福井県大野市の「勝原(かどはら)花桃公園」。ハナモモの名所として近年知名度が高まり、毎年4月には大勢の観光客が集まるようになった。一方で、地元住民は路上駐車や交通渋滞などに悩まされるようになった。
2022年、マナー順守を呼びかける地元住民の取り組みを取材した。

桃源郷から目を外すと… 注意の看板やカラーコーン

大野市西勝原にある「勝原花桃公園」は、「山あいの桃源郷」として県内外から注目されている。
40年ほど前に地元住民がハナモモの木を植え始め、今では約150本がピンクや赤、白といった色とりどりの花を咲かせる。周囲にはチューリップや菜の花も咲き誇り、その光景はまさに“桃源郷”だ。

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15世帯ほどの小さな集落に出現する理想郷を一目見ようと、毎年4月になると大勢の観光客が訪れるようなった。

ただ、桃源郷から目を外し隣接する道路を見ると、そこにはユートピアとは程遠い現実の世界が広がる。赤と黄色の看板には「近隣住民の迷惑になるので路上駐車はご遠慮ください」の文字が。

道路の両脇には「駐車禁止」と書かれたカラーコーンが、2メートルおきに約1km並ぶ。車を誘導するための警備員も配置した。この2年ほど、地元住民は路上駐車などのマナー違反に頭を悩ませてきたのだ。

奥まで設置されているカラーコーン
奥まで設置されているカラーコーン

地元公民館の清水宏樹館長:
道路は路上駐車や駐車場を探す車で大変混雑した。住民は買い物にも行けないほど困っていた

コロナ対策でさらに人流増加の悪循環…地元住民は買い物にも行けず

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、感染防止のため臨時駐車場と公園の間を走らせていたシャトルバスを中止した。ただ、人流はさらに増加した。

三密を避けようと、屋外や地方が注目され、花見客が増加。家族以外との接触を避けるため、花見客は電車ではなく自家用車で訪れ、道路は一気に大混雑となった。2021年は路上駐車や渋滞で約200台の車が立ち往生した。

2021年の様子。約200台の車が立ち往生
2021年の様子。約200台の車が立ち往生

住民団体が対策に乗り出す 注意とJR利用で混雑回避

2022年は渋滞と混雑を解消しようと、住民団体「五箇地区むらづくり推進協議会」が迷惑駐車の防止対策に乗り出した。それが注意を呼び掛ける看板であり、カラーコーンだ。
警備員は2021年まで土日のみだったが、2022年は平日も含め毎日立ってもらうことにした。このような対策を続けたことで、2022年は大きな混雑は避けられたという。

迷惑駐車が減少したもう1つの理由は、近くを通るJR越美北線の利用が増えたことだ。ここ数年の呼びかけが届き、車ではなく列車で訪れる人が増えている。
また越美北線は乗客が減少し、存続があやぶまれているため、この路線を残そうと地元を中心に積極的な利用が進んでいるという背景もある。

公園内には越美北線の列車をモチーフにした木製の募金箱がお目見えした。地元住民が設置し、存続を後押ししている。

地元公民館の清水宏樹館長:
去年より乗客は多くなったのではないか。午前と午後に概ね1本ずつ便があり、列車で来れば駐車場を探す心配もない。ハナモモも楽しんで時刻表通りに帰ってもらえると思う

ただ全てが解決されたわけではない。路上駐車によるトラブルは減ったが、ハナモモを撮影する人が地元住民の生活道路を陣取るという問題はいまだに残っている。

住民がつくり上げた山あいの桃源郷。マナーを守って楽しんでほしいというのが地元の思いだ。

(福井テレビ)

福井テレビ
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