ある1人の「女流棋士」が、これまで男性しかいなかった「棋士」になろうと、大きな戦いに挑んでいる。
実現すれば、史上初の快挙だ。

8月18日、真っ白なスーツに身を包んで関西将棋会館に現れた里見香奈女流五冠(30)。
水を一口飲み、入念にハンドクリームを塗りこんで迎えた午前10時。
女性初の「棋士」を目指す戦い、棋士編入試験の第1局が始まった。

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里見女流五冠が、地元・島根で将棋を始めたのは6歳の時。
すぐに頭角を現し、中学1年で「女流棋士(プロ)」になった。

「自分の性格とは真逆」と語る、切れ味の鋭い攻めの指し手から、ついた異名は“出雲のイナズマ”。
女流棋士の公式戦では、8大タイトルのうち5つを獲得するほどの強さを誇るが…

それでも届かなかったのが、「棋士」への合格。
将棋の「プロ」には、男女を問わない「棋士」と女性限定の「女流棋士」という2つの資格がある。

里見女流五冠も、「奨励会」と呼ばれる育成機関に入り、「棋士」になれる四段を目指した。
しかし、女性で初めて三段まで進んだものの、年齢制限の壁に阻まれて、あと一歩及ばなかった。
その後、女流棋士として腕を磨き、男性の「棋士」を相手に直近10勝以上したことで、「棋士」になるための編入試験の切符をつかんだのだ。

里見香奈女流五冠:
これだけ多くの方に注目していただけるのは大変うれしいと思うと同時に、こういうことが珍しくないような社会になればいいなと思う

7月、プロ棋士への意気込みを語る場でそう口にしていた里見女流五冠。
迎えた大一番の日、会場となる関西将棋会館には、夏休み中ということもあり、大勢の子供たちがいた。

小学5年生:
夏休み中は毎日来てます。相手を詰ませられるスリル満点のところが面白い

中には、小学2年生から将棋を始めたという女の子の姿もあった。

(Q:目標にしている人は?)
12歳の女の子:

女流棋士を目指してるので、里見香奈さんです。わたしは鋭い手とか指せないので、そこをまねしてみたいと思います

里見女流五冠は、18日を含めて新人「棋士」5人と対局し、3勝すれば史上初の女性の「棋士」となる。
第1局の対戦相手について、女流棋士だったフジテレビの竹俣紅アナウンサーは…

元女流棋士 竹俣紅アナウンサー:
今回の相手の徳田四段は勝率が9割以上でかなりの実力者なので、ここは正直、初戦にして一番の厳しい戦いといいますか。ここを乗り越えられたら、ものすごく自信が付きますし、これに負けてもあと4局気持ちをつないで、きちんと臨んでいけば大丈夫と思っています

里見女流五冠が挑む「棋士」。
これまで女性がいなかったが、そもそもの競技人口に男女差がある。
7月に行われた中学生以下の将棋大会では、男子324人に対して女子37人と、10倍近い開きがあった。

元女流棋士の竹俣アナウンサーは、「小中学校までは男女平等に戦えるが、それ以降は男性が強くなってくる」と話す。
しかし、それがなぜなのかは分からないそうだ。

これまで男性で占められていた「棋士」の道。
棋士編入試験第1局は、18日夕方に決着がつき、残念ながら里見女流五冠の負けとなった。
残る4局で3勝できるかどうか。
5番勝負の第2局が、9月22日に東京の将棋会館で行われる予定だ。

里見女流五冠の戦いに注目したい。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月18日放送)