める」という全ての作業を一から自分たちでやっていることについての”思い”を話してくれた。
「BUAISOU」代表 楮さん:
お客さんに渡したときに、「自分たちで作った色ですよ」って言うじゃないですか。自分たちで染めたものです。だったら染料買って、それで染めてというのでも言えるけど、自分たちで(色を)作りましたってなったらイチからやってないと言えない。どんなにつらくても、きつくても、汗水たらして作りました、みたいなのがちゃんとウソなく言える環境を作れているのが、すごくうれしい

世界的ブランドとの“コラボ”商品が店頭に 「BUAISOU」の最終目標は?
7月、藍の葉を収穫する。
刈り取りをした後は、乾燥させてから袋に詰め、寝かせる。

工房にみんなが待ちかねていた「荷物」が届いた。楮さんが声を上げる。
「BUAISOU」代表 楮さん:
あ!これじゃ!ちょっと(笑)演技みたいになっちゃう(笑)届いたよー!届きましたよー!
JIMMY CHOO(ジミーチュウ)から、完成した商品が届いた。
みんなが集まって、口々に喜び、声を上げる。
「BUAISOU」工房の皆さん:
すげぇ。「BUAISOU」って書いとるんや。袋ほしいね

楮さんが自分たちが染めた布で作られた「藍色」のヒールを取り出した。
「BUAISOU」工房の皆さん:
すごい。これはすごい。
これは素敵だ。
これはすごいっすね

「BUAISOU」が作った藍色をまとった商品たち。
7月20日、「JIMMY CHOO(ジミーチュウ)」の店頭に並んだ。

ーー最終目標ってありますか?
「BUAISOU」代表 楮さん:
ないっすよね。ずっと来年用の種取ってって植えて、来年用の種取ってって植えて。ほんまに(目標が)あんまないんすよ。作りたいものを作ってる。それで生きているってのがいいんじゃないですかね

畑に出て、工房で染める。
「BUAISOU」のみんなで、きょうも”藍色”を、作る。
(カンテレ「報道ランナー」2022年8月5日放送)