安倍晋三元首相が7月8日に凶弾に倒れてから1カ月余りが過ぎた。

「終戦の日」前日の14日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、安倍元首相が強く訴えた「戦後レジームからの脱却」とは何を企図するものだったのかについて与野党論客らが議論を展開した。

自民党の新藤義孝政調会長代理は、「戦後レジームからの脱却」とは、占領下の敗戦国の枠組みに閉じ込められた日本とその諸制度からの脱却との認識を示した。国防規定や緊急事態条項、教育の理念など本来独立国として持っている当たり前のものが欠けているとして、国民の手による憲法改正を実現することの重要性を強調。「新しい国の理想的なあり方をどうつくるかの議論に入っていかなければならない」と主張した。

ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、現憲法について「占領統制をうまくいかせるためのアメリカの身勝手な憲法」と切り捨てた。「憲法をはじめこの国の大きな枠組みを変えよう、教育、家族のあり方、社会のあり方、おカネの使い方、経済のあり方を含め、戦後体制から脱却して本来の日本国を取り戻そう、というのが安倍氏の唱えた『戦後レジームからの脱却』の本心だった」と指摘した。

立憲民主党の渡辺周衆院議員(元防衛副大臣)は、「9条の議論はなかなかハードルが高い」としながらも、党として「論憲」の立場で憲法改正論議には積極的に参加していく意向を表明。「『知る権利』と『知られない権利』を憲法の中に明記していくべきだ」との考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

安倍晋三首相(2007年1月26日 施政方針演説):
「憲法を頂点とした(中略)基本的枠組みの多くが、21世紀の時代の大きな変化について行けなくなっていることはもはや明らかだ。(中略)今こそこれらの戦後レジームを原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出をすべき時が来ている」

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
安倍元首相は第一次政権時に「戦後レジームからの脱却」を主張していた。欧米などから修正主義ではないかとの批判もあり、第二次政権ではあまりこの言葉を使わなかった。安倍政権では明らかに日本の安全保障政策のステージを変えた。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長):
安倍氏は憲法をはじめこの国の大きな枠組みを変えようとした。例えば、教育、家族のあり方、社会のあり方、お金の使い方、経済のあり方も含めて、戦後体制から脱却し本来の日本国を取り戻そうというのが安倍氏の唱えた「戦後レジームからの脱却」の本心だった。GHQ(連合国最高司令官総司令部)は本当に変えてはならないところまで変えてしまった。それを私たち日本人は大人しく受け入れている。(歴史学者の)秦郁彦先生によれば、憲法草案を書いたアメリカ人たちが「この憲法はどうせ数年の命なんだから、ちょっとまずくても日本人が変えるだろう」と述べていたという。西修先生も戦後40年の時に訪米し、日本国憲法の草案を書いた十何人かを訪ね、皆が「まだあの憲法を使っているの」と驚いたという。これは占領統制をうまくいかせるためのアメリカの身勝手な憲法だった。安倍氏は、それを日本人が生真面目に受け入れて、あたかも良いことであるかのようになっているのを変えようとした。本当の意味で良き日本を取り戻そうということだ。これは決して軍国主義に走るということではない。日本人は本来非常に穏やかで、しかし、勇気ある雄々しい文明、文化を築いてきた。そのような日本を取り戻すために憲法改正が一番の肝だね、ということが「戦後レジームからの脱却」の真意だ。

新藤義孝氏(自民党政調会長代理、元総務相):
戦後レジーム、戦後体制からの脱却というのは、占領下で決められた日本の枠組みを脱し、自主独立を果たしたのちに国の枠組みの完成を果たすこと。「戦後レジームからの転換」だ。
日本には、本来独立国として当たり前に持っているべき国防の規定がない。平時の一般法しかない。有事、緊急事態という概念を拒否され、憲法からあえて外されている。教育は理念が全くなく、義務教育をやるという形式しか決められていない。本来ならば主権国家として自分たちの思いを入れられるべきところがいろいろあるはずなのに、それが欠けている。まして、国の根本である憲法は、国民の手で、国民主権によって変えられるとされているのに、国民投票法はなかった。主権を発動しようがない。そういうところを私たちは完成させなければならない。戦後すでに77年たち、新しい国にしていかなければいけないのに、基本が崩れたままでは良いものにならない。まずは一回整理をする。少子高齢化、人口減少、地方の過疎、都市の過密、価値観が変わり、インターネットでどんどん情報が入ってくる。この国の理想的なあり方をどう作るかという議論に入っていかなければいけない。そのためにまず国防規定、緊急事態条項、教育の概念を位置づけ、国と地方の関係の概念をきちんと決めようということをわれわれは提案している。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
GHQをある意味監督する位置づけの極東委員会で、日本国憲法施行後2年以内に見直すという話があったが、当時の吉田茂首相は国民投票をやらずにこの憲法のままで行こうと言って今に至る。いろんな考え方がある。憲法改正が絶対的に正しいという意見だけではない。僕自身は憲法改正すべきだと思っているが。今、国会の議席数は憲法改正賛成派が3分の2を超えている。政治の力で改憲案を作り、国民の判断に委ねるということを政治がやらなければいけない。まずは国防。自分の国は自分で守る。集団的自衛権、集団安全保障がどれだけ必要なのかということは、今の国際情勢でよくわかったわけで、これをしっかり入れるとか。教育基本法は安倍氏が変えたが、教育に一切政治が入れない。さまざまな考え方はあるが、教育の方向性を決めるのは政治だ。手段の部分は教育委員会がやるにしてもだ。ここが完全に分離されてしまっている。国防・安全保障の根幹の精神性、国のために命を落とした方に対する尊崇の念の表し方もある。靖国問題を解決しようと思っても信教の自由がある。GHQが国のために命を落とした人を祭るあり方を政治と分離させた。政教分離で政治がそこに全然入れない。いろんな面で憲法改正が必要だ。ぜひ政治の力で、与野党で、立憲民主党にも考え方はあると思うが、ぜひ議論して憲法改正に前向きな姿勢を持ってもらいたい。
 

渡辺周氏(立憲民主党衆院議員、元防衛副大臣):
われわれは「論憲」の立場だ。(安倍政権で改正した教育基本法には)「わが国と郷土愛する」とあるが、愛される国とは信頼される国の土台がなければいけない。9条の議論はなかなかハードルが高い。例えば、国民の「知る権利」と「知られない権利」。知る権利では、官房機密費の使途を原則公開する。公が国家機密や外交機密に関する以外のものは原則公開する。反面、IT時代に個人情報がダダ漏れする中で健康情報やさまざまな履歴については知られないようにする。知られない権利。こういうのは新しい問題だ。時代に沿って、憲法にどう明記していくか。当然やるべきだ。そのためにも国会を開いて積極的な議論ができる環境を早くつくってほしい。

橋下氏:
憲法審査会には引き続き立憲民主党も入って活発な議論をやってもらえるのか。

渡辺氏:
審査会にはわれわれも参加している。