発話障害のひとつで、話し言葉がなめらかに出てこない「吃音(きつおん)」。その症状がある若者たちが接客に挑戦する1日限定のカフェが5日、富山市で開かれた。
「吃音」の症状をもつ人たちの思いを取材した。

1日限定カフェで交流…「吃音」当事者の思い

「吃音のことはご存じでしょうか」

5日、富山市のレストランを貸し切って開かれた1日限定のイベント「注文に時間がかかるカフェ」。
スタッフは全員「吃音」の症状をもつ、10代から30代の4人。

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接客業をしたくても、吃音のため挑戦できない人に、自信をつけてもらおうと開かれた。

唯さん:
お待たせしました。アイスコーヒーです

企画したのは、自身も吃音当事者で、富山市に住む唯さん。

このイベントは、もともと東京都の奥村安莉沙さんが立ち上げたもので、東京での活動を知った唯さんが奥村さんに相談し、地方で初めての開催となった。

イベント開催の3日前。唯さんは、今回場所を提供してくれる顔なじみのレストランへあいさつに訪れた。

唯さん:
日曜日はお世話になります。よろしくお願いします

唯さんは、吃音の中でも「難発」という症状をもっている。苦手な言葉は、喉がブロックされるような感覚で声が出ないという。

唯さん:
(苦手な言葉は)言い換えたり、違う言い回しをして、相手に気付かれないように会話をしてる。
やっぱり自分の中で、吃音が出たときだけ苦しいんじゃなくて、しゃべってるときは、ずっと緊張感や不安な気持ちがある。
自分の中で不安な気持ちを抱えながら生活していくこと自体が、もうすごく嫌というか、つらい部分はある

客に笑われトラウマになっても…接客業に「憧れあった」

もともと、接客業に興味があった唯さん。
学生時代には、ドラッグストアでアルバイトをしたが…

唯さん:
会計のときに金額が言えなかった。私は吃音の症状が出たら、「随伴症状」と言って、まばたきを繰り返してしまう。そういうのがでたときに、お客さんにすごく驚かれて笑われて、それがけっこうトラウマになってしまった。けど(接客業に)憧れはあった

日本では、100人に1人に症状があるともされる「吃音」。
幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんどだそうで、その要因は生まれて持った体質(遺伝的要因)によるものが多いという報告もある。

音を繰り返す「連発」(繰り返し)
音を引き伸ばす「伸発」(引き伸ばし)
言葉を出せずに間があいてしまう「難発」(ブロック)という、大きく3つの症状がある。

「連発」「伸発」に幼いころから悩んでいるのが、今回スタッフとして参加した富山市の大学生、金森真凜さん。
金森さんは大学3年生。じきに就職活動が本格化する。

金森真凜さん:
いくらテスト(就活の筆記試験)で点数がとれていても、いざ働くというときに、職場の人と連携がとれないとか、そういう風に判断されたら、落とされたりするのかなと思うと怖い。
しゃべれないのが本当につらい。吃音によって選択肢が狭まっているのを、なかなか理解してもらえない。現状を色んな人に知っていただきたい

吃音があっても…誰もが挑戦しやすい社会に

イベント当日。事前予約で受け付けた40人のお客さんが次々と来店した。

金森真凜​さん:
緊張しているから、どもっているわけではないので、「リラックスして」とか「ゆっくり」というアドバイスはしないでください

客の女性:
息子は15歳で、絶対、吃音だと言ってほしくないし、人としゃべるのも嫌だって

唯さん:
私も昔そうだった。誰にも言わなかったし、親にも相談しなかった。吃音があっても、生きやすい環境というのが自分でわかってくる

吃音への理解を深めてもらおうと、スタッフは思い思いにお客さんと交流を図った。

来店した客の男性:
実は教員をやっているので、学校に全くしゃべらない子がいて、もしかしてその子が吃音を持った子なんじゃないかと思ったりして。まずは知ることかなと思って来た

来店した客の女性:
私自身も発声障害がある。私自身は人としゃべるのが嫌で、人と関わらないようにしていたけれど、皆さんが笑顔で頑張っているのを見て、いいなと思った

富山でのカフェ開催を企画した唯さんは…

唯さん:
自分の家族に吃音の子どもがいて、不安だという方もいたが、こういう場を見て勇気をもらったと、お客さんに言っていただいたのが、いちばんうれしかった。
「私、吃音なんだよね」って言ったときに、「ああそうなんだ」くらいの軽い気持ちで受け止めてもらえるような世界になったらいいなと

自分は他の人とは違う…そんな悩みを抱えて何かに挑戦するのは、とても勇気がいること。
誰もが挑戦しやすい社会をつくるためには、まずさまざまな特性を正しく知ることだ。

(富山テレビ)