観光船「KAZU I」の2度目の吊り上げ作業が5月26日に行われ、午後7時前に船体が海面に姿を現した。

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一部情報によると、左側の船底に3つの穴が開いている。船体の引き揚げ作業が完了すれば、事故原因の究明が本格的に始まることになる。

2度目の吊り上げ作業

午後4時半近くの北海道知床半島沖。知床遊覧船の「KAZU I」は、作業員が待つ海面近くに上がってきていなかった。

石井祐里枝アナウンサー(北海道文化放送):
第1管区海上保安部によりますと、午後4時前後に引き上げできるとみられていた作業は、まだだいぶかかるということです。慎重に作業が進められているようです。

26日朝の知床半島、斜里町のオシンコシンの滝の沖合にうっすらと見えたのが引き揚げに当たる「海進」などの作業船だ。

24日、引き上げに向けて曳航中に再び沈没した観光船「KAZU I」。海底182メートルからの2度目の吊り上げ作業が行われた。

24日の作業では、船体を吊っていた5本の「スリング」と呼ばれるベルトのうち、後ろの2本が切れて落下した。海上保安庁は原因として「船体との摩擦によりベルトが切断されたとみられる」との見解を示した。

24日の作業では後ろ2本のスリングが切れ船体が落下(イメージ)
24日の作業では後ろ2本のスリングが切れ船体が落下(イメージ)

そこで今回は、より太く強度の高いスリングを採用。潜水士による飽和潜水はせず、無人潜水機「ROV」を使い、水深182メートルの海底に沈む船体にスリングを取り付けた。

ROVを使い強度の高い2本のスリングを取り付け(イメージ)
ROVを使い強度の高い2本のスリングを取り付け(イメージ)

前回は5本のスリングをかけて失敗したことから、今回は強度の高いスリング2本でしっかりと荷重をかけて落下を防ぐ方式に変更した。

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「横抱き」で船体を固定

そして始まった2度目の吊り上げ作業。前回も船体の固定に使っていた黄色いフレームに作業員がワイヤーを取り付け、海へと下ろす準備が始まった。

午前9時ごろ、黄色いフレームがワイヤーによって引き揚げられ、ゆっくりと海面に近付き、海中に入った。

この後、無人潜水機を使い、海中で黄色いフレームとスリングを固定。その上で、抱き上げるように「KAZU I」を海面まで吊り上げる。今回は落下を防ぐため、作業船「海進」の横に船体を固定する「横抱き」という方法がとられることになった。

横抱き(イメージ)
横抱き(イメージ)

ところが……。

斉藤健太記者(北海道文化放送):
スリングの取り付け位置を修正しているということで、進行に遅れが出ています。

作業を終え、一度船に上げられた無人潜水機を再び投入するなどして作業には遅れが出た。

そして午後3時ごろ、ようやく「KAZU I」の吊り上げ作業が始まったとの情報が入った。しかし、ここからの作業も大幅に遅れた。引き揚げ作業開始から2時間30分が経過しても、まだ「KAZU I」の姿上空からとらえることはできなかった。

33日ぶり「KAZU I」が海面に浮上

そして午後6時45分すぎ、船影が見えはじめ、午後7時前に船体が海面に浮上した。

船体を公開することで捜査に支障が出ないよう、吊り上げられた「KAZU I」には、シートを掛ける作業が行われるとみられる。

この後、「KAZU I」を固定した作業船「海進」は錨を降ろすことができる浅い海域まで移動しクレーンで船体を船の上に引き上げる。作業船「海進」は27日午前にも網走港に入港。「KAZU I」は船内の水を抜いた後、陸揚げされる予定だ。

(「イット!」5月26日放送より)

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