「うわぁ、本当にやってきたんだなぁ」。
そんな呑気なことを中国到着直後の機内に入ってきた全身防護服の中国の係官を見て思ったていたが、この後が大変だった。

到着直後に機内に入ってきた全身防護服の係官
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出発前から始まっている…厳格な水際対策

日本では感染者数が下げ止まりするなか、6月10日からパッケージツアーに限るものの外国人観光客の受け入れ再開が決まるなど、経済の回復を図っている。自治体の県民割も好評だ。

そんな中、上海の事実上のロックダウンや首都北京の行動制限のニュースを見ていたためか、日本の日常生活でほぼ見かけなくなった「全身防護服」を見て、「中国っぽい」と感じてしまった。

今回、私はFNN北京支局に赴任するため、2022年5月25日に成田空港から沿海部山東省・青島新国際空港に向けて飛び立った。厳しいゼロコロナ政策と水際対策が続く中国へは今も北京への直行便はなく、別の都市で2週間の隔離を経てからでないと足を踏み入れる事すら許されない。

そんな中国が定める厳格な水際対策は、渡航前の日本にいる時からすでに始まっていた。私が渡航したタイミングでは、1週間前から3回のPCR検査を受け、陰性証明が必要だった。このPCR検査は、中国政府指定の医療機関で受診しなければならないうえ、2回目と3回目は異なる医療機関の陰性証明書が求められた。さらに驚いたのはその価格。今では自治体の「無料PCR検査」を街中でよく見かけるが、今回のPCR検査の費用は1回あたり大体2〜4万円もかかるのだ。「一体なぜ」と疑問を感じずにはいられなかった。

中国政府指定の医療機関のPCR検査陰性証明書(一部加工)

そして、3回分の陰性証明を取得した後、中国政府が定める「健康コード」を渡航前に申請・取得する必要がある。今回サポートを受けた旅行業者からは、この申請に手こずり、予約していた便に搭乗できなかった人もいたと聞いた。

搭乗の前日。「健康コード」はウェブ申請のため、間違いのないよう各種データを慎重に入力し、陰性証明書もアップロードしていく。誤りがあれば許可が下りないというが、2時間後に無事渡航の許可が下りてホッと胸を撫で下ろした。

なお、2022年5月30日以降の入国は、よりオミクロン株に対応した水際対策に変更となっている。搭乗7日前のPCR検査は無くなったものの、搭乗2日前に1回目のPCR検査、出発前24時間以内の2回目のPCR検査が必要だ。さらに健康コードを申請の上、出発前12時間以内の迅速な抗原検査も必要となる。こうした方針の変化にも対応しなければならないので、依然中国入国のハードルは高い。

相次ぐ消毒 入国審査まで3時間も

成田空港から青島新国際空港は約2時間半の空の旅だったが、到着してからも大変だった。通常の入国審査や税関に提出する書類のほかに、現在の健康状態について、ワクチン接種の有無、中国での緊急連絡先など、数種類の書類の記入を求められた。

到着後も客室乗務員から「10人ずつ降りてもらいます」とアナウンスがあり、機内で約1時間も待つ羽目になった。

ようやく降りることができると、まずは手荷物の消毒から始まる。以前は、消毒液をベタベタになるまで噴射されると聞いていたが、今回は青白い光を照射する機械に荷物を通した。これはおそらく紫外線のようなものでウイルスを殺菌しているとみれるが、果たして効果があるのだろうか。中国の係官は感染対策の一環なのか、その様子を見ているだけで乗客の荷物を運ぶのを手伝わないため、どうしても時間がかかってしまう。振り返れば後ろには行列ができている。

到着してすぐに手荷物を消毒する機械へ通す

その後は、複数箇所で体温チェックが行われ、手の消毒、書類チェックを経て、ようやくPCR検査に至る。記入した提出書類を係官がチェックするたびに、紙にも消毒液を吹きかけるので、最後はよれよれになっていた。

PCR検査では、初めて口腔と鼻腔の両方から検体を採取された。日本の鼻腔の検査では、「痛いですから我慢してくださいね」と気を遣って対応してくれた。中国で受けた初の検査は手慣れたもので、一撃必殺とばかりに鼻の奥までぐさりと綿棒を突き刺し回し、中国語で「1(イー)・2(アル)・3(サン)・4(ス-)・5(ウ-)」と数えた後、検体を採取された。口に広がる血の味……高校時代にラグビー部だったため、痛みには強い方だと思っていたが、どうやら間違っていたと気付かされた。その日は鼻の痛みだけでなく、頭痛も出てくるほどだった。

PCR検査のための個室が並ぶ

正直なところ、出国直前に陰性証明を取得しているにも関わらず、入国直後のPCR検査にどこまで意味があるのかと思うものの、徹底ぶりには感心する。

こうした一連の作業を終わると、ようやく入国審査となり、無事に入国スタンプを押してもらえる。その後受け取ったスーツケースは、やはり消毒液で濡れていた。

短縮されたものの“隔離期間は2週間”

青島で入国した日本人はみな、バスで約1時間かけて専用の隔離ホテルへと連れて行かれる。場所はオーシャンビューの部屋もあるリゾートホテルだ。

ホテル到着時も、スーツケースには再び消毒を噴射。私も消毒、手袋、足カバー、マスク、キャップを着用して、ようやくホテル内へ。

ホテルには日本語が堪能な通訳が複数人おり、受付もスムーズだった。その後、部屋へと案内された。私の部屋はオーシャビューではなく、街中を望む部屋だったが、車や道行く人の様子が見られるので特に不満はなかった。

ホテル到着 バス車内で求められるマスクや手袋の着用

ここでの隔離期間は事前に「2週間」と聞いていたが、ホテルのロビーで「隔離期間は3週間」と言われた。部屋に置かれていた案内にも「隔離期間は3週間」と明示されていた。

2週間と臨んだ隔離が3週間に延びたと思った時は、「これが中国か!」と焦った。しかしその後、宿泊者とホテルの通訳者をいれた中国版LINE「ウィーチャット」でのグループが作成され、再度確認すると「隔離期間は2週間で大丈夫」と訂正を受け、一安心した。

今回の赴任では妻も同行しているが、隔離5日目に行なわれるPCR検査で2人とも陰性が証明された後ではない限り、同部屋になることは許されないという徹底ぶりだ。厳しい規制が続く北京や上海の現状を見ると、こうした今も続く中国の厳格な水際対策をもってしても、オミクロン株の蔓延を防ぐことはできなかったということだろうか。

「ウィズ・コロナ」で動き出している世界と、「ゼロコロナ」を堅持する中国。先月の中国の経済指標が大きく失速したことが明らかになる中、習近平指導部が今後どのような対応とっていくのか注視していきたい。

そういえば、中国隔離生活の初夜に届けられた食事は、サラダとスープと一枚のピザだった。思わず「なんで!」と独り言を口走っていた。個人的には、中華っぽいものを期待していたので少し残念だったが、これはこれで忘れられない、中国での初めての食事となった。

中国での初めての食事はピザ

【執筆:FNN北京支局 葛西友久】

葛西友久
葛西友久

FNN北京支局特派員。東海テレビ報道部で行政、経済、ドキュメンタリー制作、愛知県警キャップ、企画デスクなどを担当。現在はフジテレビ国際取材部からFNN北京支局に赴任。

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