新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、「嗅覚障害」が関心を集めている。新型コロナ以外の病気でも発症の恐れが潜み、完治が難しいケースもある。ただ近年、保険適用の治療法も開発されている。2022年4月に嗅覚専門外来を開設した病院で、症状と治療法を聞いた。

「においは全然しない」日常生活に支障

診察風景:
この辺りがにおいを感じる場所ですが、ポリープで埋まっていてしない

診察に訪れた元山泰司さん(71)は、26年前から嗅覚がほとんどない。嗅覚がなくなると日常生活の満足度は大きく下がり、また命の危険を感じる瞬間もある。

元山泰司さん:
においは全然しない。松茸を食べても、シイタケを食べているのか、それともシメジを食べているのかわからない。ガスやガソリンが漏れていた時も、においがしないので気づかず、身の危険を感じる

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においは空気と一緒に鼻の奥を通り、鼻腔の天井部分にある嗅神経を刺激する。それが大脳へと伝わり、初めてにおいとして認知される。この過程のどこかに不具合が生じると、嗅覚障害を引き起こす。

ここで問題。嗅覚障害が現れる可能性があるのは、次のうちどれか? 

(1)花粉症 (2)副鼻腔炎 (3)認知症  

正解は(1)(2)(3)の全てだ。

鼻の粘膜が腫れたり、鼻づまりの症状が表れる「花粉症」や「副鼻腔炎」も嗅覚障害の原因の一つ。比較的早く治るものもあるが、中には原因不明の難病に指定されていたりするものもある。また、認知症の初期症状にも表れる深刻な嗅覚障害も存在する。

手術してもポリープ再発 難病指定の副鼻腔炎

早期発見と治療につなげるため、福井市の福井赤十字病院は4月、県内初の専門外来「嗅覚外来」を開設した。検査では異なるにおいや、濃度を8段階に分けた試薬を患者が嗅ぎ分け、症状を特定していく。

大澤陽子医師(耳鼻咽喉科):
花粉症の方や何十年も前から、においがしない方もいる。認知症やアルツハイマーなど、中枢性の認識不足による嗅覚障害の方も相談にくる。残念ながら、中枢性の場合は対策のしようがないので諦めていただいているのが現状。ただ、自分がどういうタイプの嗅覚障害なのか把握できるだけでも満足して帰る方が多い

専門外来を開設した理由については。

大澤陽子医師(耳鼻咽喉科):
副鼻腔炎の患者に嗅覚障害の患者が多い。2021年、難治性や難病指定にもなっている「好酸球性副鼻腔炎」に抗体療法が保険適用された。治る可能性のある患者を見つけて、治療につなげられるのではと思い開設した

難病指定の「好酸球性副鼻腔炎」は両側の鼻の中に多発性ポリープができ、手術をしてもすぐに再発する慢性副鼻腔炎だ。中等症、重症の患者は国内に約2万人いるとされる。

元山さんもこの病に苦しめられている。これまでに3回手術を受けたが、嗅覚が完全に戻ることはなかった。

元山泰司さん:
痛い手術はもう嫌。何か治療法があるのでは

期待される治療法の一つに、手術をせず注射で治療する抗体療法がある。2年前から保険適用となった。

大澤陽子医師(耳鼻咽喉科):
こんなに嗅覚で困っている方が多いと思わなかった。治ると思わず諦めている患者もいる。中には治る方もいるので、嗅覚外来を受診してほしい

(福井テレビ)

福井テレビ
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