「2拠点生活をしていて、オフィスは無いですね。私生活と仕事の区切りはあまりないかもしれないです」

こう話すのは株式会社HAAの代表・池田佳乃子さん。湯の花由来の成分を使用した「限りなく天然温泉に近い入浴剤」を販売し、別府の湯治文化を広めていこうとしている。

株式会社HAAの代表の池田佳乃子さん
株式会社HAAの代表の池田佳乃子さん
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地域貢献する人たちに刺激を受け会社設立

そんな池田さんは、故郷である大分県別府市と東京の2拠点生活をしている。こうした新しいライフスタイルを始めたのは2018年から。その2年後の取材時には、次のように話していた。

池田佳乃子さん(2020年取材時):
もともと住んでいた街で自分のスキルを活かしたいと思って、こっちで過ごすことを決めました。もっと別府に恩返しできるようなことをやっていきたいと思っています

当時は空き家の再生事業などに取り組み、築約90年の旅館をコワーキングスペースにするプロジェクトを手がけた。池田さんは東京で勤めていた広告代理店での仕事を通じて、別府に恩返しをという思いが芽生えていったという。

池田佳乃子さん:
ふるさと納税のマーケティングに関わったり、途上国のために活動する日本人の方を取材していたりしたんですね。その時に地域のために自分自身のスキルで貢献している人たちにすごく刺激を受けて、私もやりたいなと思いました

そうして池田さんが2021年に立ち上げたのがHAA。会社のミッションとして「日常に、深呼吸を届ける」ことを掲げ、仕事に励んでいる。

むし湯でオンライン会議も 別府の魅力を届ける

別府市での拠点は鉄輪。鉄の輪と書いて「かんなわ」と読む。湯煙が立ち上る通りの一角で、池田さんはパソコンを操作していた。

池田佳乃子さん:
細かなスケジュールを組んでもらえると私も確認しやすいのでお願いします

外で行っていたのはオンライン会議。

決まった職場を持たない池田さんは、屋内のコワーキングスペースで仕事をすることも多いそうだが、この日は周囲に迷惑をかけないよう、外に出て打ち合わせをしてた。時には温泉の街・別府ならではの場所でオンライン会議をするそうで…。

池田佳乃子さん:
空いていたら無料のむし湯で”足むし”をしながら作業したりもしますね

会社のSNSで発信する写真撮影では、ミッションの「日常に、深呼吸を届ける」をイメージ。商品の入浴剤が出てこない写真も多いが、その理由は?

池田佳乃子さん:
HAAというブランドの背景など、商品だけじゃないものを伝えたいなと思っています。そうすることで、写真を見た方が別府に行きたいとか、湯治文化はこういうことなんだと知ってもらえたらいいなと思っています

「好きなことを」夫の勧めで…熱意に地元も応援

池田さんのイメージを写し出すのは友人のヒョンさんだ。普段は会社員で、カメラマンは副業。ヒョンさんは夫婦で全国各地を旅しながら現地で仕事を行う「ワ―ケーション」を実践している。池田さんについて聞いてみると…。

ヒョンさん:
彼女からいろいろ話を聞くと、別府への愛がすごい。別府の湯治文化を世界に伝える、そういった役目を担って大活躍していただきたいなと思っています

友人のヒョンさん SNSで発信するための写真撮影を担当
友人のヒョンさん SNSで発信するための写真撮影を担当

別府を盛り上げようと奮闘する池田さんに地元の人たちもエールを送る。

鉄輪の宿のおかみさん:
魅力は可愛らしさですよね、裏表も無い。会社も起業してよく頑張っていると思います

東京にある池田さんの生活拠点には雑貨店も併設されていて、HAAの入浴剤や大分の雑貨などを紹介している。建築士の夫・航さんの仕事場も同じ場所にある。

航さん:
自分らしく生きている感じがすごくあるので、僕はうらやましいなと見ています

2拠点生活を始めたきっかけは夫・航さんの勧め
2拠点生活を始めたきっかけは夫・航さんの勧め

池田さんが別府と東京の2拠点生活を始めたのには、航さんの勧めがあった。

航さん:
忙しさとうまくいかないとかで、すごくすさんでいた時期があって。(別府に)行っちゃえばいいんじゃない?と軽いノリだったんですけど。会社を興したばかりなので、まずは自分の好きなことをやって、自分が好きなことを表現して生きてほしいなと思います

池田さんが別府で生活している間は、航さんとビデオ通話でコミュニケーションを取っていて、「同じ空間にはいないものの、寂しくはないです」と話す。

「凝り固まった価値観がほぐれる」欠点を上回る利点

航さんをはじめ周りのサポートを受け、別府と東京で活動する池田さん。そんな2拠点生活のメリットとは。

 2拠点生活のメリットについて語る池田さん
 2拠点生活のメリットについて語る池田さん

池田佳乃子さん:
東京だけだと知り合えない鉄輪のおかみさん、大学生や観光で来る方。そういう方々と話すことで、自分の凝り固まっていた価値観がすごくほぐれる感じがします。(以前は)固定観念の塊みたいな感じだったのですが、色々な考え方があるんだなと2拠点生活をしてから分かるようになりました

一方、2拠点生活のデメリットとして、家賃や移動費といったコストがかかることを挙げる。「安い航空券を探したりしてカバーしています」と語る池田さんが2拠点生活を続けるのには、デメリットを上回るメリットがあると考えているからだ。

池田佳乃子さん:
自分は別府の魅力を伝えたい思いが強いので、そのためにはどういう仕事や働き方をすればいいのだろうと考えて、今の形になっているのかなと思います。こういう暮らし方はまだまだ少ないと思いますが、暮らしと自分のやりたいことと仕事がうまく融合した形を皆さんに発信して、同じようにチャレンジしてくれる人が増えたらうれしいなと思います

(テレビ大分)

テレビ大分
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