国内で注目を集める自閉症の兄妹アーティスト、輪島貫太(わじま・かんた)さんと楓(かえで)さんが金沢市にいる。
そんな2人を育てた母が本を出版した。泣いて、悩んで、笑って、喜んで…。そんな子育ての記録には、母の葛藤と共に、子どもたちへの思いがあふれていた。
自閉症の兄妹アーティスト育てた母の思い

大きな紙いっぱいに描かれたたくさんの人や動物。この絵を描いているのは、金沢市の高校1年生、輪島貫太さんだ。

貫太さんの作品は、細部までこだわった描写と明るい色使い、そして、みんな笑顔なのが特徴。

貫太さんの妹で、中学2年生の楓さんもアーティスト。

切り絵の作品が得意な楓さん。おとぎ話や童話をモチーフとし、ポップでカラフルなのが特徴だ。

2019年、オニツカタイガーのシューズに貫太さんと楓さんのデザインが採用されたことをきっかけに、2人は兄妹アーティストとして注目されることになる。

兄妹アーティストは共に自閉症…その時、母は
2人に共通するのは、幼いころに自閉症と診断されたこと。2人を育てた、母・満貴子(まきこ)さんと父・裕之(ひろゆき)さんには、これまで様々な葛藤があったという。

その日々を、母・満貴子さんが振り返ってくれた。

満貴子さん:
とにかく悲しくて。自分が健康な子というか、健常な子というか…とにかく、そういう子を産めなかったという悲しみが…。全部自分のせいって、暗い気持ちが長く続きました

「いつもニコニコしてる」貫太さんの笑顔が教えてくれた
兄妹が2人とも自閉症と診断され、悩む満貴子さん。
しかし、満貴子さんを救ったのも2人だった。
満貴子さん:
「貫ちゃんはいつもニコニコしてるし、穏やかでいいね」とか「好きなものがあって、本をボロボロになるまで読んでいて、うらやましい」とか言われて…。他の人は、そんな風に感じるんだなって思ったんです

「他の人と比べるなんて、意味ないよ」貫太さんの笑顔が教えてくれた。
満貴子さん:
うちの子には無いものが他の子にはあって、うちの子にはあることが他の子に無いこともある。その違いが面白いんだって…。それぞれ、いろんな「色」を持っていて、子どもは面白いなって、純粋に思えるようになりました

「それぞれ違うことが面白い」
2022年5月に発売された著書「みんな しあわせ。」の中に、「凹んでいる部分を責めず、得意部分では適切なフォローをする」とある。それは?

満貴子さん:
凹み、つまり、マイナス面を見るんじゃなくて、プラス面を見るということ。プラス面を伸ばすために、子どもたちが過ごしやすい環境を用意していたかなと思います。

満貴子さん:
私の本に書いてある子育てって、ちょっと変わっていると思うんです。うちと違うって思う方も当然いると思う。でも、「それぞれ違うことが面白い」って気がつけるはず…。いろんな方に読んでいただきたいなと思っています

両親にとっては、作品全てが宝物。子どもたちの成長の跡であり、自分たちの成長の跡でもある。


兄妹アーティストと歩んだ母の記録「みんな しあわせ。」は、子育てに悩む親にだけ向けた本ではない。自分の「色」を探している人、みんなにオススメだ。
(石川テレビ)