東京で日米豪印(クアッド)首脳会合が行われた当日、中国とロシアの爆撃機が日本海などを共同飛行し、北朝鮮はバイデン大統領が日本を離れた翌日に3発のミサイルを発射した。周辺の核保有国の軍事的な動きが活発化する中、アメリカの核の傘は本当に機能するのか。

BSフジLIVE「プライムニュース」では櫻井よしこ氏と小野寺五典元防衛相を迎え、日本の覚悟と備えについて議論した。

中国・ロシア・北朝鮮が連動する「三正面」状態、台湾有事への備えが必要

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新美由加キャスター:
5月23日に東京で日米首脳会談、翌日にクアッド首脳会合が行われた後、中国・ロシア・北朝鮮による相次ぐ動き。自民党安全保障調査会長の小野寺さんは、党の会合で「三正面が現実に起きている」と発言した。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
日本の周囲での安全保障上の脅威は、自ずとこの3つの国となる。特に厄介なのは、中露の爆撃機の威嚇的な飛行は年に1回ほどあるが、翌日に北朝鮮がそれぞれ異なる種類のミサイルを3発撃ち、その翌日に国連安保理で北朝鮮への非難決議が中露の反対により否決。一連の流れを見れば3つの国は連動しているということ。

反町理キャスター:
これらの出来事を我々はどう受け止めたらいいのか。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
これが国際社会の現実だと肝に銘じること。そして我が国を、自由陣営をどうやって守るのか。バイデン大統領は台湾有事への軍事関与にイエスと言った。いつもの失言だと言う人もいるが、今回が3回目。本当の気持ちだろうと思う。これを受け止めるべき。台湾を守ることは我々を守ることとほぼ同義。アメリカが介入するという大前提に立ち、その際の協力について自民党の外交部会、国防部会、政府を巻き込む形で具体的に考えなければいけない。

反町理キャスター:
台湾有事の際に、アメリカの台湾関係法の関連で第7艦隊や沖縄の在日米軍が行動を起こす可能性は当然ある。日本の自衛隊はどうするのか。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
ワシントンで、自民党の提言を説明しながら台湾有事を含めてアメリカ側有識者と意見交換した。逆に、日本が台湾有事に対しどういうスタンスなのかをアメリカは知りたい。日本がアメリカと協議してできる支援を行わなければ日米同盟にひびが入り、日本の安全保障にかかわる。自分たちが強い力を持ち、仲間の国と心をひとつにして対応するという意気込みがしっかり相手に伝わることが抑止力になる。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
その通り。ただ、抑止力が十分でないと中国が判断すれば台湾有事は起きる。中国は日本をかなり見切っており、攻撃力で日本が勝つ見込みは全くないと見ている。今手を出していないのは、地球全体においてアメリカが勝っているから。だが中国はどんどん追いついている。台湾有事は起きる前提で準備しなければいけない。

「巻き込まれる」ではなく、逆に西側諸国を巻き込まなければ守れない

新美由加キャスター:
日米首脳会談の共同声明で「バイデン大統領は、核を含むあらゆる種類の能力によって裏付けられた日米安全保障条約の下での、日本の防衛に対する米国のコミットメントを改めて表明した」と。アメリカの核の傘について。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
現実論として大事なのは彼我の軍事力の比較、また同じ価値観を有している国の動きについての計算。私は、ソ連が1977年に中距離弾道ミサイルを配備した際のイギリスの対応が参考になると思う。当時のサッチャー首相は、アメリカの拡大抑止もNATOも機能するという大前提を崩さずに、イギリス国民と国土を守るための独自の核で抑止力を持った。日本で核の論議は始まったばかりで、国民の間にも非常に強い懸念がある。核のいいことも悪いことも全部包み隠さず、遠い将来になくすことを目標にしながら、その間に核をどうするか考える議論を今絶対にしないといけない。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長

反町理キャスター:
核の抑止力を持てば緊張感が高まるのでは、巻き込まれるのではという批判や懸念が必ず出てくる。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
むしろ逆で、アメリカや西側の国を巻き込まなければ守りきれないというのが、基本的な認識になるべき。議論の前提がすっかり変わっていることは、政治家だけではなく国民の皆さんも気づいていると思います。

反町理キャスター:
安倍晋三元首相が、5月6日の番組出演時に「核の傘をより現実的にしていくために、報復の手順などを日米で協議し決めていく必要がある」と発言。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
具体的に事態が発生したときのアメリカの様々なシミュレーションに日本も入り、それが作戦レベルに落ちて初めて、拡大抑止に関して確信が持てると思う。日米がちゃんとやっていると外に伝わることが抑止につながる。

