西日本豪雨から4年がたった。
被災地の1つ、愛媛・西予市野村町の地域おこし協力隊の女性が「野村をもっと知ってもらえる場所に」と、自身の夢だったゲストハウスとバーをオープンさせた。新たなステージで野村を支えていく姿を追った。
復興支援で街へ…地域おこし協力隊の女性の思い
西日本豪雨から4年目の7月7日、西予市野村町にある乙亥会館の献花場に、花を手向けに来た女性がいた。
シーバース 玲名さん(28)、西予市の地域おこし協力隊員だ。
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
(野村に来た当時は)乙亥会館の中でおばちゃんとかとしゃべりながらいろいろ聞いて、困ったら市役所とか関係の人につないでみたいな感じでした

前回、取材したのは2021年6月のこと。
正本健太キャスター:
古い家みたいな感じですよね
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
ここも貸していただいて、これからこっちがゲストハウスになって、こっちの1階がバーになって

シーバースさんには1つの夢があった。
野村を知ってもらうための新たな場所。空き家だった古民家を改修して、ゲストハウスとバーをオープンさせることだ。

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
(被災で)地元の公営住宅に移るっていう方もいれば、本当は家借りたかったって人もたくさんいらっしゃると思うので。でも、空き家はあふれかえっているっていうこの状況って、すごくもったいないと思ってて。そこが1つのチャンスっていうか

神奈川出身のシーバースさんは、復興を支援するため、災害の翌年に地域おこし協力隊員として野村にやってきた。
野村に移って2年半余り。住民らと一体となったイベントの運営にあたるなど、復興とともに歩んできた。
地元の大工さんや知人たちにも手伝ってもらいながら、夢の場所を自身の手で作ってきた。

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
私の思いか…。野村の楽しみ方を知ってもらう、最初の「入り口」になったらいいかなと思います
田園風景広がる夢の「ゲストハウス&バー」完成
2022年6月、シーバース 玲名さんのもとを訪れた。
正本健太キャスター:
完成してから初めてですね。ご無沙汰しています
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
こんにちは。よろしくお願いします

正本健太キャスター:
ようやく完成して、こっちがゲストハウスで、隣がバーで、本当に完成したんだなと、すごくうれしい気持ちで
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
ありがとうございます、おかげさまで
夢だったゲストハウスは、2021年10月についに完成した。

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
こっちが母屋って感じですね

正本健太キャスター:
立派な梁が見えてますね
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
これだけ古い梁がなかなか見られないかなと思うんで

窓を開けると、シーバースさんが大好きな野村の田園風景が広がる。
正本健太キャスター:
豪雨から4年経ちますけれども、自分が作ったゲストハウスで迎えるところだと思いますけれども
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
泊まりに来られるお客さんに豪雨の話をすることもあるんですけど、やっぱり知らない方もすごく多くて。だからこそ、よく変わったこともたくさんあるから、それをうまく伝えられるようにしていきたいし

ゲストハウスの隣には、夢だったバーも。

正本健太キャスター:
シンプルな作りというか、和を生かしたというところですかね
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
神奈川にいた時に3年バーで働いていたので、その時に基本の基本は覚えてて

このバーにも、シーバースさんが抱く野村への思いがあった。
正本健太キャスター:
ここがこだわった部分?
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
はい、いい壁です。さらさらです。田んぼの景色の輝いているような感じが、パッと見た私の(最初の)印象なので、それがここに映ってるなって感じがするなと思って

「ento house」野村の“入り口”のような存在に
この日、松山からの宿泊客がいた。
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
草刈り疲れですか?
宿泊客:
草刈りにいっとった

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
お疲れさまです
宇和にある実家の改修を終えてから、野村に泊まりにきたという。
宿泊客:
なんか落ち着きますね。こんな人(シーバースさん)がいるんかなと思って、都市部からこっちへ引っ越してくるのは。今、過疎化が進んでいるのに。そこに感動して、ここに泊まろうかと。バーもあることだし

店の名前は「ento house」。名前の意味を聞いてみると…

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
目先の利益だけじゃなくて、「長い目で考えていこうね」みたいな「遠図(ento)」っていう言葉があって、「entrance=入り口」のような存在になれるようにと思ってつけました
地元・野村で同級生だったというグループは、最近、このバーをよく訪れている。

利用客:
こういうお酒を飲む所があんまり野村にはないので。種類がやっぱり豊富でいいですね
こちらのお客さんは、野村でたこ焼き店を営んでいる。
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
おいしいたこ焼きを作るという喜びがあるじゃないですか
利用客:
最近は暑すぎて。ヤバいよ、本当。せめて家のビールじゃなくてね、生ビール飲みに。いい意味でしがらみがないっていうのは、ここはすごくつながる場所やなと思うんで、ついつい来てしまうんですよね
街が新たな「家族」に…地域を越えての交流の場
野村の人たちが集うだけでなく、地域を越えての交流の場に。
それが、シーバースさんが思い描いていた野村の楽しみ方の「入り口」だった。

西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
(地元の)神奈川に帰ったりすると、なおさらこっちの距離感の良さに気付くっていうか。「家族」みたいな…感じですかね
正本健太キャスター:
「家族」ですか?
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
何か気軽に、それこそ懐に入ってくるみたいな感じで。街が家族っぽいなっていうふうに思いますけどね

正本健太キャスター:
そういう家族が集える場所でもありたい?
西予市 地域おこし協力隊・シーバース 玲名さん:
そうですね、来てくれるとうれしいし
野村の楽しみ方を知る「入り口」。シーバースさんにとっては、野村の人たちという新たな「家族」と過ごせる場所にもなった。
復興とともに、シーバースさんはこれからも「この場所」で歩み続ける。
(テレビ愛媛)