長野県諏訪市の中学校では、自校給食の中で生徒に食育を行っている。しかし、食材の価格高騰で献立を考える「栄養教諭」は苦心の日々。おいしくて勉強にもなる、ユニーク給食を守ろうと奮闘している。

生徒たち絶賛 高知のかつおめし

諏訪市の諏訪南中学校。校内の調理場では毎日、生徒と教職員合わせて480人分の給食がつくられている。献立を考えているのは、栄養教諭の北村準平さん(32)だ。

諏訪南中学校の調理場(長野県諏訪市)
諏訪南中学校の調理場(長野県諏訪市)
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栄養教諭・北村準平さん:
食べて飽きないようなワクワクする給食になるように、かつ予算に収まるように…

「自校給食」を味わう生徒たち。この日の主食は一見、炊き込みご飯のようだが…。

生徒:
高知の郷土食で、ショウガやカツオが入った給食

諏訪南中学校では「日本列島郷土食の旅」と題して、全国の郷土食を月に1回程度、給食にしている。

栄養教諭・北村準平さん
栄養教諭・北村準平さん

この日のテーマは高知県。カツオの消費量全国1位ということで、主食はカツオの身をまぶした「かつおめし」。みそ汁には高知で親しまれている麦こうじや、大豆を原料とした「麦みそ」を使った。

生徒:
かつおごはんがおいしくて、しょうゆとショウガの味付けが良くて。高知でしか食べられない給食を食べられたので良かった

生徒:
給食で出ないような給食も出るので、すごいなと感謝して食べています

栄養教諭・北村準平さん:
みんな残さず食べてくれていたので、子どもたちの口にも合ったと、ホッとしています。きょうは100点満点で作れました

「食の知識を身につけてほしい」

北村教諭は食育になるとして、他にもボルシチ(ウクライナ)、パスタ(イタリア)、ルーロー飯(台湾)など世界を旅した気分になれる「世界グルメツアー給食」や、寒天にカリンなどの地場産品を使った「諏訪学給食」も考案している。

栄養教諭・北村準平さん:
給食は食べておいしく栄養を取れるだけでなく、食の知識を身につけてほしい。大人になったときに知識を生かせるようになってほしいと、いろいろな献立に挑戦している。廊下で生徒とすれ違うと「きょうの給食なに?」と聞かれて、食に関する意識も高くなってきている

自身も小中学校の給食が大好きだったという北村教諭。給食の管理や食に関する指導をする栄養教諭になった理由も…。

栄養教諭・北村準平さん:
(中学校を)卒業したら食べられなくなると気づいた。どうしようと思い、学校で働くか給食センターで働くしかないと。クラス皆に「俺は給食センターで働く」と宣言した。気づいたら自分の好きな給食の道に進んでいました

食材高騰の中…工夫重ね魅力ある献立に

夢を実現させた北村教諭だが、いま大きな悩みを抱えている。

栄養教諭・北村準平さん:
野菜の値段を調べています。発注も済んでいるので、予算内に収まるか確認

野菜の値段を調べる
野菜の値段を調べる

悩みの種は「食材の価格高騰」だ。折からの原油高に加え、ロシアのウクライナ侵攻で小麦などの輸入食材の価格が上昇。天候不順でタマネギなどの野菜も値上がりしている。

栄養教諭・北村準平さん:
油など調味料類が全体的に(1~2割)上がり、タマネギが去年の倍以上も上がっている。タマネギは毎日のように、量もたくさん使うので苦しい

北村教諭は複数の業者の中からなるべく安い食材を探し、値段によってはキュウリをキャベツに、鶏のモモ肉をムネ肉にと、食材の変更もしている。

厳しい現状を受けて市は、6月の市議会に提出する補正予算案に給食費の補助として772万円を盛り込んだ。可決されれば、市内小中学校で1食あたり10円の補助になる。限られた予算の中、北村教諭はこれからも食育につながる給食を考えたいとしている。

栄養教諭・北村準平さん:
給食が質素になったと思わせないよう安い食材を探したり、代用品を探したり、バランスよく魅力ある献立になるように

学校給食に詳しい長野県立大学の中澤弥子教授は、食材の高騰は給食を見つめ直すきっかけになるのではと話す。

長野県立大学・中澤弥子教授:
安定して入っていた食材が急に発注が難しくなり、今後も心配な状況。このタイミングで日本の食料自給や地域の食を見直すきっかけになれば

文部科学省の調査によると、学校給食での国産食材の使用割合は、長野県が最も高く97.7%だった。一方、地場産物の使用率は全国10位の69.5%だった。

中澤教授は、食育にもつながる地場食材の使用をさらに進め、窮地を乗り越えてほしいと話す。

長野県立大学・中澤弥子教授:
まずは地産地消で、県内での(食材の)調達。どういったものを安く入手できるかを市場や関係者と連携してもらい、子どもたちに少しでもおいしい信州の食品を届けてもらえれば

栄養教諭・北村準平さん:
これでもう、夏の献立を考えていくことになる

成長期の栄養を補い、食育の教材ともなる給食。北村教諭の苦心の日々が続く。

栄養教諭・北村準平さん:
一番は給食を食べることが楽しいと、食べることは大事だと子どもたちに感じてもらいたい。しっかり栄養の取れたものを出して、安心しておいしく、ほっとした気持ちで食べてもらえるのが一番いいなと思う

(長野放送)

長野放送
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