ロシア、中国、北朝鮮などが国際秩序を脅かしている重要な局面で、アメリカのバイデン大統領が日本を訪問し、首脳会談を行った。

BSフジLIVE「プライムニュース」では自民党の新藤義孝衆院議員、産経新聞の古森義久氏、佐々江健一郎元駐米大使を迎えて日米首脳会談と共同記者会見の中身を分析し、あるべき日米同盟の形について徹底議論した。

新しい国際秩序に向けた同盟アピールが、日米双方にとって重要

新藤義孝 自民党政調会長代理
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反町理キャスター:
バイデン氏がアメリカの大統領となり、初めて日本と韓国を訪問。今回のアジア歴訪の最大の狙いは何だったか。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
ウクライナ同様、国連が無力化する中でアジアの安全保障でも力による現状変更が起きている。今回はいわゆる拡大抑止の再確認、アメリカはアジアにも目を向けており、アジアの安定が国際平和秩序に非常に重要だという大きなメッセージを出すこと。日本としてもしっかりとアピールする大事な場となったのでは。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
バイデン大統領は就任後、中国は第一の競合相手で、アメリカの世界戦略で最大の懸念を払うべき対象国だと言いながら、アジアに関心を多く払っていないという批判がある。遅れて弱くなった部分を埋めなければいけない。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
ロシア、中国の脅威、北朝鮮の問題にアメリカは自分たちだけでは対応できないと。アジア太平洋では日本と韓国という同盟国との関係、我々の強さはここにあるとして正面から向き合うことが最大の眼目。

バイデン アメリカ合衆国大統領(左)、岸田文雄 内閣総理大臣

反町理キャスター:
一方、迎える日本側としてしっかり打ち出すべき、確認すべき最大のことは。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
今崩れている国際秩序を立て直すために日米はともに立ち向かう。ヨーロッパとアジア太平洋の話は不可分だという話を固め、同盟関係の強さを示すこと。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
日米同盟の堅持とアメリカの日本防衛の公約を、実効性を持たせて再確認。それが日本にとっては一番の関心事であり、利益なのでは。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
新しい国際秩序を構築するために、アメリカがパートナーとして日本を非常に重要視していることが再確認できた。また今、私たちがそういう外交的な動きをしていることが如実に出てきている。

大統領発言はアメリカの対中国「あいまい戦略」脱却を意味するのか

新美由加キャスター:
日米首脳会談でバイデン大統領は「アメリカは台湾への軍事介入をする」と。アジアの安全保障についてより踏み込んだ議論が行われた?

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
中国、北朝鮮、ロシアの問題を相当深く話し合ったと思う。その中で一つ、非常に大きな調整をしたのが台湾の問題ではないかと想像する。

反町理キャスター:
中国が軍事侵攻した場合に台湾への軍事介入をするのかという質問に対して「そうした約束をした」とバイデン大統領。アメリカの従来のいわゆる「あいまい戦略」からの脱却か。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
まあそう断定していいのかどうか。口が滑ったのか、熟考の上で言ったのか。ただ、バイデン大統領が警告を発したのなら意味あること。ホワイトハウスは従来の基本的立場は変わりないと言っており、一見矛盾しているようだがしていないと思う。基本的には現状維持がいいと言っている。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
バイデン大統領は台湾について同様のことを今回以前に3回言って、そのたびにホワイトハウスや国防総省の報道官が、これまでの政策は変わらないと言っている。バイデン大統領の失言というか、アメリカ政府の政策を意図的または偶然に、忘れたか無視したかの形で自分の意見を言っていると私は解釈する。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
今回の共同声明で、従来の「台湾海峡の平和と安定の重要性を認識する」に「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である」という言葉が加わっている。事態が起これば台湾関係法に基づいて軍事的手段を提供するのはこれまでの約束だが、起こらないようにアジアの安定をみんなでつくろうと言っている。特別なことではない。

バイデン アメリカ合衆国大統領

反町理キャスター:
台湾有事は日本有事と考えると、今回のバイデン大統領の発言は、有事の際に日本は何をすべきかを突きつけている印象。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
あり得ることとして準備することが重要。だが、備えることイコール戦争、武力紛争という印象は間違い。あくまでも抑止力。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
もし中国が台湾を侵攻するハイリスクな行動をとるなら、台湾を守るためにはその周りのエリアを押さえる必要があり、必ず日本に侵攻が来る。その事態を起こさないために、私たちは外交、経済、加えて安全保障上の対応をしていかざるを得ない状態。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
習近平主席はロシアの失敗から様々な教訓を得た。最大の教訓は、核の威嚇は効くかもしれないこと。台湾有事はあり得る。では日本はどうするか。今回の岸田首相の声明も、これまでの基本方針を守っていくというだけで何も言っていない。国難としての大きな課題があることは認識すべき。

