謎の女性の正体は…?情報当局も把握できず
金日成主席の生誕110年を祝う市民パレードに臨むため、金日成広場を訪れた金正恩総書記の後ろに、見慣れない女性の姿(赤色の円で囲った人物)が確認できる。
年齢は30〜40代、眼鏡をかけ、スーツのジャケットにはブローチ、手には大きめの黒っぽいバッグを下げている。北朝鮮の金正恩総書記の随行員として新たに登場したこの女性は、一体誰なのか…。

金総書記の随行員と言えば、かつては妹の金与正氏が務め、現在はモランボン楽団の歌手だった玄松月氏が担当している。金総書記と常に行動を共にする重要なポジションだ。それだけに、謎の女性の正体に注目が集まっている。
女性の姿が公式席上で確認されたのは、2月末に開かれた第2回初級党書記大会が初めてと見られている。北朝鮮メディアが放映した映像では、金総書記が舞台の上で演説する際に、女性が原稿のファイルを手渡す姿が捉えられていた。

この女性はその後も、4月12日に平壌ソンシン·ソンファ地区の1万世帯住宅の竣工式、14日に普通川沿いの高級住宅区の竣工式など、金総書記が出席した行事に相次いで姿を見せた。


4月15日に平壌の金日成広場で開かれた金日成主席の生誕110年記念行事の時も、入場の際や、ひな壇の上で移動する金総書記の後ろを歩いている姿が捉えられており、女性が金総書記の随行員として完全に定着したことが示された。
同じ随行員の玄松月氏が金総書記に動線を示す役割をしているのに対し、女性は大きなハンドバッグを手にして動いていることから、通信機器や医薬品など金総書記が必要とする品を持ち歩いている可能性があると見られている。
この女性の登場後、妹の金与正氏の随行頻度が減っており、与正氏の代わりとなる役割を担っているのではないか、との見方も出ている。
金日成バッジせず…金総書記の異母姉「金雪松」氏?
特に注目されるのはこの女性が、金日成主席や金正日総書記の肖像画が描かれた「肖像徽章」と呼ばれるバッジを付けていないことだ。北朝鮮メディアで報じられた彼女の写真や映像には、「肖像徽章」をつけた姿は確認されていない。

北朝鮮でこのバッジを付けずに公開の席上に立ったのは、金総書記と李雪主夫人だけであり、「白頭の血統」である妹の与正氏ですら公式の席では必ずバッジを着用している。それだけに、彼女が特別な身分、即ち金一族の一員なのではないか、との指摘も浮上している。
北朝鮮専門サイト「NKニュース」は、この女性が金総書記の異母姉・金雪松氏である可能性があると報じた。金雪松氏は、金総書記の父・金正日氏とかつての妻・金英淑氏の間に生まれた娘で、金総書記よりおよそ10歳年上とされる。
彼女の存在は謎に包まれているが、一部の脱北者によれば彼女は党内の重要な地位で裏方として働いているという。
今のところ、韓国の情報当局や専門家もこの人物が誰なのか特定できずにいる。北朝鮮メディアは金総書記の後継当初、夫人の名前を報じるなど、これまでも主要な随行員の身元を明らかにしている。今後、この女性の名前がメディアを通じて明かされるのか、注目される。
【執筆:フジテレビ客員解説委員 鴨下ひろみ】