ウクライナ情勢などを背景に、家畜の飼料価格が高騰する中、輸入飼料に頼らない農業法人では、価格高騰の影響が出ていないという。
富山市旧大沢野町の山あいで、“循環型農業”を営む農業法人を取材した。

コメや野菜づくり、養鶏…加工から出荷まで手掛ける

6月4日、富山県内の神社の若手神主で作る団体が、富山市の農業法人「土遊野(どゆうの)」の田んぼで稲作に感謝する神事「御田植祭」を開いた。

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集まったのは、近くに住む子どもや、普段からここの農業体験に参加している人たち約50人。大勢での手作業の田植え。毎年、体験会を開いている土遊野では、見慣れた光景だ。

土遊野・河上めぐみ代表:
面白いですね。子どもが田んぼを歩く。なんでこんなうれしいんでしょうね

この地域で生まれた、土遊野代表の河上めぐみさん。大学では東京に出たが、卒業後すぐに戻り、両親から土遊野の経営を引き継いだ。

両親は、もともと東京からの移住者。河上さんは、富山の自然に魅せられ、土の力を生かした農業に打ち込む両親をそばで見てきた。
富山市の中心部から、車で約50分の山あい。旧大沢野町の小羽地区で、土遊野はコメや野菜づくり、養鶏業を営んでいる。

実践しているのは、ここの資源を最大限に生かす「循環型農業」。鶏のエサを、ここで作ったコメや近くの施設から分けてもらった廃棄される野菜などから作る。そして、その鶏の糞をたい肥として土に返し、野菜やコメ作りに生かしている。

農薬や化学肥料は使わず、作物生産や養鶏に必要なほとんどの資源を、自らの農場内で賄っている。
商品は、加工から出荷までを手掛け、インターネットやこだわりのスーパーマーケットで、手間やコストに見合った価格で販売している。
卵は1個60円。素材の旨味や安心感が人気で、県内外の消費者やレストランなど、1,000軒ほどの顧客がいるという。

土遊野・河上めぐみ代表:
里山での循環型の農業でやっていける。仕事がある。暮らしていけるという、1つのあり方を伝えたい。そのために挑戦している

多くの農業資材を輸入する現状に危機感

ここにある資源を生かすことを大切にしている河上さん。
家畜のエサや化学肥料など、多くの農業資材を外国から輸入している日本の現状を、複雑な思いで見ている。

土遊野・河上めぐみ代表:
エサを外国から遠いところから、肥料、薬を外資に頼る農業の未来がないとかじゃないんですよ。ただ自分の中で予測できない。外国というか、日本にこんなに資源があるけど、そうじゃなくて、外の遠く離れた資源に頼る、依存していく社会、暮らしには危機感を持っている

ウクライナ情勢を背景に、日本で家畜のエサとして多く使われている輸入とうもろこしの価格は高騰している。さらに円安が追い打ちをかけ、化学肥料など輸入原料由来の農業資材全般が値上がりしている。

一方、土遊野は、その影響をほとんど受けていないという。

土遊野・河上めぐみ代表:
実際にエサを自分たちで作っている。たい肥を自分たちで作っているというのは、あんまり値上がりの影響を受けない。受けずに今年もこれやろうと、やっていける。この資源を生かしてやっていけるじゃないか。そこに依存していないから

日本の食料自給率37%…今後も持続可能か

不安定な国際情勢の中、変わらない里山のめぐみ。河上さんは、自身の思いを農産物とともに届けることを一層、大切するようになった。
2020年の秋からは、「土遊野通信」として農場の話題をつづり、ウェブサイト上に掲載したり、農産物に便りを添えたりしている。里山に生きる農家として、生産と消費との距離が近づくことを願っている。

土遊野・河上めぐみ代表:
まだ農家と食べてくれる人との距離は、まだまだ遠いかなと思っているので。農家が思いを伝えて、それを聞きたいなって思ってもらえる社会を望んでいるのかもしれない

日本の食料自給率は37パーセントと、先進国の中では非常に低い水準となっている。
そこに、ウクライナ情勢を背景に穀物生産国の輸出が滞り、有事の際に食べ物をどう賄うのか。食の安全保障が、国内でも一層取りざたされるようになった。

外国に多くを依存し、生産側が見えない。
いま、食のあり方は今後も持続可能なのかを、社会全体で考えていく必要があるといえる。

(富山テレビ)