反町理キャスター:
5月17日出演時の小野寺さんのお話。アメリカの関係者に「ロシアがウクライナで戦術核を使用した場合、アメリカは核で攻撃するのか」と質問したら「そのときはNATO(北大西洋条約機構)も含め日本にも相談する」と言われたと。この発言の意味は。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
核使用はとても重い決断で、国際社会からの風圧に対して後押ししてもらうためにも、事前に決断について一定の説明や意見を求められることはあると思う。アメリカの核の傘による拡大抑止論とは、「アメリカの核を使ってでも日本を守ってくれ」ということ。非核三原則があるから、日本は唯一の被爆国だから核はあってはならないと同時に言うことは、ある面で無責任だと思う。自分たちは考えずアメリカが手を汚してくれ、などということはない。向き合って議論しなければいけない。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
岸田首相にインタビューをしたとき、非核三原則は自分の内閣では絶対に揺るがせにしない、と。それ以上踏み込もうとしなかった。被爆国だから日本だけが特別だと思っているのでは、と思う。核がなくなればいいとは、日本国民全員、世界の人が思っている。専売特許のように「核なき世界を」と言って思考停止するのは無責任。責任ある政治家は、拡大抑止で大丈夫なのかと疑問を持たなければいけない。

今は世界史的な変化の時 日本も変わらなければ国家存亡にかかわる

新美由加キャスター:
日本は自力の抑止力をどの程度持つべきか。自民党が政府に提出した新たな国家安全保障戦略に向けた提言には、日本への武力攻撃に対する反撃能力も含まれている。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
今攻撃されるなら、一番蓋然性が高いのは弾道ミサイル等の攻撃。撃たせないためには移動式の発射台、保管場所、燃料、レーダー、指揮通信を遮断する、あるいは命令する司令部を食い止めること。そのために反撃能力を持つべきという提言。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
反撃能力というとき、「必要最小限」という言葉もついてくるのでは。必要最小限や専守防衛という言葉や考え方が日本国の防衛政策の根底にあると思うが、いずれきちんと見直し、憲法改正につながる話をしなければ足りない。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
必要最小限は「そのときの科学技術や国際情勢に応じて決まるもの」という定義。この言葉は何とかならないのかと相当議論したが、今までの政府が積み上げてきた憲法の解釈や憲法の要件に照らすと、変えるなら憲法解釈や過去の国会答弁まで変えなければいけない。「これでよし」というより「まずこれでいこう」というもの。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
今回のウクライナの戦争でみんな目覚めた。国連が機能しないことは前からわかっていたが、核不拡散条約も粉々に砕け散った。自分を守る努力をしないと国家存亡にかかわる。ドイツは一夜にして変わった。日本も一夜にして変わらなければおかしい。屁理屈に屁理屈を重ねるような憲法解釈をしなければ立ち行かない状態を断ち切ることを考えなければいけない。それほど大きな世界史における変化が今起きている。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
防衛大臣をさせていただき思うのは、この国は「国民を守るためにこういうことをさせてくれ」とお願いをして、「いや、そんなことしなくていい」と言われる国。政策を打つ前に、憲法のここに引っかかるからと、どんどん複雑にいろんな国会答弁の言い訳が積み重なる。最終的に憲法が変わらないと、ストレートに議論ができない。

櫻井よしこ氏「大事なのは、あなたも考えるということ」

新美由加キャスター:
視聴者の方からのメール。「万が一の際の核戦争に備える覚悟を決めろということか。人口比普及率で0.02%しか核シェルターが整備されていないのに、本当に核戦争になっても日本国民は生き延びられるか」。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会長:
核攻撃される可能性がゼロではないなら、備えることがとても大切。今回ウクライナが持ちこたえているひとつの理由は、旧ソ連時代のシェルターが生きていること。この議論は必要。地下鉄や大規模な地下街、建物の地下施設など、今あるものをどう使えるかという検証からやるべき。

櫻井よしこ 国家基本問題研究所理事長:
今まで議論する必要もない時代が続いたが、日本を取り巻く国際社会の状況を見ると、今は議論が必要。ロシア、中国、北朝鮮という核を持つ独裁体制の国々に囲まれている私たちは、ウクライナより危険。究極のことまで考え、できる準備をしましょうということ。この危機に大事なことは、あなたも考えるということです。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月31日放送

記事 152 BSフジLIVE プライムニュース

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