”院内救命士”は、”救急救命士”の資格を持っていて病院内で働く人のことを言う。
”院内救命士”って知っていますか？
救急救命士は、これまで救急現場から病院到着までの間に限り、医師の指示を受けながら「気管挿管」「薬剤投与」「点滴を行うための静脈路確保」など特定の医療行為を行うことができた。
それが2021年10月の救急救命士法改正により、特定の医療行為を行える範囲が「救急現場から、患者が入院、もしくは帰宅するまで」に拡大されたのだ。
これを受け、救急救命士は救急車の中だけでなく、病院内でも患者の命を救うために医師や看護師のサポートを行えるようになった。
慢性的な医師不足、看護師不足の病院。この春、石川県内の病院に院内救命士の第一号が誕生した。彼の思い、そして勤務初日の初仕事に密着した。
金沢大学附属病院に…県内初の”院内救命士”誕生
4月１日、金沢大学附属病院・救急科。
岡島教授：
院内救命士として働く、奥池君です！
奥池風輝さん：
院内救命士として採用して頂きました奥池です。宜しくお願いします！
奥池風輝さん（21）。
3月に七尾市の医療福祉専門学校を卒業し、県内初の「院内救命士」として新卒採用された。
岡島教授：
「こんな患者さん来ました！という時にどうやって動くかというのをシミュレーションしていこうと思っているんで、分からない事や不安なことは、速攻俺に聞いて
救命救急分野の強化進める金沢大学附属病院
院内救命士の誕生は、病院にとっても念願だった。
金沢大学附属病院は、2021年から岡島正樹教授を中心に「救命救急分野の強化」を掲げ、年間の救急車受け入れ台数が前年の約2倍に増えるなど目覚ましい実績を上げてきた。
3月末には国内最新鋭のドクターカーも導入するなど更なる充実を図っているが、問題は救急医療に携わる医師や看護師の不足。
それをカバーすると期待されているのが、2021年の救急救命士法改正だった。
蒲田病院長：
（救急救命士は）今までは救急車の中でしか（医療）処置が行えなかったのが、法律が変わって院内でも医師の指導の下にできるようになったので、「あ、これはいい」と。真面目で熱心な方に来て頂いたので、期待しています
救急科のメンバーも、奥池さんを歓迎している。
上野看護師：
救急（医療）をする時は、「人数がいればいるほど正しい」というか、人が多ければ多いほどできることが増えるので、その中のメンバーの一人に彼が加わってくれるというのは非常に大きいというふうに思っています。本当に楽しみですね
初出勤の奥池さんに試練が…
そんな奥池さんの初出勤。
軽い仕事の説明のみで終わりかと思いきや…
野田医師：
午前10時に向こうを出発して、こちらにヘリで来るという算段で進んでいると聞いたんですけど…
脳出血の患者が、ドクターヘリで病院に来ることになったのだ。
初仕事が、まさかの大仕事に…
さらに…
ドクターヘリの到着と同じ頃、救急車も到着。
2室ある処置室が一気に埋まってまった。
奥池さんが任されたのは、学生の頃から得意だった心電図の解析だ。
岡島教授：
（心電図を）ベストな状態で取るっていうのはなかなか救急ではないから…ある程度自分で判断できると、これだったら判断できると思ったらそれでいい
奥池さんは、子どもの頃のある経験から、ずっと「救命」への憧れを抱いていた。
奥池さん：
母親が看護師をしていて、昔、習い事をしていた時にスタジオで倒れた方がいらっしゃって、けいれんを起こしていたんですけど、それに対して救急車が到着するまでの間、気道確保だったり治療を行っていたのを見て、（母が）「カッコいいな」という風に思いました
選んだのは、母と同じ命を救う仕事。
約１時間後、ようやく容態が落ち着いた。
初仕事を終えた、奥池さんは…
奥池さん：
ビックリしました。
ドクターヘリが来るのはまれなことなので、それがまさか初日に…自分の手に命の重みがかかるということをしっかり自覚して、これから務めていきたいと思います
岡島教授：
非常に頼もしいです。失敗は全然恐れるなと。どんどん失敗してくれと、全部こっちでカバーすると。そういうチームなんで
県内初の院内救命士、奥池風輝さん。
いつか大きな花を咲かせようと、きょうも病院で患者の命を救うため、戦っている。
（石川テレビ）
