車いすのスポーツといえば、テニスやバスケットボールが広く知られているが、長崎・佐世保市には車いすでボクシングに取り組んでいる人がいる。
大ケガをきっかけに始めた競技の魅力を多くの人に知ってほしいと、日々活動している。

交通事故でせき髄を損傷…胸から下が動かず

佐世保市内のボクシングジムで、鋭いパンチを繰り出すのは前田秀喜さん(58)。車いすボクシングを始めて7カ月になる。

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前田秀喜さん:
少しでも元の体に戻れるように努力できたらと思って、再びボクシングを始めた

前田さんが最初にボクシングを始めたのは10年ほど前、健康作りのためだった。
しかし、今から3年前に交通事故でせき髄を損傷、胸から下を動かせなくなった。仕事も辞めざるを得なかった。

前田秀喜さん:
180度変わった。当時は動けなくて、1年3カ月ほど病院生活。食事も自分でできなかった。なかなか立ち直れなかった

リハビリに取り組む中で、「ミット打ちならできるのでは」と考えた。通っていたジムに復帰できないか相談すると、ジムの経営者は申し出を受け入れてくれた。

前田秀喜さん:
うれしかった。初めは声がかけづらかった。邪魔になるのではと。快く受け入れてくれた。一番嬉しかったのは、「前田さん、お帰りなさい」と言われたこと

今は自分で車を運転し、週2回ほどジムに通っている。体を安定させるためベルトで固定する。トレーナーの北岡敏治さん(61)が車いすに乗って、ミット打ちやスパーリングの相手をしてくれる。

写真左:前田秀喜さん 右:トレーナーの北岡敏治さん

前田秀喜さん:
北岡トレーナーに鍛えられて、だんだん体力もついてきた

ウルフパックハウスボクシンジム・トレーナー 北岡敏治さん:
とにかく前向き。自分だったらできないと思う。落ち込んでしまって。見習うところがたくさんある

通常のボクシングのように重心を乗せてパンチを打つのは難しいが、その分 体への負担が少なく、幅広い年代の人が楽しめる。

テレビ長崎・後藤綾太記者:
2分のミット打ちで、この汗の量…息がハァハァというより、ほのかに息が上がるくらい。いい運動で楽しい!

汗がにじむ後藤綾太記者

パラリンピック種目への採用を目指し

車いすボクシングは世界的にみてもまだ普及しておらず、ルールや道具も整備されていない。日本では、車いすボクシング連盟が2021年に発足したばかりだ。

日本車いすボクシング連盟 代表理事・木村忠義さん:
競技としてのルールもこれから統一し、考えていかなければならない。車いすボクシング用のグローブ、ヘッドギアの製造も考えたい。前田さんにも意見を聞き、どういったルールがベストで平等なのか議論していく

前田さんが使用しているのは車いすテニス用の車いすで、連盟では企業などと連携しながら専用の車いすの開発も進めていて、将来的にはパラリンピックの種目に採用されることを目指している。

2022年2月には世界各地で社会貢献活動をしている「WBC(世界ボクシング評議会)Cares」が、パラボクシングの普及などを目的に佐世保市でイベントを開催した。

元世界王者・亀田興毅さんが見守る中、前田さんと北岡さんが車いすボクシングのスパーリングを披露した。前田さんは自分の姿を多くの人に見てもらうことが、車いすボクシングを知るきっかけになってほしいと願っている。

前田秀喜さん:
私も本当はできると思っていなかった。少しずつできるようになって、ここまできた    

前田さんは常に前向き。

前田秀喜さん:
できないと諦めるのではなく、一歩踏み出せば1つずつできてくるのでは

少しでも元の体に戻れるように、もっと多くの人に車いすボクシングを知ってもらえるように…前田さんはきょうも汗を流している。

(テレビ長崎)

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