子供たちの習い事やスポーツにはさまざまな種類が。今回注目したのは「ＦＷ専門アカデミー」だ。
サッカー選手全般を対象にしたスクールはたくさんあるが、点を取るストライカーの育成に特化したサッカースクールで、練習メニューも独特だった。
シュートまでの過程を重視 独特の指導スタイル
静岡・藤枝市で4月にサッカースクールをスタートさせたのは、「デカモリシ」の愛称で知られる元日本代表FW・森島康仁さん（34）だ。
森島康仁さん：
シュート好きな人？キック好きな人？
その名も「デカモリシFW専門アカデミー」。
小学4年生から中学3年生を対象に、月曜日と土曜日の週2日、森島さん自身が指導に当たっている。
森島康仁さん：
今からボールのキープの仕方を教える、手の使い方ね。魔法のトレーニングはないねんけど、これはどちらかと言うと“魔法”かもしれん。オレ体重88kgあんねんけど、小学校6年生を抑えるのはオレでも無理。でもこうなった時に、次はここに手を置く
1時間の練習の半分以上でシュートを打たない、独特のメニュー。
キープするときの手の使い方、ボールの引き出し方などシュートまでの過程を特に大事にしている。
森島康仁さん：
ゴール取るために野心的な感じでやってたんですけど、もっと考えないといけないと思ったのは29歳、30歳の時だったので、そこでスタイルも変えて
ゴールへのこだわり
森島康仁さんは兵庫県出身で、名門・滝川第二高校を経て、セレッソでプロのキャリアをスタート。ジュビロ磐田には2015年に加入する。
Jリーグ通算71ゴールをマークしたストライカーで、2021年のシーズンに藤枝MYFCで現役を引退した。
年代別代表の常連で、2008年にはA代表にも選ばれている。
「デカモリシ」のニックネームで知られるように、身長は188cmだ。
そんな森島さんだが、ジュビロでは思うような結果を残せず、新天地を求めることになる。ここからの道のりがゴールにかける思いをより強くさせ、今回のFW専門アカデミーへとつながった。
森島康仁さん：
ジュビロをクビになってから本当にチーム1つもなくて、もう引退だなと思った時にテゲバジャーロ宮崎から連絡があって、行くまでは本当に大丈夫なのかと
地域リーグで浮上のきっかけをつかむ
2017年、J1ジュビロから移籍したのは5部にあたる地域リーグの舞台。正直プライドも自信も失いかけていた。
しかし、浮上のきっかけを与えてくれたのはゴールだった。
九州、そして関東1部リーグに所属した2年間では、相手との駆け引きを学ぶなどプレーの幅を広げ、ともに得点王を獲得。
森島康仁さん：
嬉しかったですね。とらないと来た意味ないと思っていたので、まさしくこれで人生変わりましたからね、本当に遅咲きですけど
その活躍が認められ、2019年に31歳でJ3藤枝MYFCに加入する。
一度は諦めかけたJの舞台での現役引退。それでもゴールが人生を変えてくれた。
森島康仁さん：
地域リーグに2年いたことが、下がったという感じになるかもしれないですけど、僕はあの地域リーグの2年間がすごい大事。地域リーグだろうが、ゴールの価値は変わらないと思うので
伝えたいのはゴールまでの“準備”
90分の中で、1人がボールに触れる時間は2分程度と言われるサッカー。
伝えたいのは、数少ないチャンスをモノにするための準備の大切さだ。
森島康仁さん（子供たちへの指導）：
無理やったらこっち。次はついてこなかったら、ここで受ける。前を通るか、膨らむか。スペースを作るか、そのスペースを開けたところを使うか
子供たちにゴールで道を切り開いてほしい。そして、静岡から日本代表のストライカーを育てたい。
アカデミーに参加する子供：
説明とかもとても分かりやすくて、練習や試合とかでも使えそうな動きで、とても良かったです
別の子供：
ワールドカップに出て、日本代表を優勝に導きたいです
森島康仁さん：
相手より点を取らないと勝てないので評価されないですし、ゴールをとると人生変わるよというところは伝えたいですね。しっかり熱意を持って、生徒に負けないように、僕も熱くやっていきたいなと思います
扉はどんな子供にも開かれている
今回は小学生の練習を取り上げたが、中学生の練習ではオフサイドラインでの駆け引きなど、内容もより高度に。
ディフェンスの位置を確認する手のことを、虫の「触覚」に例えたりするなど、子供たちに親しみやすい「森島語録」も印象的だ。
選手たちは基本的に他のスポーツ少年団やクラブチームに所属しながら、週に2回、森島さんのスクールに通っている。
まだまだサッカー経験が浅い子もいれば、地域の選抜チームに入っている子もいるなど、子供たちのレベルも様々。
セレクションはないため、どんな子にも扉は開かれている。
（テレビ静岡）
