米国や豪州ではとっくにやってるのに

米国議会上院は7/20に「世界の繁栄と安全に消えることのない足跡を残した」と、故安倍晋三元首相の功績を讃える決議を採択した。またオーストラリアの連邦議会では7/26にアルバニージー首相が安倍氏への追悼演説を行った。しかし日本では今日(8/3)から開かれている臨時国会で行われるはずだった追悼演説が9月以降に延期された。なぜ今できないのか。

第209臨時国会が召集され、3日間の会期が始まった(3日午前)
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自民党の高木毅国対委員長によると延期の理由は「(国会が)静謐な状態でない」からだという。史上最長の8年8カ月間首相をやった人が選挙演説中に撃たれて亡くなったというのに、この国の議会は大騒ぎばかりして静かに追悼演説をすることができないのか。これは与党も野党も悪い。

安倍元首相の追悼演説は、臨時国会中の5日に自民党の甘利前幹事長が行う方向だったが…

まず与党。当初は8/5に追悼演説をセットし、甘利明前幹事長の名が挙がった。遺族の意向とされる。だが甘利氏がブログに安倍派の後継者について「誰一人、現状では全体を仕切るだけの力もカリスマ性もない」と書き、これに対し安倍派の例会で衛藤征四郎元衆院副議長が「極めて失礼だ」と応酬。人が亡くなっているのに仲間内でケンカしていてはダメだ。

「立憲議員が追悼演説」はアリなのか?

野党も同じようにダメだった。立憲などは安倍氏の国葬に関して国会で審議しなければ追悼演説には応じられないと反発、さらに甘利氏について立憲の西村智奈美幹事長は「政治とカネをめぐる問題のある甘利氏」「通常で言えば立憲から演説者が出たのではないか」と批判した。

甘利氏での調整を批判した立憲・西村幹事長(7月26日)

西村氏は立憲の議員が追悼「できる」と本当に思っているのだろうか。自民の平将明衆院議員はTwitterに「アベ政治を許さないって言ってた人たちに追悼演説頼まないよね。普通」と投稿した。平氏は安倍政権時代、石破派に籍を置いていたので別に安倍シンパではないが、おそらくこれがほとんどの自民議員の本音だろう。

自民としては仲間内でもめているし、強行しても野党が出てこないかもしれないと心配して8/5の演説を取り下げた。臨時国会後に国葬に関しての閉会中審査も行い、追悼演説は秋に先送りとなった。では誰がやるのか。

「死による論敵の退出を満腔の敬意で」

多くの人が名前を挙げるのが自民党なら菅義偉前首相、立憲なら野田佳彦元首相の2人だ。僕は個人的には菅さんにやってもらいたいと思っている。

多くの人が名前を挙げるのは、自民・菅前首相と立憲・野田元首相

民主党の鳩山政権で官房副長官を務めた松井孝治慶大教授はFacebookに投稿し、「立憲民主党が乗り越えなければならないのは、ご遺族のみならず国民から、かの党に向けられた、追悼演説でもまた口汚い批判を繰り返すのではないかという疑念」だと述べて立憲を厳しく批判した。

それでも松井氏は「死による論敵の退出について我が国の議会は満腔の敬意を以ってこれを送る美風を継続していただきたい」とも述べ野党による演説を求めている。

松井氏が正しいのかもしれない。誰も安倍氏の追悼演説を立憲にやってもらいたくない。それでも立憲がやるのが民主主義だ。与野党双方が死者に満腔の敬意を以って、追悼演説に臨んでもらいたい。

【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】

記事 298 平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。2020年4月から立命館大学客員教授。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。