おなじみの駅弁「峠の釜めし」。製造・販売している「荻野屋」は、2021年に長野市の店舗を閉じ、新たにキッチンカーでの販売を始めた。駅弁から、日常で親しまれる弁当を目指している。
旧信越線横川駅の名物駅弁「峠の釜めし」
小さな陶器の「釜」。ふたを開けると、鶏肉や栗、ウズラの卵など、おかずがぎっしり。ごはんにも味がしみ込んで…甘みと酸味が味わえるアンズはアクセント。おなじみの「峠の釜めし」だ。

明治18年創業、群馬・安中市に本社を置く「荻野屋」が昭和33年に販売を始めた駅弁だ。
客:
おいしいですね、やはり
こちらは諏訪店。高速道のインターチェンジに近く、多くの観光客が訪れる。峠の釜めしは県外の人にも有名だ。

石川から:
(具が)たくさん入っていて、いろんなもの入ってて、とてもおいしいです
愛知から:
三十何年ぶり?やっぱり、おいしいですよね。茶飯がすごくおいしくて
お気に入りの「アンズ」は最後に…
愛知から:
最後にアンズいただきます。なんかちょっと甘酸っぱい味ね…
大型バスの団体客も…

学校行事で訪れた高校生(東京から):
うすいしょうゆの味がマイルドで、おいしかったっす
自由時間に「もう1個」購入して食べる生徒も…
2個食べた生徒:
タケノコとごはんを一緒に食べると、食感がいろいろあっておいしいです。「鶏五目」の上の上をいった感じのおいしさ

「峠の釜めし」は、旧信越線横川駅で販売が始まった。特急あさまが停車すると、乗客がホームの売り子に駆け寄る光景は、横川駅の名物ともなっていた。
信越線の廃線後はドライブイン形式に…そして今は
新幹線開業に伴って信越線が廃線となった後は、高速道のインターチェンジの近くにドライブイン形式の店舗を次々にオープン。2000年代には、全国で40店舗ほどまで増やした。
1997年に長野インター近くにオープンした長野店もその一つだったが、2010年ごろから観光の多様化で売り上げは伸び悩み、さらに新型コロナが追い打ちとなって、2021年8月に閉店した。全国でも20店舗ほどまで減り、現在は県内のドライブイン形式の店は諏訪のみとなっている。

長野店の閉店から1年。今、長野市で「峠の釜めし」が「復活」している。それが…

キッチンカーによる販売だ。篠ノ井のユニクロ長野南店の駐車場で、2021年9月から営業を始めている。テイクアウトしやすいよう容器も工夫。陶器もあるが、紙などの原料となるパルプ製も売り出している。(パルプ製は1100円)

客:
横川から持ってくるの?
スタッフ:
そうです。群馬県から毎朝、持ってきているものです
懐かしさもあって連日、多くの人が訪れている。
購入した人:
もう信越線に乗っているときからですよね。また釜めしを食べられるようになったと思いましたからね、よかったと思います
父親:
子どものころから好きだったので、まだ子どもたちが食べたことないというので、この味を食べさせてみたいなと思いまして
娘:
重い…おいしい味がしそう

「御昼食に峠の釜めしはいかがですか」
販売を任されている池田正さん(64)は、「おぎのや長野店」の開店当初から働いていた一人。2021年8月の閉店イベントでは、地元の住民から多くの惜しむ声をかけられただけに、再び販売できることに喜びを感じている。
荻野屋長野拠点・池田正販売マネージャー:
どこで買ったらいいのという声が多かったから、久しぶりに召し上がるということで喜んでいただくのがうれしい
7月の3連休中は、用意した60食が2時間半で完売。

今、荻野屋が目指しているのは地域に愛される弁当だ。大型衣料品店やスーパーの近くでキッチンカーで販売し、「峠の釜めし」を誰でも気軽に食べられる弁当にしようと取り組んでいる。
荻野屋諏訪店・戸田友広ゼネラルマネージャー:
地元のお客さまを大切にしていきたい、また地元のお客さまに「峠の釜めし」をお届けしたいという思いがありますので、これからも意見を聞いて、しっかりエリア、エリアに出店できるようにしていきたい

「駅弁」から、ドライブインでの販売による「脱駅弁」。そして日常で親しまれる「弁当」へ…
懐かしさと共に味わってもらうだけでなく、駅弁時代を知らない世代にも魅力を広めようと、老舗の模索は続く。
(長野放送)