雨が降った後、自転車のサドルが濡れていて、対処に困った――。
自転車に乗る人であれば、こういった事態に何度も直面しているのではないだろうか。持っていたタオルでサドルの水滴を拭くと、タオルが濡れ、そのタオルの置き場所に困る…。
解決策がない悩ましい問題だが、この問題を解決してくれる、“新たな形状のタオル”が発売され、反響を呼んでいる。
“新たな形状のタオル”は、吸水スポンジのパイオニアであるアイオン株式会社が開発した、筒状のタオル「STTA(スッタ) スティックタイプ」(2500円・税別)だ。

「STTA スティックタイプ」は、吸水力や排水力に優れた特殊なウレタンスポンジ「ソフラス」を使用しているため、濡れたものを拭いても、すぐ乾くのが特徴。
そして、絞るとすぐに吸水力が復活し、何度でも使用できる。

また、通常のタオルは、水を吸って濡れてしまうと、ポケットやバッグにしまいづらく、吸水力も落ちてしまうが、「STTA スティックタイプ」は、水を吸っていても表面はベタつかず、水滴が垂れてこないため、ポケットやバッグに入れても安心。
さらに、水を拭きとった後でも、折りたたまずにリュックのサイドポケットや自転車、ベビーカーなど、取り出しやすい所に挿して、携帯することができる。

大きさは直径4センチ・長さ15.5センチで重さは63g。
この“筒状のタオル”が2022年2月25日、「アイオン 楽天市場店」で先行発売され、初回の在庫が1週間で完売するなど、好調な売れ行きとなっている。
濡れた自転車のサドルを拭く以外にも、様々なシーンで使えそうだが、具体的にはどのようなシーンで使えばよいのだろうか?
また、継続して使っていくためにはお手入れ方法も重要だが、どのようにお手入れをすればよいのだろうか?
アイオンの担当者に“おすすめの使い方”と“お手入れ方法”を聞いた。
「ローラー形状のスポンジ」でブレークスルー
――「筒状のタオル」を開発しようと思ったきっかけは?
アイオンでは元々、別の素材を使⽤した、超吸水機能を持つ日用品のブランド「suuu(スウウ)」を展開しており、最⻑1年待ちになるなど、ご好評をいただいていました。
ただ、「suuu」は、スポンジ表⾯の質感や形状にこだわったために、⼿作業の加⼯⼯程が多く、安定的に商品を供給できないなどの問題がありました。

そのため、新たな商品を企画する場合には、量産できる製品であることが前提でした。
量産するには「トムソン加⼯(材料をプレスして打ち抜く加⼯⽅法)」が必要でしたが、それでは形態に制約があり、商品企画が難航しました。
そんな中、今回、タッグを組んだデザイン会社kenmaが、既製品の「ローラー形状のスポンジ」に着⽬したことで、ブレークスルー(=困難や障害を突破すること)しました。

この「ローラー形状のスポンジ」によって、今回の「スティック型のタオル」の企画がスタートしました。
――使⽤している「ソフラス」というのは、どのような素材?
「ソフラス」は、柔軟かつしなやかで弾性に富み、一般的な珪藻土素材の3倍の吸水量と6倍の吸水速度という、抜群の吸水力、保水力、排水力を発揮する次世代の素材です。


特殊ポリウレタン製のスポンジで、アイオンが5年以上の期間をかけて開発し、主にハイテク産業で採用されています。
主な⽤途としては、スマートフォンや液晶パネルに使⽤するフラットパネル⽤のマザーガラスの製造⼯程、ICチップ(⼀般的に言うところの半導体)の製造装置、プリンター複合機内の部材などです。
――「ソフラス」は吸⽔⼒に優れ、吸⽔速度が速い、これはなぜ?
“吸⽔⼒”を“吸⽔量”とするならば、ソフラスは気孔(空隙=すき間)率が⾼いため、吸⽔量に優れるということになります。
ソフラスは、細かな⽳が無数に空いた構造をしており、体積の約90%が空隙(=すき間)になります。その空隙(=すき間)に⽔が⼊り込むことで、⽔を保持できます。
⼀般的な珪藻⼟素材の空隙率は約30%程度ですので、同じ体積では約3倍、⽔を保持するスペースがある、ということになります。
吸⽔速度に関しては、使⽤している素材や⽔との親和性などを最適化することで、吸⽔速度を⾼めております。