反町理キャスター:
バイデン大統領は一方で、対中制裁関税は前政権のトランプ大統領が決めたものであり、帰国したら財務長官と話し合うと発言し、引き下げる可能性を示唆。アメとムチと見るべきか。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
同盟国と抑止力を頑張るのと同時に、対話も進めなければいけない。本格的な米中交渉の一環、その呼び水として関税を下げることも大いにあり得る。矛盾していない。

反町理キャスター:
すると日本も両面外交をすべきか。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
そう思う。アメリカはあくまでも中国との戦争を防止するために抑止力を高め、同盟国との協力を強化している。ある程度の力や外交を背景に交渉する考えで、中国に対しても協力という概念を捨てていない。

制度上も国民感情でも、核抑止を認めることが日本の課題

新美由加キャスター:
日本の防衛費について。世論調査で、GDP比の2%以上に増やすべき、または2%以上でなくてよいが増やすべきだと答えた方が合わせて62.0%。岸田首相は「反撃攻撃を含めあらゆる選択肢を排除しない」とし、相当な防衛費の増額を表明。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
これはアメリカでなく我々のためになるからという性格のもので、アメリカはそれを歓迎し評価しているということ。反対する人の数はかなり減った。GDP比2%という数字にはまだ議論があるようだが、数字も中身も両方議論することが必要。

反町理キャスター:
首脳会談を受け、安倍元首相が「抜本的ということは、補正予算を合わせておそらく6兆円後半という意味では」と発言。日本の防衛費が今後急速に増加していく可能性について。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
安全保障上必要な装備は着実に増やし、加えて宇宙関係の予算など新しい対処も根本的に改めなければ、世界で太刀打ちできなくなる恐れがある。防衛大綱も見直す。防衛力とは1年間の予算を急に増やせば向上するのではない。装備を整え、使いこなす準備にも時間がかかる。明日や来年に起きることの先にきちんと備えておくこと。

反町理キャスター:
拡大抑止について。アメリカの核の傘のもと日本は安全を保障されているが、核を本当に使用するかという極限状況でアメリカが日本にも判断を求めてくるとき、日本は準備ができているかどうか。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
日本の準備は制度的にも国民感情的にも全然できていない。最悪の場合に核戦争を防ぐための核兵器の威力を認めなければいけないということが、非常に大きな課題。

反町理キャスター:
首脳会談で発表された「拡大抑止の強化に向けて閣僚を含め緊密に協議をしていく」。ここで話し合うべき内容は。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
拡大抑止協議は今までも行われており、突然出てきた話ではない。今の問題は、非核三原則がある中で日本として何を努力すべきか。それは基本的にはアメリカの核の抑止力を強化すること。どこまで我々は便宜を図るべきなのか。

反町理キャスター:
新藤さん、日本政府はアメリカの核使用に関してどのくらいコミットできるか。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
我が国は唯一の被爆国で、核を絶対使わせないことを国是としてやってきている。極限まで使わせないようにする努力を続けるのが大前提。拡大抑止の強化とは、日米で核の使用をめぐる緊密な協議を行うことではない。核だけではなく、あらゆる手段を用いて行うのが根本。しかし相手の意思まではコントロールしきれないから、起きないかどうかの断言はできない。

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員:
現に核兵器を使うぞと言っている国がある。抑止とは相手の意思を抑えることでは?

新藤義孝 自民党政調会長代理:
相手が核を使わないと判断せざるを得ないように持っていくことが大事。あらゆる防衛体系を検討し、総合的な力で努力していくことが政治の役目だと申し上げている。

佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長 元駐米大使:
今の軍拡ムードはしばらく続く。日本は核も含め、必要な抑止力を整えておくことに問題意識がある。一方、軍拡の後には軍備管理・軍縮交渉が来なければいけない。そのための外交努力は必要で、この2つは対でなければいけない。

新藤義孝 自民党政調会長代理:
その通り。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月23日放送

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