これは、ウクライナ側が公開した映像。

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ベッドに横たわり、「呼吸不全」などの症状を訴える人の姿が。現地メディアは、「化学兵器サリンの可能性がある」と報じています。
めざまし8は、現地テレビ局の社長を取材。情報が錯綜し、混乱する状況が見えてきました。

化学兵器サリン使用?地元TV局社長語る「犠牲者2万人より多い」

マリウポリTV社長 ニコライさん:
子供や女性、男性などのたくさんの死体が通りに並んでいました。犠牲者は2万人よりもっともっと多いと思います。

これは、ニコライさんがSNSに投稿した映像。ウクライナ南東部のマリウポリでは、多くの建物が破壊され、道路にはがれきが散乱し、歩いている人は1人もいません。

攻撃を受けたとみられる病院。医療器具などは残っていますが、診療は行われていないようです。

そんな状況下で、マリウポリ市民を苦しめているのが“食料不足”です。

マリウポリTV社長 ニコライさん:
ロシア軍はわずかな食料と水を市民に与え、その際に『あなたがロシアに向かうならば、外に出ることができる』と言って誘い出し、ロシアに連れて行きます。

化学兵器サリン使用?市民が呼吸不全

さらに、ロシア軍の激しい攻撃で2万人以上の市民が死亡したとの見方もあります。マリウポリでは、化学兵器が使われた可能性が浮上しました。

これは、4月13日、町を防衛するアゾフ大隊が公開した映像。ベッドで苦しげに横たわる、男女が映っています。

女性:
3回攻撃にあって気を失いました。

男性:
爆発音が聞こえて確認しに行ったら煙のようなものが見えました。ガスマスクをつけたけど、とても気分が悪くなって息苦しかった。

彼らには呼吸困難のほか、血圧上昇などの症状が見られるといいます。
一体、何が起きたのでしょうか。

アゾフ大隊のTelegram:
ロシア軍が無人機でマリウポリに正体不明の有毒物質を投下した。

アゾフ大隊は、多くの人が、呼吸不全などの症状を示していたとして、ロシア軍が化学兵器を使ったと主張。

マリウポリTV社長 ニコライさん:
私もロシア軍が化学兵器を使用したと聞いています。ただ、詳しい情報は分かっていません。

そうした中、地元メディアは、「サリンの可能性がある」と報じました。しかし、ウクライナ当局は、化学兵器による攻撃を確認したとの情報はないと発表。ロシア側も使用を否定していて、情報が錯綜している状況です。果たして、化学兵器は使われたのでしょうか。
気になる情報が1つあるといいます。

ロシア国内の報道によると、ウクライナ東部を拠点とする、親ロシア派の武装勢力が11日、「アゾフスターリ製鉄所に最大4,000人のウクライナ兵がいる」と発表。「製鉄所を封鎖し、すべての出入り口を探し出す。その後は化学部隊が敵をいぶり出す方法を見つけるだろう」と話し、製鉄所を制圧するために化学兵器の使用を示唆。しかし、12日になり一転、これを否定しました。

仮に化学兵器が使われたとするならば、それがサリンの可能性はあるのでしょうか。
めざまし8は、化学物質の毒性に詳しい産業医科大学の上野晋教授に話を聞きました。

産業医科大学 上野晋教授:
神経剤、サリンにしても呼吸器に横隔膜や肋間筋というのがありますが、呼吸器の運動が阻害されるので息がしにくくなります。

サリンが使われた場合に起きることが多いのが呼吸不全。ただ、その症状だけで、サリンと断定することは難しいといいます。

産業医科大学 上野晋教授:
サリンの場合、呼吸不全の前に軽症の方でも出やすい症状が「瞳孔が縮む」目の前が急に真っ暗になる、これがまず出やすいと言われています。そのあと、分泌物が多くなるのでよだれ、鼻水、汗などの量が多くなる。これらの呼吸不全以外の症状について、医師が確認する必要があるといいます。
では、医師が診療できる体制が、ウクライナ国内にあるのでしょうか。

4月2日までウクライナで、医療支援を行っていた国境なき医師団の門真秀介さんは…

国境なき医師団 門馬秀介医師:
化学兵器が何によるかにも、大きく関わってくるのですが、バイオテロ、ケミカルテロっていうのは、医療者もトレーニングが必要です。そのトレーニングができているかというと、クエスチョンがあります。すぐには対応できないと思います。それはどこの部隊も、国境なき医師団もですけど、準備はしてきていないと思います。

化学兵器の被害にあった市民を診療できるほど高度な医療体制はないだろうと話します。化学兵器などに対応する高度な医療体制は、準備できていないと話します。
そして、医療支援の最中に門真さんが目にしたのが、マリウポリから逃げてきた人の悲惨な状況でした。

国境なき医師団 門馬秀介医師:
みんな誰かしらを殺されているんですよね。両親を殺された子供だとか、息子、孫を殺されたおじいちゃん、おばあちゃんとか何かしらを抱えて、皆さん避難してきています。逃げるために、脱がずに10日靴をはいてきた人や、知らない車に乗ってきたという人や、5人乗りの車に10人乗ってきたという人もいます。

侵攻を続けるロシア軍。市民にさらなる被害が出ないよう願う声が広がっています。

(めざまし8 4月13日放送)