――「スティック型のタオル」の素材として、「ソフラス」を選んだ理由は?
2017年に発売した「suuu」の素材は、⼀度、濡らさないと吸⽔できない特性があり、持ち歩くことには不向きでした。
⼀⽅で、元々、産業⽤素材だった「ソフラス」は、濡らすことなく⼤量に吸⽔できるというメリットがあったため、今回の「STTA スティックタイプ」に使用しました。
商品名は「水滴を“吸った”」を表現している
――「STTA(スッタ)」という商品名の由来は?
従来とは異なる⾒た目であることから、吸⽔することをネーミングで認識できるものにしました。
同時に、吸⽔性に⾮常に優れていることにフォーカスし、使⽤した瞬間の驚き(⽔滴を「吸った!」)を表現しています。

――商品化する上で、とくにこだわった点は?
新しい市場、カテゴリへの挑戦として、⽔滴ストレスを減らすために“スティック型のスポンジタオルを開発する”という点です。
商品を検討している際には「ソフラス」を平⾯状にして、⼀般的なタオルの形状で商品化する案もありました。ただ、吸⽔を必要とするシーンで、必ずしも平⾯状の⽅が、使い勝⼿が良いわけでは無く、使⽤後にしまっておく場合、立体形状の⽅が保管しやすいだろう、という点がありました。
このスティックタイプは「STTA」ブランドの第1弾商品ということもあり、他の素材では真似できない形状、かつ、「ソフラス」の吸⽔⼒を活かしたものにしたかったので、“スティック型のスポンジタオル”に決定しました。
スティック型のタオルと決まった後は、拭きやすいサイズを求めて、ひたすら試作を⾏いました。
おすすめの使い方とお手入れ方法
――おすすめの使い⽅は?
「雨のシーン」と「通常の手洗いのシーン」で、それぞれ、おすすめの使い方があります。
【⾬のシーン】
・⼦どもの送り迎えの時、⾬が降って⾃転⾞のサドルが濡れている時にサッと拭けます。
・お気に⼊りの⾰靴を気になったときにすぐ拭けます。
・入店時、帰宅時など建物内に⼊った後で、濡れたアウターを拭いたり、傘と⼀緒に⼿も拭けます。

【通常の⼿洗いシーン】
・通勤時に駅のトイレを利⽤し、⼿を洗って⼿を拭く時。ハンカチよりも取り出しやすく、使いやすいです。

――お手入れ方法は?
スポンジ部分を持ち手から取り外し、手洗い、または洗濯機で洗ってください。
手洗いの場合は、スポンジは泡切れが悪いため、洗剤を使用する場合はゆっくり手もみ洗いし、あまり泡立てないように洗ってください。
洗濯機の場合は、ネットに入れて洗濯してください。洗濯後は、日陰で乾燥させてください。
天日干しは素材が劣化しますので、やめてください。

――持ち手部分のお手入れ方法は?
持ち手の汚れは、水または中性洗剤を含ませた布で、軽くふき取ってください。
――使う時に注意すべきことは?
水以外の液体、水を含んでも色のついた液体には使用しないでください。
シミになり、洗い流すことができません。
店頭販売は今春〜夏頃を予定
――2月25日に「アイオン 楽天市場店」で発売後、どのぐらい売れた?
具体的な数量はお答えできないのですが、楽天の初回⼊荷分は、発売後1週間で完売しました。
――購⼊して使⽤した人からは、どのような声(感想)が届いている?
以下は、ご使⽤いただいた感想の⼀例です。
「キャンプ時、テント内に⼤量発⽣する結露を拭けて重宝している。タオルを乾かす必要がないので楽」(30代 キャンパー)
「保育園の送り迎えの際、⾃転⾞のサドルについた⽔滴を、傘を持ちながらでも拭けて便利」(40代 パパ)
「サッカーの試合を観戦する時、⾬に濡れた観客席を、ハンカチを使わずに拭けて助かる」(30代 スポーツファン)
――今でも、購⼊できるのは「アイオン 楽天市場店」だけ?
Amazonでも3月24日から販売を開始しました。 店頭販売は今春〜夏頃を予定しております。
――今回は「STTA」ブランドの第1弾。第2弾はどのような商品を予定している?
具体的に決まってはおりませんが、展示会で発表したプロトタイプ、および、全く別の形状の製品を検討中です。
展示会で発表したプロトタイプは、「手拭き用スタンドタオル」「キーホルダー型タオル」「物干し竿専用タオル」「キッズ向け台拭きタオル」「コースターの代替提案」などです。
第1弾の反応を見ながら、投入する品目やタイミングを判断する予定です。

売れ行きが好調だという筒状のタオル「STTA スティックタイプ」。
税別2500円と、一般的なタオルに比べると値段は高く感じるが、雨の日など様々なシーンで活用できることから、これからの梅雨の時期は特に重宝しそうなアイテムかもしれない。