政府は、身寄りのないウクライナ避難民に対して、ホテル退所後は、一日2400円(12歳以上が対象)を支給するほか、新生活のための一時金として16万円を準備している。イリーナさんにその使い道を聞いた。
言葉の”ハードル 今後の生活は・・・
イリーナさん:足が悪いので、治療を受けたいです。あと、健康のためにプールに通いたい。将来的にはアニメ声優になるための勉強をしたいです。
彼らが日本で仕事を探すには、言葉の”ハードル”が立ちはだかる。安定的な収入を得るまでには、時間がかかるだろう。イリーナさんのように、健康面に不安を抱える人は、治療費にも頭を悩ませることになる。政府が導入している支援は、彼らに、十分に理解されているのだろうか。相談しやすい環境整備も必要だろう。
「同じ経験をしてきたからわかる」ルームメイトとの出会い

インタビューの途中、ルームメイトとなるアメリカ人のアンバー・ローズ・ケイさん(29)が帰宅した。ウクライナから避難してきたイリーナさんと一緒に暮らすことを、どう感じているのだろうか。
「異国に住みはじめると、全てのことが新しく、初めは分からないことばかりです。私も洗濯機の使い方とか、日本語が読めないとか、そんな経験をしてきたので、困ったことがあればいつでも聞いてほしい。」2人は会ったばっかりだったが、「ケンカすることなく、快適に暮らせると思います」とローズさんは話した。
「いつでもきて」孤独をふせぐ交流の場
この日、イリーナさんの”新居”を管理する茨城NPOセンター・コモンズの代表理事・横田能洋さんが、「紹介したいところがある」と訪ねてきた。

横田さんが案内したのは「えんがわハウス」。孤立を防ぐため、様々な人たちが、集うことができるようにと作られた”交流の場”だ。カフェが併設されているほか、多くの書籍も置いてある。日本語の絵本に興味を示したイリーナさんに、横田さんは「いつでも来てね」と声をかけた。

また、イリーナさんは、市内の保育園にも案内された。最初は緊張していたが、教室で知っている音楽が流れると、子供たちといっしょに口ずさむ姿も見られた。ウクライナ語で、絵本を読み聞かせるイリーナさん。その俳優らしい迫力ある声に、子供たちも釘付けになった。
現在、ウクライナからの避難民は1500人を超えた。これから、避難や移住を受け入れた後の、その先の「支援」が重要となる。彼らを孤立させないため、周囲のサポートも不可欠だ。滞在期間が長期化すれば、どのように生計を立てるのか、治療費などはどうするのか、具体的な課題が浮上してくる。彼らの”不安”に応えることは、受け入れた側の「責任」と言えるだろう。
(フジテレビ社会部 中澤しーしー)