市の職員から漫画家に転身した女性が、漫画家になって1年。恋愛小説の漫画版を、電子書籍で配信している。
「家族の夢。1回しかない人生」と応援してくれる夫と娘。将来は、書籍版の出版に加え、ドラマ化や映画化、そしてアニメ化をめざしたいと夢が膨らむ。
日常のふとした場面がきっかけ 市役所を辞め漫画家に
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
読めば1秒なんだけど、描くのに1時間かかる。締め切り前3日くらいはパニック、パニックです。朝から晩まで仕事部屋にこもって、ずっと描いてという感じ
デジタルペンでタブレットにイラストを描いているのは、佐賀・多久市北多久町の白浜加奈子さん(34)。2021年6月、「白玉なこ」というペンネームで漫画家デビューした。
白浜さんは大学卒業後、多久市役所に就職。10年務めた後、2020年3月に退職し、夢だった漫画家になった。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
小学校3年生くらいから、ノートにコマを割って書き始めたと思います。「はぁ」とキュンってしたりとか、実際にそういう相手がいなくても気持ちが味わえるというのが、漫画とかドラマとか映画とか、エンタメの力だと思うので、自分もそういうものを作りたい
公務員から漫画家へ。きっかけは、日常のふとした場面だった。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
(休日に)楽しそうにサッカーに行く旦那さんを見て、「いつも楽しそうだな。そういえば子どもの時、漫画家になりたかったな」というのをふと思い出して、久しぶりに描いてみようと思ったのが、第一の始まりでしたね
リモートで打ち合わせ 県外のアシスタントに依頼も
白浜さんのデビュー作は、恋愛小説「10年ぶりに恋、始めます」の漫画版。連載は月に1度ほどのペースで、これまでに電子書籍で10話配信されている。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
主人公の30歳のOLの女性が、10年ぶりに恋をするというお話。年下の上司が赴任してきて、そこから始まるオフィスラブのお話です
白浜さんのこだわりは、キャラクターが照れた時の表情だという。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
斜線ね、赤面の。デレ線。このデレ線を入れるだけで、全然違う
さらに瞳にも…。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
目がキラキラキラってなるじゃないですか、恋している表情とかって。仕上げの時に、潤ませたりとか。白い部分が散りばめられている感じ
以前は、漫画家と言えば、東京や大阪など多くの出版社が本社を構える、大都市で制作していた。
しかし、今は白浜さんのように、地方で活動する漫画家も増えている。背景の作画や、一定の範囲を黒で塗りつぶす「ベタ塗り」は、自宅から県外に住むアシスタントにデータで送り、手伝ってもらう。
また、今後の展開など、出版社の担当編集者との打ち合わせもリモートだ。
「ゆめこみ」編集部・宮本知佳 編集長:
課長のモヤモヤ、嫉妬など。ヒロインに対する想いを出していく回にした方が良い
自宅で描く恋愛漫画 家族の存在も大きな力に
白浜さんには、リフレッシュするための憩いの場所がある。以前務めていた、多久市役所のすぐ側にある喫茶店「砂時計」。市役所に勤めていたころからよく通っていたという、なじみの喫茶店だ。今では、ここで仕事をすることもある。
砂時計・山口平さん:
市役所辞める時に「もったいない。何で辞めるのか」と言ったんですよ。意外だった。漫画家なんてね
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
この雰囲気でリラックスして。リラックスしたら、脳の回路が開くみたいな感覚になる。おいしいコーヒーを飲んで、ぱぁーっとなった時に「何か良いかも」みたいに閃いたりするから、場所を変えるとか、リラックスするというのは大事
夕方、夫の渚さんと娘の妃那子さんが帰宅した。
――加奈子さんの作品を見てどう思った?
娘・妃那子さん:
絵が上手と思った。(自分も)漫画に出たい
――加奈子さんに作品の感想を言う?
夫・渚さん:
全然言わないです。恥ずかしがるので
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
読んでも言わないでほしい
夫・渚さん:
(漫画家デビューは)とても家族としてうれしかった。家族の夢というか。1回しかない人生なので
多久市の自宅で描く恋愛漫画。家族の存在も大きな力になっている。
漫画家「白玉なこ」・白浜加奈子さん:
漫画を描きたいと言った時も、主人がすごく応援してくれて、公務員をしながら趣味で漫画を描いていた時も「オレ、加奈子だったら漫画家になれる気がする」とか言ってくれていたんですね。それがなんかうれしくて…。娘もいつも「がんばれ」って応援してくれているので、本当に家族には感謝しかないなと思います。家族のためにも、いっぱい面白い漫画を描いて、(読者に)貢献できたら良いなとすごく思っています
今は電子版のみの連載だが、将来は、書籍版の出版に加え、ドラマ化や映画化、そしてアニメ化など、普段漫画を読まない人にも作品を見てもらえる漫画家になりたいと夢を描いている。
(サガテレビ)