脱炭素の未来に向かって走るバスに迫った。

「廃食油バス」運行へ

西武バスが14日から所沢エリアで運行を開始する、廃食油を燃料とするバス。

西武バス 管理部・渡邊浩平主任:
廃食油や動物油が原料の燃料になっている「リニューアブルディーゼル」を使用したバスの運行になります。

この記事の画像(7枚)

「リニューアブルディーゼル」とは、廃食油や動物油などを原料に製造する、再生可能資源由来の代替燃料だ。

精製から消費までに排出されるCO2を、石油由来の軽油と比べ約9割削減できるほか、既存の車両や給油施設をそのまま使用できるため、初期投資がかからないことも特徴の1つだ。このリニューアブルディーゼルを使った路線バスの運行は国内初となる。

西武バス 管理部・渡邊浩平主任:
軽油の場合、1台あたり年間で30トン近いCO2の排出が進んでいる状態なので、もう少しその数値を抑えられるかが課題の1つです。

これまでにユーグレナ社のバイオディーゼル燃料「サステオ」や水素を動力源とした燃料電池バス「SORA」など、 様々な代替燃料で実証実験を進める西武バス。

今回のリニューアブルディーゼルでも5年ほど実証実験を重ね、収集したデータなどをもとに今後の脱炭素社会に貢献したいとしている。

広がる「カーボンオフセット」

内田嶺衣奈キャスター:
早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。今回の取り組み、どうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
いま、植物由来の油を燃料にした車や航空機が注目されています。これは「カーボンオフセット」というやり方で、CO2の削減に取り組むものです。

例えば、今回の試みであるバスで考えてみると、廃食油をリサイクルするということだけでも資源の節約になっていますが、その食油も元をたどれば光合成をしていた植物です。

植物由来の燃料でバスを走らせるとやはりCO2は発生しますが、燃料のもとになる植物は成長する過程でCO2を吸収しています。つまり植物のライフサイクル全体でいえば、CO2の排出は相殺・オフセットされます。

こうしたプラスマイナス・ゼロを目指す試みをカーボンオフセットといいます。
カーボンニュートラルはCO2を出さない技術、カーボンオフセットはライフサイクル全体でCO2排出をゼロにする試みです。

内田キャスター:
カーボンオフセットの取り組みがますます広がるといいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
例えばANAグループは、2050年度までに航空機の運航で発生するCO2を実質ゼロにする目標を掲げています。このために、SAF(サフ)と呼ばれる植物由来の油を利用した航空燃料に大きな期待を寄せています。

日本が誇るエンジン技術でCO2削減を

内田キャスター:
いま、地球環境を保全するために様々な技術の開発が行われていますが、日本の技術が世界に貢献できると嬉しいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
東京都などはEVバスの促進事業も行っていますが、肝心の電力が火力由来ですと逆に発電時にCO2を出してしまいます。EVだけでは世界の自動車需要に対応しきれないし、CO2削減にならないことが分かってきたので、日本が得意なエンジン技術を使ってCO2削減に取り組むことも大切だと思います。

植物由来の燃料を使う今回の廃食油バスや航空機のSAF燃料、あるいはCO2を出さない水素エンジンなど、 内燃機関は過去の技術ではなく、その技術改良の延長線上にもCO2削減の解決策があることを日本が示していければよいと思います。

内田キャスター:
CO2の削減という世界全体で向き合っていかなければいけない問題で、日本が貢献できることが広がればと思います。

(「Live News α」7月13日放送)